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繋がり1 「消えちゃえよ」と言われた僕は、ツナグになれない」

僕の名前はツナグ。


ーーでも、その名前が嫌いだ


すべての人と人とを、繋げますように。


そんな願いが込められているらしい。


だって僕は、誰とも繋がれない。


どうすれば人と繋がれるのか、わからない。


そもそも――


僕自身が、どこか欠けている人間だから。


通学路

「おはよー!」

「今日めっちゃ晴れてるね!」

「昨日の歌番組見た?」


楽しそうな会話が、朝の空気に溶けていく。


……僕は、その中に入れない。


何を話せばいいのか分からないし、

そもそも、同じ感覚で話せる気がしない。


中学時代

「ドラマのあの女、ヤバくね?」

「すぐ取り乱してさ、意味わかんねえ」

「だから女って信用できねえんだよ」


その会話に、つい口を挟んだ。


ツナグ「そうかな?」


「……あ?」


ツナグ「苦しんでるんだと思う。

    悲しいんだと思う」


場の空気が、止まる。


ツナグ「気持ちを伝えるのが不器用で、

    うまく言葉にできないから――


    ああいう形でしか

    表現できないだけで」


「……」


ツナグ「だから取り乱すのは、

    弱さじゃなくて――

    不器用さの表れで……」


「もういいよ」


ツナグ「え?」


「お前さ、いつもズレてんだよ」

「みんなと違うことばっか言ってさ」


ツナグ「そんなつもりじゃ――」


「……お前さ」


その一言は、今でも耳に残っている。


「消えちゃえよ?」


……きっと僕は、欠けている。


人と違う。


ズレている。


そんな僕が、“ツナグ”なんて名前で――

誰かと繋がれるはずがない。


「ツナグ~!」


振り返ると、カナデがいた。


カナデ「一緒に学校行こ~?」


ツナグ「……」


断れずに、結局一緒に歩く。


神社

カナデはいつも、ここに寄り道する。


カナデ「ねえ、見せてよ。いつもの」


僕は黙って、ノートを渡した。


カナデがページをめくる。


そこには、僕が書いた歌詞がある。


夢に居るような 幻想に居るような

幸せな想いが 溢れてくるの


想いに咲いたよ

心に住んだよ

あなたと私の想いたちが


     あぁ!


壊れていて良かった

そうじゃないと 出逢えなかった

このことに心から感謝しよう


どうしてだろう

こんなにも愛しい


お願い

一瞬だけじゃイヤだよ

永遠が欲しい


カナデ「……なるほどね」


ツナグ「……なに」


カナデ「これが、“恋したことない人間”が書く恋の歌か~」


ツナグ「バカにしてる?」


カナデ「してないよ。むしろ逆」


ツナグ「……?」


カナデ「普通の人には書けないよ、これ」


ツナグ「……欠けてるだけだって」


カナデ「それがいいんじゃん」


ツナグ「……意味わかんない」


カナデは、楽しそうに笑う。


ツナグ「僕に関わる物好きなんて、カナデくらいだよ」


その瞬間――


「いっ……!」


両頬をつねられた。


カナデ「卑屈すぎ」


ツナグ「痛いって……!」


カナデ「そこ直したらさ、ツナグ」


カナデ「もっとすごくなるよ?」


ツナグ「……そんなこと」


カナデ「どのくらいかっていうと――」


「全部の人、繋げられるくらい」


ツナグ「……やめてくれよ」


ツナグ「その名前、嫌いなんだよ」


カナデの表情が、少しだけ変わった。


カナデ「……私には、わからない」


ツナグ「え?」


カナデは、僕の目をまっすぐ見て言った。


「その歌声と作詞の力があるのに、

 なんでそんなに自分を下げられるの?」


ツナグ「……は?」


カナデ「思い出してみてよ」


7年前 夏祭り

僕たちは8歳だった。


町内会の小さな夏祭り。


出し物は、どれも素人の余興レベル。


歌も、演奏も、正直“お遊び”だった。


そんな中で――


僕とカナデは、ステージに立った。


カナデのヴァイオリンが、最初の音を鳴らす。


静かな夜に、透き通るような音が広がった。


それだけで、空気が変わる。


ツナグ「……」


深呼吸して、歌い始めた。


だんだん君の色した 私の心

この瞬間が特別だね


「……え?」


誰かの声が漏れる。


歌が進むほどに、ざわめきが広がっていく。


「ちょっと待って、これ何?」

「レベル違くない?」


カナデの音が跳ねる。

僕の声が、それに重なる。


まるで最初から一つだったみたいに。


想いを伝えられないのは

もっとイヤだ――!!


気づけば、誰も喋っていなかった。


全員が、聴いていた。


そして――


曲が終わった瞬間。


ドッ――!!


拍手と歓声が、夜を揺らした。


ただの夏祭りだったはずの場所が、

まるでライブ会場みたいに変わっていた。


回想終了

カナデ「覚えてる?」


ツナグ「……」


カナデ「私たち、あの時」


「ちゃんと繋がってたよ」


カナデ「だから、わかんないんだよ」


「なんでそんな自分を嫌えるのか」


ツナグは、何も言えなかった。


ーー本当に、そうだったのか?

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