表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大艦巨砲主義の興亡  作者: kajiki
プロローグ
4/5

決戦近づく


四ヶ月後。


本土、呉。

朝靄の中、巨大な艦影がゆっくりとドックから姿を現していた。


戦艦「加賀」と「土佐」である。


かつてトラック沖で傷を負い、辛うじて帰還したその巨体は、いまや別の艦のようだった。


艦橋上部には新設された鉄柵のような電探が鈍く光り、甲板や上部構造物の至る所には無数の機銃座が増設されている。

まるで鋼鉄の棘をまとったような姿だった。



「艦載型二号対空電探、感度良好」


電探員の報告が静かに響く。

少なくとも以前のように“見えない敵”ではない。

その点では将兵の士気は良好だった。


────


「……増えたな」


土佐の艦長が呟く。


双眼鏡越しに見えるのは、並んで停泊している第三艦隊の空母群だった。


木張りの飛行甲板が朝日に照らされ光り輝いている。


正規空母「翔鶴」「瑞鶴」、そして改造空母「隼鷹」「飛鷹」。

軽空母の祥鳳、瑞鳳なども含めれば、九隻。


搭載機総数は400機にも達する。

真珠湾空襲の規模をも超える史上最大の

機動部隊だ。


だが、その光景に高揚は無かった。


この機動部隊は2年前の南太平洋海戦以来、一度も

敵艦隊との戦闘を行っていない。

出撃しても空振りばかり。


トラックでも、パラオでも

艦隊はいざという時に逃げ続けていた。

しかし、その艦隊が

全艦艇を集めて呉にいるということは

決戦が近いのだろう。


そのことを誰もが直感した。



四ヶ月。


その間に、南方の拠点は次々と崩れていった。


トラック壊滅後は連合艦隊の根拠地となっていたパラオは空襲により壊滅。


連合艦隊司令部は決戦を避け、ひたすら艦隊の温存に努めてきた。


だが、その時間も終わりを迎えようとしていた。



もはや内南洋に残る拠点はマリアナのみ。


米軍の侵攻はすぐそこまで来ている。

絶対国防圏へのこれ以上の侵入は阻止しなければならない。


───

マリアナ諸島。

主にサイパン島、テニアン島、グアム島の

3つの島で構成される。


この諸島は開戦初期から中期までは

主に本土〜トラック間の

航空機輸送の経由地として使われていた。

しかし、トラック壊滅により

一気に最前線となり急ピッチで

工事が進められた。


今では合計6つの飛行場があり

海軍第12根拠地隊、

陸軍の第6師団、第42師団の先遣隊も

展開している。


さらに基地航空隊の主力である第一航空艦隊の航空機約420機、

第二航空艦隊の約300機が配備されている

不沈空母と化した。


だが、内情といえば

補給物資の不足で稼働率は六割を切り、

新旧入り混じった航空機は

整備の効率を悪化させた。

若年搭乗員が大半を占め、数字通りの

力を発揮できるかは疑問符が残る。



そして、そのような平穏な時間も一本の電文により

終わりを迎える。



「サイパン発の水上偵察機より入電!」


通信士の声が艦橋に響く。

一瞬の沈黙。


誰もが、その先の言葉を理解していた。


「米機動部隊、エニウェトク環礁を出撃。針路マリアナ方面、速力約20ノット。

空母多数を含む。」



艦橋の空気が一変する。


「……来たか」


土佐の艦長が静かに呟く。

その声には驚きも焦りもない。

ただ、避けられなかったものを受け入れた響きがあった。




間を置かず、司令部から命令が下る。


「あ号作戦決戦発動。

第三艦隊、第一艦隊は順次出港されたし。」



まず動いたのは空母群だった。


錨鎖が引き上げられ、重い音とともに艦がわずかに震える。


やがて、「翔鶴」、「瑞鶴」を先頭に、機動部隊がゆっくりと港外へと滑り出していく。

周囲には哨戒艇や水雷艇が

忙しなく動き回り、定期的に爆雷を投下して

潜水艦の侵入を警戒している。



それを見送りながら、戦艦群も動き出す。


「土佐」を先頭に、「長門」、「加賀」、さらに「伊勢」「日向」が続く。


重々しい巨体がゆっくりと進路を取り、外洋へと向かう。

その後方を巡洋艦、駆逐艦が続いていった。




決戦は近い。


重い空気を纏って艦隊はマリアナ海域へ進んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ