第9話 引いて楽しいアミダくじ
久しぶりの休日だった。
なんか、いろいろあった。
寝室では、となりですやすやと寝息をたてていた。
超巨大化した彼女、真凜ちゃんはトオルの横にいた。
まるで、何事もなかったように。
昨夜は激しかったが、いまではただの美少女で。
緩やかに髪型を撫でたところで、目覚めはしない。
「ふわ~あ」
だらしない欠伸がこぼれた。
ひとまず、起きてから、トイレへと向かう。
勢いよく、出た。 全部、流れていった。
トイレットペーパーは、まだあった。
手を洗って、うがいをしてから、キッチンに立った。
冷蔵庫を開いて、さて、朝食を作ろう。
どちらかといえば食パンと、ベーコンエッグだった。
彼女が起きるまえに、それぐらいは準備したい。
「え~っと」
熱したフライパンに、ベーコンを乗せて。
何度かひっくり返して、たまごをパカッと割って。
食パンがいい感じに仕上がっていて。
紅茶の準備も出来ていて。
「おはようございまふ」
「やあ、おはよう」
トオルは、ただ、幸せをかみしめていた。
いま、人生のパートナーが、いることを。
ふたりで仲良く、朝食を済ませることを。
「いってらっしゃい」
まるで新婚生活みたいに、お出かけのキスをしてから、勤務先に向かう。
ただ、それからが地獄だった。
「アミダくじ~、アミダくじ~、引いて楽しいアミダくじ~♪」
先輩刑事達が、なんだか楽しそうにしていた。
ホワイトボードに書かれていた線を、指先でなぞっていくと。
「ゴ~~~~~ル!!」
その、ぷにぷにの肉球がたどり着いた先にあったのは、刑事の誰もが嫌がる仕事だった。
「はい、トオルちゃん。よろしくね♪」
それは警察官として、当然の仕事であったが。
異世界の住人を取り締まらくてはならなくて、じつにつらい業務だった。
「……交通課のしごとじゃあないのかよ……」
とか、愚痴っていたら「基本だぜ?」とふたりに肩を叩かれた。
ぷにぷにの肉球が、やさしくて、断れなかった。
(∪^ω^)(∪^ω^)
「はいはい、そっちに行ってください」
「はいはい、あなたはこっちに」
ネオトキオという、この異世界では、とにかくいろんな種族が暮らしていて。
見た目が凶悪であっても、実際には人間とも変わらなくて。
ただ、言語だけは、なんとなく通じあっていて、犯罪もあって。
「そこの車、止まりなさい!!」
また、いつものように違反者を追いかけていった。
ただ、今回の相手はヤバかった。
「はあ? おまわりになんて、簡単に捕まるかよ!!」
ふたり組のミノタウロスが、トオルに向けて、バズーカを向けていた。
彼らは二流の犯罪者で、阿吽と呼ばれていた。
うまく見分けはつかないけど。
「くらえっ!」
「「ヒャッハー!!」」
それは、バズーカが発射されるまえに。
それは、拳銃なんて所持しないでいい。
ふたりのあぶない刑事の奇声だった。
「先輩っ!?」
やがて、あっけなく、阿吽はお縄についた。
「またしても……」
それは、どこかの、誰かの、独り言であった。




