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こちら異世界派出所前。  作者: caem
season 4【冬】けじめなさい、あなた。
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第11話 レイニーブルー。


「きさま、はやく、立たぬか!!」


「もう、これ以上は勘弁してやってください!」


「ならぬ! 我が一族(・・・・)に弱さなどあってはならぬのだ!!」


 それはずっと昔の──、遠い記憶が甦っていた。

 金剛石の巨人族の──、長男としての幼い子供の頃を。


 そのなかでも、彼ら一族は、最強(・・)の一角を担っていた。

 かつて、ゴレムはみたことがあった。

 父親が、偉そうなひとと、肩を並べていたのを。

 あとで知ったが、総理大臣ともため口だったらしい。


 そのせいだったのか、どうかは分からない。

 じつに、父親は厳格だった。


 これ以上はないぐらいに、ゴレムは叩きのめされていた。

 それは、母親が真剣に心配してしまうほど。


「ええいっ!! お前は、甘やかすでないっ!!」


「きゃあっ!?」


 ゴレムを庇う母親の身体が、勢いよく宙を舞った。

 そして、鈍い音と、鮮血が降り注いでいった。


「母上っ!?」


「心配などしている場合か!!」


 父からの容赦ない鉄拳がゴレムに叩きつけられる。

 その瞬間に──、何か(・・)がはじけた。

 まだ小さかったその身体は、突如、変貌した。


「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」


 目の前には、ただの骸となっていた父の姿があった。

 目の前には、ただの骸となっていた母の姿があった。

 気づけば、暴走していた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 たぶん、一生分の涙を流しただろう。

 それから、ゴレムは嬉し涙すら流すことなどなかった。

 金星界という組織で、魔王様に会うまでは。


「「「トリプルアタック!!!」」」


「ぶげらっ!?」 


 たったその一撃で、走馬灯のように。

 あの頃が甦っていた。

 辛い記憶が呼び起こされてしまった。

 危うく、意識を失いかける。


「ごふっ……!?」


 そのまま、倒れてしまえば楽だっただろうに。

 強靭な両足が、それを許さなかったのだ。

 まだやれると──、信じさせてくれた。


「さすがに、一発じゃあヤレ(・・)ないか」


「じゃあ、もういっちょ、イク(・・)ぜ?」


コンボ(・・・)っすね?」


 ゴレムは、いままでにないほど、力を込めた。

 全身は、まるで──、夜を朝に変えてしまうほど。

 ギラギラと光輝いていく。


「かかってこいやああああああああああああっ!!」


 ───、目覚めたのは、留置場のなかだった。

 

「まあ、よくやったほうだよ、お前さんは」


 それは、となりの部屋から聞こえた。

 ゴレムの脳裏に、直接、語りかけてきた。


「あいつらは、あぶない刑事(・・・・・・)だからな?」


 それは確かに──、ゴレムは身をもって分からされた。



 

「ゴレムは、やっぱり、馬鹿さ」


 夜の工場地帯──、華々しい夜景を背にして、ダクエルは鼻で笑っていた。


「奴らを完璧に仕留めるには……」

 

 ダクエルは、ひっそりと、計画を練っていた。

 確実に、あの三人(・・・・)を仕留めるために。

 ただ──、予想外の参加者は、そのなかにはいなかった。




「ねえ、タカさ~ん♪」


「おう。カオルか」


 湾岸署のなかでも際立つほどの美女、カオルは刑事課のなかでも、目立っていた。

 女性刑事としてというよりは、色モノ扱いされていた。


 とにかく、いつも、誰にでも尻尾を振っていた。

 キャンキャン騒がしかった──、スピッツの犬種だった。


「ねえ、ねえ! また挙げた(・・・)んだって!?」


 とにかくカオルは、耳に自信があった。

 たとえ、噂話でも、片っ端から吸収できた。

 それが利益になると、確信していたからだった。


「ねぇ、タカさ~ん」


「なんだよ、しつこいなあ」


「これは女の勘なんだけど……」


 カオルの、女の勘は、やがて当たることになった。

 


「きゃははははははは!!」


「いや、マジでヤバいぜ!?」


「わたしの魔術から、逃れられたヤツなんていないさ!!」


 両手をかざしただけなのに、次々と魔法が放たれた。

 ダクエルが唱えた魔法が、次々と襲いかかっていった。


「こんなの、反則じゃあないかよっ!?」


 反撃なんてできなかった。

 ただ、愛用のバイクに股がって、逃げ惑うことしかできなかった。


「ほうら、まだまださ!!」


 それは雷撃や、火炎や、はたまた高濃度のエネルギーが、バイクに襲いかかっていた。


「カオルちゃんっ、恨むぜ!?」


 それはまさに襲撃だった。

 知性派のダクエルによる、緻密な計画であった。


 金星界の一角。

 ゴレムが、あっさりと捕まってしまった。

 湾岸署に、あっさりと捕まってしまった。

 それは、魔王様にバレてはいけなかった。


 取り返さなくてはならない。

 ダクエルがやらなくてはならない。

 もう、誰にも任せられない。


 とりあえず、ひとりずつ、片付けないといけない。

 何百枚もの資料をチェックしながら。

 目標(ターゲット)を定めた。


「高野山か……」


 グラサンがよく似合う刑事をターゲットにした。

 ただ、予想外だった。

 ダクエルは、心底、悔やんでいた。


「タカ!」 「タカさん!」


「ユージ! トオル!!」


 湾岸署の厄介者、カオルの予言とは、裏腹に。

 三人の警察官が、ダクエルの野望を阻止していた。


 そもそも──、そんな名前ではなかった。

 ダクエルなんて名前ではなかった。 

 ダークエルフだという種族というだけだった。


 魔王様に、拾われたことで、ただ甘んじていた。


「今日からお前は、ダクエル(・・・・)だ」


 その日から、両親から貰った名前を捨てた。

 金星界という、組織に入った。

 特性を生かして、ようやく幹部として認められた。


 それが今日、ついにおわる。

 ネオトキオという場所で、ダクエルとしての生きざまがかわろうとしていた。


「なんか──、シリアスすぎない?」


 トオルのつぶやきは、じつに正しかった。

 やがて──、雨粒が落ちてきた。

 ただ──、冷たかった。


 レイニーブルー。

 もう、終わったはずなのに。

 まぼろしだったら、よかったのに。


 彼女には、いつも、冷たい雨粒が降り注いでいた。



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