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こちら異世界派出所前。  作者: caem
season 4【冬】けじめなさい、あなた。
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第12話 シャランラ!


 時は、少し遡る。

 裏路地の店へと向かっていた。

 中華街を潜りぬけた、その先に。


「マスター、いつものを」


「……どうぞ」


 それはいつも決まっていた。

 大小変わらず、事件を解決したあと。

 刑事、鷹野山がこよなく愛していた。


「ああ、うまいなあ」


「……ありがとうございます」


 bar、魔の巣。

 そこは、彼にとって、唯一落ち着けるところだった。

 時おり、妙なサラリーマンがやってきては。

 どーん!m9(^д^) とかやっていても、気にせずに。


 サングラス越しに、チビチビと呑みつつ。

 懐から取り出した、煙草に灯をともした。

 愛用のジッポで、ぷかぷかと、煙を吐いていた。


あちら(・・・)にも」


「了解しました」


 ただ、ひとり。

 カウンターの端っこにいた。

 悲しげな表情を浮かべていた。

 そんな彼女のもとへ、しゅっとカクテルがたどり着いた。


「え──、頼んでいませんが?」


あちら(・・・)からのサービスです」


 そうなるのは、分かっていた。

 敢えて、ダクエルは懐に飛び込んでいた。

 危険を犯しているのは、分かっていた。


「君のために」


 そのカクテルは、カルアミルクだった。

 それはダクエルが、もっとも大好きだったカクテルだった。


「やるじゃんさ……」


 ただ──、それだけでは、心は揺るがない。

 彼女は、かるく会釈してから、計画を実行していった。




「ちょっと……早かったかな?」


 指定の場所に現れた。

 いつもより、気合い十分だった。

 非番(・・)というのもあって、さらに磨きがかかっていた。


「んんっ!」


 手鏡を見ながら、曲がっていたネクタイを、閉め直した。

 何枚もあったサングラスから、いちばん良いのを選んだ。

 それは、久しぶりのデートだった。


「お待たせしたかしら?」


「いや、そんなことないよ」


 とにかく、久しぶりのデートだったから。

 相棒のユージにも、部下のトオルにも、耳年増のカオルにもぜったいにバレないようにしていた。

 

「さあ、行こうか」 「うん♪」


 さりげなく繋がれた──、手のひらの温度を確かめていた。

 あまりにも久しかった、そのぬくもりに、絆されていった。


『いくら、優秀な刑事といっても、こんなものか』


 ダクエルは内心、ちょろい(・・・・)と感じていた。

 ゴレムが、あっさり捕まったのは、いったい何だったのかと。


 このままいけば、いい。

 すべて、計画通りだ。

 うまく、ことは運べる。


 いちばん厄介だったのを、排除できると。

 そう、軽々しく、思っていたら───


「あら、タカさん」


「おい、タカ! そりゃないだろ?」


「タカさんも、デートだったんすね?」


 あまりにも予想外な出来事に驚いたのは、ダクエルだった。

 いろいろと追い付かない──、ひどいパニックに陥ってしまった。


 もう、分からない。

 やるしかない。


「シャランラ!」


 彼女──、ダクエルが、そう言い放つと。

 魔法が放たれた。

 どうでもよくなったから、実力行使することにした。


「「「ぐえっ!?」」」


 その場に居合わせたカオルとユージとトオルは、不可思議な現象に捕らわれてしまった。

 目に見えない、鎖に雁字搦めにされていた。

 そして、ついでに。


「へいへいへへいっ。シャランラ!!」


 ダクエルが発した魔法によって、カオルとユージとトオルと、真凜ちゃんでさえ身動きすらできなかった。


 ただ──、その状況に、タカは理解できないでいた。


「ええっ? メグちゃんっ!?」


 それは、ダクエルの本名でもあって、ただの仮名でもあって。

 彼女が、そんな魔女っ娘になるまでの、黒歴史でもあった。

 


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