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秘密組織の序列十位は自称器用貧乏  作者: 使い捨て系鉛玉
二章 勇者
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十七話 ししょー

ギリ間に合った……!

爆睡してた危ない。

あれ?アウト?

 

「はいタッチー。次、ハルが鬼ね」

「うわ、もう捕まった。コノちゃんは足が速いなあ」

「でも体育の50m走フウの方が速いんだよ。小学校じゃいっつも教室で本読んでるのに」

「そうなのか。けっこう意外だ……」


 それは、幼き日の光景。


 家のすぐ近くの公園で自分含む四人の子供が遊んでいる。

 一緒に居るのはいつも仲が良い三人だ。


 一人は、確か近所の女の子。

 年は一つ下で、この中の誰よりも活発だった。

 とても広い、敷地に道場まであるようなお屋敷に住んでいる。と言っても家のすぐ隣なのだが。


 もう一人は姉。自分の二つ上で何でも出来た彼女は、遊ぶ時にいつも先頭に立っていた。


 最後の一人は従妹。

 年齢は一つ下、とある事情によって家に引き取られ、この時には妹のような存在となっていた。

 性格は内向きだが、声をかけると嬉しそうに付いてくる。

 姉と共に随分可愛がったものだ。


 自分以外は皆女の子で、けれどそんなの関係なくただ一緒に居るのが楽しかった。

 鬼ごっこをしたりボールを使ったりと子供らしく色々な遊びをして、時々喧嘩しては泣いて、けれど最後には皆で笑い合う。


 本当に、楽しい日々だった。



 ◇


 ・ハルカ視点


 そこでふいに目が覚める。

 眠りが浅かったようで、いやに寝起きが良い。

 窓を見るとまだ外は薄暗く、遠くの空が若干空が白み始めている程度。だと言うのにすっかり目は冴えてしまっていた。


「やけに懐かしい夢を見たな」


 天井を眺めポツリと呟く。

 夢見はとてつもなく悪かった。

 はっきりと覚えているその内容は、日本にいた頃の記憶。いや、あれは思い出と言って良いかもしれない。

 それが嫌でも故郷を思い出させ、現在胸中に面倒な感情を渦巻かせていた。


 あんな夢を見た理由は一つしか無い。


『はる、か? え、なんで』


「……勇者、か」


 ここ最近のストレスの主な原因である単語を口にする。

 悪目立ちしている学院生活に、昨日襲撃に来た二人組。

 意識が覚醒してきたのも相まって、嫌な状況にあるこの現実を思い出してしまった。


「学院、行きたくねえなあ」


 問題は山積みで、雲行きも怪しくなって来た今回の任務。それを思うと、また一つため息がこぼれた。

 この間学院でも不意にこぼしてしまい、シャアラにため息は幸せを逃すと日本でも聞いたような事を教えられた。

 そもそもため息をつく奴は大体不幸で、逃げる幸せすらないと思う。



 まだ起きる時間でも無いので寝そべったままごろんと一つ寝返りをうつ。しかし布団か何かに阻まれて中途半端な態勢で止まってしまった。

 幸いというか布団を蹴飛ばすほど寝ぼけてはいないので仕方なくグズるのを中止し、上半身だけ起こす。


 しばらくして朝日が窓から差し込んでくる。

 その光は部屋中を照らし、真っ暗だった視界をはっきりとクリアにしていく。

 すると明瞭になった視覚が、すぐ真横にあった天使の寝顔を映した。

 それも、両隣に二つ。


 その寝顔は二つともよく似ていて、一見同じ子供が二人いるように見えるが、よく見れば片や女の子、片や男の子と性差があり、双子の子供なのだと分かる。


 すうすうと規則正しい寝息が両耳の鼓膜をくすぐり、その可愛らしい小さな手が俺の両腕を優しく握りしめているのを感じる。

 あどけない、その瓜二つ並べたようにそっくりな寝顔はどちらも大変可愛らしい。

 ぷくりと柔らかそうな頬を見て、堪えきれず指で突っつきたくなるが、両腕が幸せに囚われている事を思い出し断念する。


「んゅ……」


 パチリと、女の子の方の天使が目を覚まし、開いた翡翠色の瞳に俺の姿が写り込んだ。

 こちらと目が合うと、天使はとても、とても嬉しそうに破顔した。


「ししょー……!」


 次の瞬間、小さな重み、といっても羽のように軽い、可愛らしい感触がふわりと腹部に乗った。

 小さな頭がグイグイと胸に押し付けられる。


 そのやりとりがうるさかったのかもう一人の天使も目を覚ました。

 寝ぼけ眼を擦りながら体をゆっくりと起こし、数秒後パッチリと開いた目でこちらを捉える。


「ししょーだ!」


 前は既に埋まっているのでわざわざ背中に回り込まれ、後ろからのしかかられた。

 前も後ろも天使とか、何この幸せサンドイッチ。


「お、ノヴァ、この前よりちょっと重くなったか?」

「うん!身長もちょっと伸びたんだ。

 ケーネのおじさんに鍛えてもらって筋肉もついたし、僕男の子らしくなったでしょ!?」

「ああ、もうすっかり男の子だな。

 じゃあ、魔術の方はどうだ?修行は順調か?」

「そっちもすっごく頑張ったよ。もう骨折まで一瞬で治せるんだ」


 そう言って自慢気に胸を張る様は、男の子らしくなったといっても、やはりまだまだ幼さを感じさせて可愛らしい。

 前へ回り込んで頭がこちらに向けられたので、その頭を少し強目にクシャクシャと撫でる。

 すると弾けるような笑顔が咲いた。


「ししょー、私も」


 胸部に埋められていた頭が突然持ち上がり、鼻先まで突き出される。

 撫でろ、という事だろう。


「はは、スピカはこの甘え癖、治らないなあ」

「ん。気持ちいいから」


 頬を緩めながらながら髪を撫でる。こちらは女の子なので優しく。

 すると嬉しそうに目が細められた。


 やばい可愛すぎて悶死しそう。


 ◇


「ところで、二人は何しにここまで?」

「……言ってなかった?」

「昨日ししょー寝ちゃってたからね。

 久しぶりに会ったししょー見て抱きついてたら、つい僕らも寝ちゃった。ちゃんと宿取ってたのに」


 あはは……と恥ずかしそうに笑う。可愛い。


「宿、二人だけで取れたのか?」

「うん。……頑張った」

「偉いぞ」

「えへへ」


 褒めると二人は無邪気にはにかむ。可愛い。


「……はっ、そうじゃなくて、ここに来た理由」


 我に帰り、その表情が再び真剣なものに戻る。可愛い。


 気を取り直して、と咳払いを一つ置いて、二人は告げた。


「この度、【秩序の鎖】の戦闘班序列()()()スピカ・ソルシア・ウィルノート」

「並びに()()()ノヴァ・ルシアス・ウィルノート。

 勇者監視の任を受け、王立魔術学院中等部に派遣されました」


 おお、息ピッタリ。流石双子。そして可愛い。


「そうか、スピカ達のことだったのか。

 ……了解した。よろしく頼む」

「よろしくお願いします」

「よろしく。ししょー」


 両手でそれぞれの右手と左手に握手を交わした。



 この二人、スピカとノヴァは先程本人が告げた通り、ウチの組織の戦闘員だ。

 同時に二人とも俺の弟子でもある。

 双子だけあってかなり容姿が似ており、他にも共通点がかなり多い。また序列が連続していることから分かる通りほとんど実力も拮抗している。

 年は確か俺の四つ下だから、今は十二か?

 姓は俺や義姉貴と同じウィルノートだが、二人とも養子で、実は義姉貴とも、もちろん俺とも血は繋がっていない。


 そんな二人が今回ここに来たのは昨日ヒュノが言っていた監視任務の応援の為だ。

 中等部に派遣すると言っていたし間違い無いだろう。


「さて、そんな二人に報告がある」

「なに?」

「またトラブルー?」


 おお、察しがいい。というか『また』ってなんだ。

 間違って無いんだが、言い回しが釈然としない。


「そんなところだ。

 新しく敵対関係に発展しそうな組織が現れた。

 狙いは恐らく勇者。その組織の構成員がそう発言していた」

「その組織の情報は?」

「規模その他は一切不明。接触した構成員は要警戒と評せる程度には厄介だった。……そのぐらいかな。

 詳しい事は現在ヒュノが調査を本部に要請している」

「ししょーが要警戒……ヤバそうだね」

「交戦した時はお互いに全力じゃ無かったんだが、底知れなさを感じてな。二人も気をつけてくれ。

 何か怪しい動きがあったらヒュノか俺を呼ぶように」

「……ししょー」

「うん?」


 注意を呼びかけていたはずなのに、いつの間にか二人からはジト目を向けられていた。


「あのさししょー。僕達もう結構強いんだよ?」

「ああ知ってる。序列二十位(ロッター)の奴を倒したって聞いた時は俺も狂喜乱舞した。

 お祝いに竜の首を本部に贈ろうとしたんだけど、ヒュノに止められてな」

「それは恥ずかしいから止めて」

「え……」


 いやほら弟子が強くなったって聞いたらさ?師匠としては何より素晴らしいことな訳で、それが愛しい義兄弟の話となったら流石に贈り物の一つくらいーー


「止めて」

「はい……」


 何故だろう。視線が凄く痛い。

 ああ、去年までは「ししょー大好き」って純真だったのに。

 これが反抗期か。と、窓から空を見上げていると、でノヴァからもジトっとした視線が突き刺さる。


「話戻して良い?」

「あはは、ゴメンゴメン。なんだっけ?」

「僕達は強いって話」

「ああうん。だからそれは知ってる」

「ううん。分かってない。だって、折角僕達が来たのに、一度も頼るような事言ってくれて無い」


 寂しそうに目を伏せるノヴァ。

 スピカも悲しそうにこちらを見ている。

 それを見て、俺は心臓を掴まれたかのような錯覚を覚えた。

 二人は俺の大切な弟子だ。万が一にも危険が及んで欲しくない。過保護と言われようとこればかりは譲れない。

『ヒュノか俺を呼べ』と言ったのはそれを思っての事だったのだが、ああそうか、俺は二人を同僚として見ていなかったのか。


「悪かった。俺が馬鹿だった。ノヴァ、スピカ、お前たちはもう一人前だ。だから、改めて言わせてくれ。

 よろしく頼む」

「……うん!」

「こちらこそ、よろしく。ししょー」



 今回の任務、問題は山積みで、雲行きは怪しい。

 だけど今日、頼もしい仲間が加わった。

親バカタグ、やっと回収出来ました。


*タイトルの「〜話」の表記が間違ってました。

『二十話』から『十七話』に直しました。

伏線とか時間軸のズレとかそんなのは一切無いので「またやらかしやがった」と思っておいて下さい。

本当にすみませんでした。

やっぱり深夜に投稿すると良い事ないですね。

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