第13話 ボスケテ!
いつも、孤独だった。
「おまえ、ダークエルフだろ?」
母から譲り受けた、褐色の肌艶と、長く延びた耳。
父からは、キツイめつきを譲り受けた。
「だったら、どうなのさ?」
見た目だけで、差別されていた。
ハーフエルフよりも、虐げられていた。
次々と、罵られて、よく小石をぶつけられていた。
「「やーい、やーい! 呪いっ子!!」」
ダークエルフというだけで、ひどい目にあった。
ただ、彼女は、やり返すことも忘れなかった。
「シャランラ!!」
そのひとことで、苛めを覆していた。
魔術の申し子として──、皮肉にも、その才能を開花させていった。
「お母さん?」
それは、ある日、いつものように。
気持ちよく凱旋して、勝利の宴をあげようとしていた。
「今日の晩ごはんは、何かな~さ?」
多少、傷跡が残ったものの、今回も返り討ちにしてやった。
平屋という我が家へと、帰宅した。
「お母さん?」
じとじとと、イヤな汗をかいていた。
「お母さん?」
彼女の母親は、冷たくなっていた。
即座に、腰がぬけた。
身体中が、震えて、愕然として座り込んでしまった。
そんな母親から最後に聞いた。
「負けないで……ね」
たった、ひとことだった。
それは彼女の指針となった。
それは彼女の生きがいとなっていた。
そして──、過去を捨てた。
金星界という怪しい組織で、ありのままに。
最強の魔女として、君臨していた。
「わたしは何者でもないさ!」
「メグちゃん!? どうしたんだよ!?」
「うるさいさ!! うるさいさ!! うるさいさ!!」
やさしくされるたびに、どうしようもなくなる。
やさぐれてしまった心に、ぬくもりが訪れる。
いつも、冷たい雨に濡れていたのに。
傘を差し出されるなんて──、ずっとなかったのに。
「何もかも消えてしまえさ……っ!! シャランラ!!」
彼女は、最大級の魔法をつかった。
隕石を落とすという──、レベルマックスの魔法を。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ、ゴゴゴゴゴゴゴゴ。
空が、真っ黒になっていく。
「バッチ来いやあああっ!!」
ふわふわの毛並みと、包容力には自信があった。
遥か彼方から、落とされる隕石でさえも。
やさしく、抱き締めて、ダクエルを受け入れる覚悟。
それが、タカの生きざまでもあった。
「いやあ~、よく、わかんないっすけど」
トオルは、ひと安心していたが──、その状況は。
ネオトキオ、そのモノを壊滅するほどだった。
宇宙から、巨大な隕石が落ちてくる。
それを、ただ呆然と、眺めていた。
「おいっ、タカ!?」
「ちょっ、タカさん!?」
ユージとカオルは、トオルとは違って、真剣だった。
ディズ⬜ーランドがなくなってしまう。
それだけは、どうにかして欲しかった。
「アハハッ!」
ネズミのマスコットキャラクターが笑っていた。
そういえば彼も、魔法使いだった。
そして──、その他にも、魔法学園の生徒と学長が。
そして──、あの悪役たちでさえも、協力していた。
「「「とどけええええええええええっ!!」」」
やがて──、みんなの願いは届いた。
隕石は粉々になって、綺麗な打ち上げ花火になった。
夜空をキラキラと輝かせ、轟音が鳴り響く。
「いいもんだろう?」
いい男は、あまり語らない。
生まれつき、それを知っていた。
「そうね……」
いつしか、口ぐせがなくなっていた。
ダクエルは、タカにやさしく抱かれながら。
ようやく、救われていた。
「まったく──、どいつもこいつも……!!」
金星界の真打ちは、苛立ちを隠せなかった。
魔王様の出番はいらない。
成り行きを見守っている場合ではなかった。
「甘酸っぱいのも、いい加減にしろ!!」
その姿は、ネオトキオでも最強の存在だった。
その姿は、誰にも見られたことはなかった。
かろうじて──、魔王様にだけ。
インビジブル。
完璧な暗殺者が。
透明な世界の支配者が。
いままさに彼らに、襲いかかろうとしていた。
「なんか……鳥肌がたったんすけど」
「鳥肌? さぶいぼは聞いたことあるけど」
トオルの直感は外れたことはなかった。
ただ──、たまに外れることもあった。
「まあ、きにすんなよ」
「そうよ、気にしないで」
「相変わらずだな、トオルは」
やがて、その身を、またしても。
命を狙われることになるとは思ってもいなかった。
ただ「ボスケテ」と叫んでいた。




