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こちら異世界派出所前。  作者: caem
season 4【冬】けじめなさい、あなた。
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第8話 真っ逆さまに堕ちてデザイア。


「あ~れ~」


 とたんに、三人は真っ逆さまに堕ちていった。

 いや、落ちていったというのが正しいだろう。

 つい、先ほどまでは、くつろいでいたのに。



 時は少し前に遡る。


「センパイ。なに、してるんすか?」


「見てわかんないのかよ?」


「まったく、これだからトオルは」


 いや、そう言われてもなあ。

 名台詞のつもりらしいけど。

 それは流行りもしないし、流行らせたくもない。


「だって、ひつじ雲じゃねえかよ」


 だっても、なにも。

 そう言われても、理解に苦しんでいた。

 目の前で、むしゃむしゃと咀嚼している。

 次々と、引きちぎっては食べて、引きちぎっては食べて。


「ほら、お前も食べてみろよ」


 メエメエと鳴いている、それを食べてみろよと強要される。

 生まれたての、可愛らしいひつじを、その麗しい瞳を、ふわふわの毛並みを。

 抱きしめるならまだしも、匂いを吸うならまだしも。

 それを食べてみろよという。

 それはまさしく、パワハラであって、それ以外のなにものでもなかった。


「いや、遠慮しときますよ」


 トオルは、丁寧に断った。

 ついでに、どうぞどうぞと譲ったのに。


「なんだ? せっかく奢ってんのに」


「ユージ。それ奢った(・・・)って言わないぜ」


「マジで。タカさんのいうとおりッスよ」


 と言いつつも、鷹野山は、まるでスルメイカをかじるように嗜んでいた。

 サングラスをしたドーベルマンの刑事が、もぐもぐタイム。

 その姿は、じつに異様だったのに、トオルには、なんとなくニヒルに思えた。

 渋い(・・)という二文字があてはまる。



「っていうか……こんなことしてる場合ですか!?」


 思わず、突っ込んでしまった。

 ネオトキオ(・・・・・)という異世界の首都で、それを滅ぼしかねない大怪獣の頭のうえで、のんびりと、ひつじ雲とやらを味わっている。

 異世界に慣れたつもりであったが、トオルは突っ込まざるを得なかった。



「焦ったって、しょうがないじゃないか」


「そうだぞトオル。ひと休み、ひと休みって。偉いお坊さんも言ってただろ?」


 だったら、屏風から虎を出せるのか。

 この橋、わたるべからず。

 だったら、ど真ん中を渡ればいいのか。

 トンチじゃあないんだから、とは言えなかった。

 やがて、トオルの二番目の彼女。

 真凜が、事態を解決するまでは。



 そしていま、三人は真っ逆さまに堕ちてデザイア。

 大怪獣がプチっと、真凜に潰されてしまったせいで。

「あ~れ~」と、遥か高い空から落とされていった。


「タカ! めっちゃ、爽快じゃん!」


「ユージ! こんなの、富士急でもUSJでもひらパーにもないぜ!」


「いや、伏せ字、要らないんですか!?」


「バカ、トオル! 言わなきゃいいんだよ!」


「ん~……そうッスね」


 三人の刑事が仲良くスカイダイビングしていった。

 それはじつに、斬新なアトラクションで。

 まとめて、真っ赤なケチャップになるまえに。

 ふわっと、手のひらに包まれていた。


「大丈夫ですか?」


「ありがとう、真凜ちゃん」


 超巨大化した彼女に、三人は救われた。

 トオルは心底、ホッとしたけど。

 この状況と、報告書と、真凜ちゃんが元に戻れるのか心配でしかなかった。


 真っ逆さまに堕ちてデザイア。

 バーニングハート。

 ただ、そうくちずさむしかなかったのであった。

 合いの手が、欲しかった。


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