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第20話 転生者とイケメンと

 『ウェポンショップ ジョンスミス』


 そのお店は、奇妙な看板に恥じぬ、何とも奇妙な店内の様子ですの……店員は揃って赤色のワイシャツに緑のスラックスの制服に身を包んでいますわ……ええ、目にも鮮やかなその恰好、矢鱈と目立ちますわ……ここがもしかしたら前世で、どこかの大型電気店に間違えて入店したかのような違和感がありますわね。


(違うわ、だってワタクシはイザベラ・ベニカ・フォン・アシュリー、周囲に侍女達だっている。ここは転生した世界、前世では有りませんわ)


 けれども、奇妙さに更に追い討ちが掛かります……何故か出入口を入ったら、バニーガールにお出迎えされましたわ。出入り口の左右にいる、どう見てもバニーガールな格好の女性が愛想を振りまいて歓迎してくれますの……


(ゲームには確実に登場していないお店ですわ。そもそも乙女ゲーにバニーガールは決定的にそぐいませんの! なんなんですの、このお店は?)


 違和感しか感じませんわ、どう見ても間違いなくバニーガールですわ。黒いレオタードの様な服に、燕尾のベスト、首に白い襟と蝶ネクタイだけつけてますわ、ええ、襟だけです。そして何故か袖口だけ両手に付けてますわね、これに何の意味があるのか本当に不思議ですわ、途中の部分は消えて無くなったのかしら? ……お尻の丸い兎尻尾と黒いうさ耳、片側は耳折れバージョンですか、芸が細かいですわね。足元は黒い網タイツに黒いエナメルのハイヒール……もう完璧ですわね、完璧なバニーガールですわ。


 店員の格好とバニーガールだけでも頭が痛いですわ、なんなんでしょうか、世界観がボロボロと音を立てて崩れて行く様な、そんな違和感、いえ、これは異物感ですわね……


(第三弾でこんな店舗を設定したおバカさんがいるなら、切腹モノですわ、私の作った優美な乙女ゲーの世界観が台無しですもの!)


 そんなバニーガールが目の前に居るのに、更に店内の出入り口近くのレジカウンターの上にデカデカと、どう見ても日本語で書かれたメッセージが掲げられてますの……


 日本語ですわよ? ええ、間違いなく日本語、漢字とひらかなの混じった優美な書体。性格の生真面目さが表れている様な読みやすい書体ですわね。


(筆で書かれているのかしら? 中々の大作ですわね……)


 こちらの国の言語では有りませんわ。この国の文字は、若干アラビア文字似ている独自の物です、地球の文字ではあり得ない……その筈ですわ。


 なのに、表の看板の英語も訳が分かりませんけど、今度は日本語ですわよ? どうなってますの? こんな文字で看板やメッセージを書いて、ワタクシ以外に誰か読める方が居ますのこの国に……


「ねえシオン、このお店の看板や、そこのレジカウンター上のメッセージ、読めるかしら?」


 分からない事は尋ねるべきですわね。もしかしたらワタクシが知らないだけで、一般的に使用されているのかもしれませんわ。ゲームの世界に近いのですから、それもあり得ない事ではないと、そう思いませんか?


「申し訳ありません、お嬢様、外国の言葉で書かれているのだろうとは思うのですが、生憎私は読めません」


 シオンが自分の不勉強を恥じる様にそう告げますわ。いえ、シオンは何も悪くないですわ! シオンが読めないのなら、やはりこのお店が異様なのですわ。


「表の看板は恐らく、『英語イングリッシュ』と呼ばれる文字ですわ。そしてあちらの物は『日本語』と呼ばれている文字だと思いますわ。私も生憎ここまで、意味などは分かりかねます。申し訳ありません」


 えっ、クララッ!! 貴方今何と言いました?


「クララ、この世界には『英語』と『日本語』が存在するの?」


 クララは確かにそう言いましたわ。聞き違いではないと思いますけど、確認の為にそう尋ねましたの。


「ええ、外国にそんな言語を使ってる国が有りますね」


 新事実ですわ! やはり閉ざされたお屋敷の中では、入ってくる情報にフィルターが掛けられてますわね。そんな国があるなんて……ゲーム内の言語は当然日本語でしたけど、この国の言語は日本語では無かったのですわ。でも、まあそんなものなのだろうと納得していたのです……だって明らかに別の世界なのに、日本語が有るほうが違和感がありますでしょ?


 それに特に紅華でも言葉に不自由しませんでしたし、ベニカの記憶もあるのでこの国の文字にもすんなりと馴染んで……でも、では何故ワタクシの住んでいる、ゲームの舞台でもあるこの国ではなく、他のゲームにすら登場していない国の言語が英語や日本語なのでしょうか?


「もしかしてこの星は地球なのでしょうか? 別の世界では無く、ワタクシは地球の未来の世界に生まれ変わった?」


 だってそうとしか考えられませんわ。何故って、レジカウンターの上に掲げられたメッセージには……


『紅華先輩、もしこのメッセージをご覧になられたら連絡をください。美智瑠より』


 そう書かれてましたのよ? しかもその下には少し小さな文字で……


『私は純情系ビッチ、シャーリー・ミチル・フォン・シルフィードに転生してます』


「なっっ! 純情系ビッチって、美智瑠、貴方、普通自分でそんな風に書く?」


 間違いないわ! シナリオライターの後輩、美智瑠よね? これ! このメッセージを書いたのは美智瑠だわ! って私に代わってる! 何時の間に? やっぱり意識が強く成った方に代わるのかしら? いきなり切り替わるのよね……段々と切り替えのタイミングがつかめてきたけど、任意で切り替えられないのはやっぱり不便ね。


 って今はそれどころじゃないわ。切り替えのタイミングも気になるけど今は他に優先事項があるわ!


 やっぱりシャーリー・ミチル・フォン・シルフィードがこの世界には居るのね? お屋敷の中には他家の情報が殆どは言ってこないのよね……ベニカが知る筈もない他家の情報を聞くのは不自然でしょ? だから殆ど調べられてないのよ。


 他のイケメンや悪役令嬢の名前は知ってるから、色々調べようとしたんだけどね……貴族名鑑があって、苗字や現当主の名前は載っているのだけど、その子息や子女になると極端に情報が少ないのよね。イケメン達や悪役令嬢の貴族家の姪が有るのは確認できたけどここまでだったわ。


 あと主人公に関しては情報が皆無ね、そもそも容姿以外の情報を私は持っていないのよね。田舎の領地で暮らしている子爵令嬢って何人いると思ってるの? 子爵や男爵は数が多いのよ! せめて伯爵ならまだ絞り込めたのに……


 けど純情系ビッチ、シャーリー・ミチル・フォン・シルフィードがいるなら第二弾? いや違うわね、恐らくゲームの世界と同じ様な別世界。それは分かってるわ。でもここまでゲームと一緒なの? しかも美智瑠まで転生してるとか……


 そんな偶然ってあり得るの? 偶々? でも紅華先輩って、それに美智瑠って珍しい名前だし、そうそう紅華と関係のある美智瑠がいるとは思えないわ……けど転生してるって事は美智瑠も死んだの? どうなんだろ、私と違って天寿を全うしたのかしら? それとも……


 考えてもこれ以上は分からないわね、でもこのメッセージ、これがここにあるって事は美智瑠もこの店に来たって事よね? 怪しげな英語の看板、それに釣られて私も来るだろうと予測した? あり得ない話じゃないわね、だからここにメッセージ残したのでしょうね。


 よく見たら英語で他にも色々メッセージが書かれて掲げられてるわね。店の壁にぐるっとあるわ……他にも人探ししている転生者がこれだけ居るって事? なんなのこのお店……あれ? 誰か忘れて……


「ふふっ、そこの可憐なお嬢さん、お嬢さんは日本語が読めるんだね?」


 背後から爽やかな男性の声が響いてくるわ。そう美声、背筋が痺れるような美声……


「それに『地球』に『純情系ビッチ』か、そう……もしかして、お嬢さんはイザベラ・ベニカ・フォン・アシュリー嬢かな?」


 その一言、最後の一言に私の周囲が反応する。


「何者です! お嬢様お下がりください」


 侍女達が一斉に私の周りを囲んで防御態勢、店舗内でもあり、流石に十六人も護衛をゾロゾロと引き連れて見て回るのも迷惑だろうと、選抜された六名を護衛に連れていたのだけど、その彼等が更に周囲から私を囲んで完全防御。


 まあ、当然よね、私の今の姿はこの国の伝統、目の部分しか外から見えない外套に覆われていて、個人の判別何てつかないわ。この外套はアシュリー侯爵家の女性は、侍女以上の身分の者なら全員身に付けて出歩いている物よ、だから、その外見で私の正体を見破ることは不可能……


(この状態で私の正体を正確に見破るなんて……)


 まあこれだけ護衛を引き連れていれば、アシュリー侯爵家のそれなりに高貴な御令嬢だとは分かるでしょうけど、アシュリー侯爵家にはお父様の御兄弟の忘れ形見、私の従姉妹が他に四人もいるわ。


 お屋敷内の別邸で、それぞれ叔母様達と一緒に離れて暮らしているから、顔を合わせることはめったにないけど、お父様は従姉妹も、私と区別なく面倒を見て居られるから、護衛の数で見分けれるような事も無い筈……それに第一ベニカの存在はアシュリー侯爵家によって秘匿されているわ。


(従姉妹の方が、社交界に既にデビューして居たり、魔法学園に通っていたりと私よりも有名なくらいよ?)


 『アシュリー侯爵家には長女がいる』その事実は知られている。けど、姿どころか、その名前すら一部の者にしか知られていない。その名前を知っている、この美声の主は只者じゃあないわ。でも私は、そう私はその美声の主の事を知っている。


「ユリウス・レイン・フォン・シルフィード様?」


 第一弾のゲームで一番人気のイケメン。いえ、第二弾でも盤石の一番人気! その攻略難易度の高さから幻とまで言われたユリウス様!


 長い水色の髪は透き通るよう、美しくサラサラと流れているわ、その髪が女性と見まごうばかりの美貌を彩るの、虹色に輝く瞳は見た者を惹き付けて離さない……そう美しい、間違いなく男性なのにその美しさの魅了される。


(何このイケメン! 絶世の美男子!! うわぁぁ、ユリウス様が動いてる、本物! 本物のユリウス様だわ! フツクシイ! 美しいですわユリウス様!)


 顔だけ見ると女性と間違えそう、けど決して女性ではないわ、その美しさの中に逞しさがあるわ! 背が高くて均整の取れた身体、細身だけど弱々しさのない優雅な立ち姿。ゆったりとした白い上着と白いインナー、インナーは胸元が大胆に開いて、美しく締まった白い胸筋が見える、下は細身のクリーム色のスラックス、足が抜群に長いわ……


(うっはぅぅぅ……胸筋、美しい胸筋よ! なんてことなの、ああぅぅ……もっと……あと一寸、見えそうなのに見えない! それにやっぱり細身に見えても鍛えてらっしゃるわ、何て美しい肢体、しなやかな筋肉……ああ白い、染み一つない白い肌、何て綺麗な……あっ、ヤバい涎垂れそう……)


 下品にも見える気障な、ホストの様な格好なのに、それがとても優美に映る……絶世の美男子……


(天上の美の神の化身、間違いないわ、これはユリウス様よ! この美声、忘れるもんですか!)


 もうね、お気に入りの声優さんを、指名して声を吹き込んでもらったのよ。スマホに入れて寝る前に何度もリピート再生したわ。聞き間違えるなんてあり得ない!


「おやっ? 名前を知っていてもらえるとは光栄だね、ではやはりお嬢さんは、ベニカ嬢なのかな?」


「何故そう思われるのですか?」


 ユリウス様に名前を呼んでもらえる幸せに腰が砕けそうになるわ……ヤバい……これ本気で不味いわ、なんでこんな所で攻略対象のイケメンに遭うのよ? しかし、実物はイラストよりも更に凄いわ……


 うわぁぁ!! だめ、ユリウス様にベニカが目をつけられると、ザマァになったら外国の狒々ジジイの所に嫁に行かされるのよ!! この超絶美形のお兄さんは実は怖い人なのよ! 


 性格が悪い? 違うわ、主人公が堕とせたら超絶甘々で優しいわよ? けどね違うの、この人、好きな人を傷つける者に容赦がないの! こう見えてユリウス様は枢機卿、大神殿関係者の中でも可成りの実力者よ。何でこんな所に居るのよ!


「私は君に会ったことは無いからね。初対面で私の名前を知っている……私はベニカ嬢程ではないけど、あまり存在は知られていない筈なんだよね……姿は兎も角、その名前は特にね……初対面の人間に偽名では無く本名を言い当てられたのは初めてだね。なら恐らく妹と同じ存在、違うのかな?」


 抜かったわ!! そうだった……ユリウス様は普段『ユリシーズ・レイン』って偽名を名乗ってるんだったわ。


 ユリウス様は普段は市井に紛れて、悪事を働く不届き者を、成敗して回ってるのよね、遠山の金さんか? いやシナリオライターの後輩、そう美智瑠の趣味なのよ。


 あと普段街中に居るでしょ? 貴族の主人公とは接点が少なくてね。よっぽどユーザーが積極的に街中に出て、しかも貴族なのに街中の店舗でアルバイトする様な、そんな選択をしない限り会えないってレアキャラなのよ。


 それに主人公がユリウス様を市井の人間だと思って、少しでも上から接すると直ぐに会えなくなる幻のイケメン。主人公が自分を貴族だと思わずに、市井の人間に化けているユリウス様に常に対等に接して、初めてその攻略コースに入れるの。こう乙女ゲーって主人公の優雅な生活も魅力の一つなのに、それを全て捨てないとダメなの。


 私はもう一寸攻略難易度落とそうとしたんだけど、美智瑠が頑として譲らないから、こんなことになっちゃって……


 あれ? でもそう言えば……そうよシャーリー・ミチル・フォン・シルフィードのお兄様よね? 第一弾で攻略難易度が高すぎてクレームが来たから、悪役令嬢を追加する時に純情系ビッチを妹にして、接点を増やして攻略しやすいように調整したんだったわ。


(えっと……美智瑠ってば、ユリウス様の妹に転生したって事?)


 自分で最高難易度に設定したくせに、自分はその妹とか、なにそれズルくない?


(元の世界のユーザーに呪い殺されるが良いわ!! なんて羨ましい!! 純情系ビッチに女子ユーザーの嫉妬が集中したのも、その羨ましすぎるポジションからよ! しかもユリウス様は妹を溺愛している設定の筈……美智瑠! この裏切り者!!)


「美智瑠は今どうしているの? それに何でユリウス様はその事を知っているのかしら? 美智瑠が話したの? それをユリウス様は信じたの?」


「詳しい話はこの場ではね、直接本人に聞いてみては如何かな紅華先輩? まあ私はミチルの敵じゃない。君がミチルに敵対しない限り、私は君の味方だよ」


(この言い方……完全に把握されてる……そうよねユリウス様は全イケメンキャラクターの中で一番高スペックなのよね。『聖人』……神に愛されたイケメン……)


 この目の前の美男子は、こんな虫も殺さない様な美貌の持ち主なのに、裏で様々な所に根を張っている、影の実力者。王家である公爵家よりもヤバい人よ。ゲームではそんな設定だったけど、この世界では……この世界でもそんな感じがするわね。


 早々にユリウス様を味方に付けようと、色々話したのかしら美智瑠は? 良く信じて貰えたわね? ……日本語? そうか日本語があるって言ってたわね? なら他にも……転生者が居るって事かしら? それを知っていて、だから信じて貰えた?


「それに、もう一人も既に此方で把握しているからね。その方が君にも都合が良いんじゃないかな?」


「もう一人?」


「おや? 忘れられるとは可哀そうな……ミッチェル・ハズキ・フォン・バウスター、この名前も知ってるよね? 彼女……いや君にとっては彼かな?」


「彼? えっ彼?」


 ええ、知ってるわ、ミッチェル・ハズキ・フォン・バウスター、第二弾で追加したもう一人の悪役令嬢、小悪魔系の後輩の悪役令嬢、イラストレーターの後輩のお気に入り、って彼? …………巴瑞季……嘘っ? アイツなの? 自分で勇んで名前いれてたけど……ミッチェル・ハズキ・フォン・バウスターは女の子よ? 『俺の嫁』とか言ってたのに……巴瑞季の奴、その女の子に転生しちゃったの?


 もしかして……この世界のミッチェル・ハズキ・フォン・バウスターって男の娘? ツイてるとか?


「ああ、その目は、違うよ? 彼女はちゃんと女の子だからね? 中身は兎も角ね」


 ああ、良かった。私、ちょっと男の娘は苦手なのよ。大学生の頃に……ね、可愛い女の子の後輩だと思ってたら、いきなりグロいもの見せられてね、以来トラウマなの……あれで余計に婚期が遠のいたわ……ってそれが巴瑞季よね?


「お嬢様、お嬢様っ! この方はユリウス・レイン・フォン・シルフィード……あの枢機卿なのですか?」


 あっ、すっかり侍女達の事を忘れてたわ。シオンが慌ててる……って侍女達はこれだけのイケメン目の前にしてどうして落ち着いているの? 見てよ絶世の美男子よ? 少しくらい顔を赤らめるのが正しい美少女の姿でしょ? 私なんて今だに心臓がバクバクよ?


(何でこんな美男子を睨む様に見つめて警戒してるの? いや何でそんな事が出来るの?)


 あっ…………ああっ! そうなの? いや百合だとは思ってたけど、貴方達……完全にそっちなのね? お兄様達とも普通に会話してたけど、あれは慣れたとかじゃなくて、全く興味が無かったのね?


(ユリウス様相手にこれとか歪みないわね。本気で真正だったのね……あれ? ベニカ、ヤバくない? うーーん、本気でベニカ愛されてない? えっと性的に愛されてるよねこれ?)


 最近はトイレは一人よ。うん流石にそれは何とかね……他は相変わらずですけどね!


(そっかー、ガチなのか……なんでベニカは喜んでいるのかな? ダメだからね? そっちの道に進んじゃダメだから)


「お嬢様、何を思い悩んでいるんですか、違うんですか?」


「あっ、ごめんなさい。大丈夫よ、この方はユリウス・レイン・フォン・シルフィード枢機卿、警戒しても無駄よ。貴方達だって分かるでしょ? 化け物よ」


 ゲームの設定でも化け物だったけど、相対してると良くわかるわ。私も相手の力量が分かる程度には成長したって事かしらね? お父様とお母様を一人の人間の中に押し込めたような実力ね。剣の腕も、魔法の腕も半端じゃないわ……まるで勝てる気がしない。それに今は敵じゃない、なら可能な限り刺激しない方が良いわ。


「大丈夫ですお嬢様、私共が命を懸けてお守り致します。表の鳥馬車までお逃げください。その位の時間は稼いでみせます」


 お願いシオン、そんな事で命を懸けないで! ユリウス様も冗談でも身構えないで!


「勇敢なお嬢さんたちだね、ベニカ嬢、私は敵対する気はないんだけど、どうしてもやるのかな?」


「いえ、しませんわ。シオン達も構えを解きなさい。ユリウス様、美智瑠には会えますのでしょうか?」


「今度此方から招待状を送らせ……んんっ、いや此方から出向いた方が良さそうかな? この警戒ぶりだと君から出向くのは難しそうだからね」


 一応シオン達に警戒を解くように言ったのだけど、全く聞く気が無さそう……困ったわね。確かにシルフィード家に出かけていくなんて言ったら断固反対されそうね。そもそもシルフィード家は大神殿側の重鎮、貴族側の私が出向くのは不味いのよね。アシュリー侯爵家に来るのも歓迎されないけど、そこはコーデリア様もいるから、目立ちさえしなければ色々言い訳は出来るわ。


(ユリウス様が護衛に付けば、美智瑠はほぼ無敵よ。最小の護衛で我が家に来れる筈だわ)


「ではワタクシからご招待するように手配いたしますわ。美智瑠と巴瑞季、それとユリウス様でよろしいでしょうか?」


「私がいると返って警戒されそうだけどね……まあ可愛い妹の為か、良いだろう私も出向こう。君達だけで話したい、私が居ては都合が悪い話があるなら、その時は私は別室で待機しよう、まあ色々聞いて把握しているから、今更都合の悪い話もそうはないだろうけどね」


「巴瑞季はいきなり招待して大丈夫でしょうか?」


 会ったことも無い私から招待状を送っても怪しいだけよね? 私だったら絶対に招待を断るわ。でも他の方法で逢うのも難しいし……


「そちらは任せておいてくれ、私の方から連絡はしておくよ」


 ユリウス様が微笑んでウィンクするのよ、本物のユリウス様のウィンク……何故かしらズッキューンって音がする気がするんだけど?

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