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秘密組織の序列十位は自称器用貧乏  作者: 使い捨て系鉛玉
二章 勇者
20/33

十五話 不穏な動き

あ、ありのまま今起こった事を話すぜ。

俺は一昨日の内に予約投稿をしたと思ったら、その日付設定が土曜になっていた。

な、何を言ってるのかわからねーと思うが俺も何がどうなったのかわからなかった……。

頭がどうにかなりそうだった……。

予約ミスだとか筆者が低脳だったとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……!


普通にミスですすみませんでした。

 

「かなりの想定外ですが、殺してしまえば、もう問題ないですよね?」


 目の前の青年がゆらりと揺れらめき、再び姿が消える。

 気がつくと、眼前に大鎌の切っ先が迫っていた。


「うおっ……と!」


 焦らず上半身を後ろに反らして躱し、戻す拍子に拳を突き出す。

 まだ鎌を振り抜いたままの態勢で隙だらけだったが、持ち手の部分で防がれてしまった。手がめちゃくちゃ痛い。

 拳を引っ込めるや否や、こちらの首筋目掛けて風切り音を立てながら鎌が迫ってきたので一歩下がって躱す。

 また、その反動を生かして隙の少ない回し蹴りを叩き込んだ。

 しかし少年は即座に身を捻り、蹴りは石の壁を抉っただけに終わった。


「ふッ!」

「ぐッ……オ……ラァ!!」

「おっと!」


 先程から攻撃の狙い目が急所ばかり。

 勝負を急いでいるというよりは、この位でも十分殺せるだろうと見下されているように感じた。

 お陰で動きが素直だから、避けやすい。


「この動きについてくるなんて、学生の癖に凄いですね。

 ちょっと楽しくなってきました」

「そりゃどうも!」


 ただの学生でないと見抜かれたのか、どんどん攻撃が激化していく。

 斬撃は鎌の長さに合わぬほど高速。

 こちらは市街地で魔術が使えないので、それらを体術だけで捌いていく。ホントこの校則無くした方が良いと思う。

 しかもこの少年、身のこなしがかなり素早い。

 どんどん追い詰められていき、そろそろ校則がどうとか言ってられなくなってきた。


「んー?学生にしてはやっぱり手慣れてますねえ。

 この攻防を経て依然余裕な様子ですし。

 ここまで来ると少々異常だ。あなた、何者ですか?」

「ハッ人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗れって親から教わらなかったか?

 俺は教わらなかったし、そもそもこの言葉を現実で聞いたことないけど」

「……愉快な人ですね」


 それにしても、王都の真ん中でこんな騒ぎが起きているというのに誰も来ない。

 近寄ってこないだけというのなら分かるが、付近に気配そのものが無いのだ。

 そろそろ警備隊の一人二人来てもおかしくないと思うのだが。


「ああ、人なら来ませんよ。

 一般人が入ってこれないよう結界を張っておきましたから」


 俺の視線の意味を読んだ様に少年はその事実を告げた。


「……何?」


 組織でトップクラスに危機察知能力の高い(おくびょうな)俺が結界に気づかなかった?

 いや、ちょっと待て。その前に、()()()()

 結界ならば、それなりに事前準備が必要なはず。

 しかも、記憶を辿る限りでは、城を出てすぐのところからずっと人が居なかった。つまり結界の規模はかなり広く、余計に大規模な動きが必要になる。

 だと言うのにその動きを王都に居る誰にも、()()()()()()()()()()()()()()()()()行った?

 それは『絶対に』不可能だ。断言して良い。

 例え隠蔽に長けている魔術師が居たとして、それでもそれを成すにはそういう次元じゃあまだ足りない。

 例えばウチの序列十一位『シキ・イツミヤ』。

 彼女は組織の誰に気づかれることなく魔術を発動できるが、だからと言って結界に閉じ込めるとなると、途端に不可能だ。

 ならば彼女を超える術師の可能性もあり得るが、ここ王都には三英雄(あのバケモノ)共とて居る。

 それらまで出し抜くとなると、その魔術師は多分世界滅ぼせる。

 そんな神にも等しい化け物はわざわざこんな結界に勇者を嵌めようとしない。

 だが、そうでもないとこんな事は……。


 ……。


 ……いや、あり得ないこともない、か?

 しかしそうなるとーー


「やけに慎重なんだな。呪術をかける為だけに近づいてきた割には」

「ああ、やっぱりあの握手の意味バレてたんですね。

 流石に演技でもあのセリフは無いと自分で思いました」


 少年は自嘲するように、しかしそれでいてどこか愉快そうに笑う。

 まあ、あの汗フェチ宣言みたいなセリフは俺とてドン引きしたが。


「ああ、ちなみにですが、結界(コレ)は、飽くまで"もしもの時"の為に用意したものです」

「『もしも』?」

「ええ。例えば、勇者が想定外に強かった時とかーー」


 一拍置いて、楽しそうにこちらを見ながら少年は続けた。


「ーーこんな風に、イレギュラーが迷い込んだ時の為とかね。

 最も、ここまで想定から離れるとは思いませんでしたが」

「お目当てと違って悪かったな」


 少年は恨みがましげな言葉に、クスクスと笑う。

 今度の笑みは、自分がどこまでも見透かされているような感じがして不快だった。


「ともあれ、今回はあなたのご明察の通り、タネを蒔くだけの予定でした。

 本格的に動くのは、あの邪神復活を目論む一派と勇者が衝突してからにしよう、と思っていたんですが、そうですね。

 あなたのようなのが居るとなると考え直す必要が出てきました」


 何?

 じゃあつまり、こいつはあの魔族の仲間でない?

 しかもまた別の組織が関わってきている可能性。

 ……マズイな。

 何が一番マズイって、ノイを筆頭とするあの化け物共が暴れる大義名分が出来てしまう。


 さて、それにしてもおかしい。

 何故この少年はそんな情報を俺に与える?

 今の発言は明らかに余計だったはずだ。


「そんなに喋って大丈夫なのか?」

「え? ……ああ、それなら心配ご無用です。なにせーー」


 ふと、グシャリと何かの潰れる音がした。

 水の詰まった皮袋を石に置いて、その石もろとも凄まじい力で捻り潰したような、そんな不快な音が、()()()()()()鳴った。


「ーーあなたのような不確定要素、今の内に何が何でも潰しますから」


「ッッッッッ!!ッッあぐッッぅ!!」


 少年の言葉など耳に入らなかった。

 ただ今は状況を見失わないよう自分に次に取るべき行動を言い聞かせ続ける。

 そうしないと思わず本気を出して正体を曝け出してしまうかもしれないから。


 痛みを誤魔化すように少年を睨みつけるが、奴は笑っているだけで、何かをした様子はない。


 ーーならば仲間か。そいつが遠くから魔術で攻撃してきた。

 どこから?音はしなかった。前触れも一切感知出来なかった。

 右腕はまるで骨など無いかの如くグニャリと弧を描くように歪んでおり、筋肉の赤黒い色がその表面に元々の肌の色と混ざり合うように覗いていた。

 一体どんな魔術を使えば、こんな有様になる?


 しかしそんな思考も、灼けるような激痛が塗りつぶしていく。



「チッちょっとズレたか」


 ふと、そんな声とともに、隣の屋敷の屋根から一人何者かが降り立つ。

 その音を聞いて我に帰りそちらに振り返る。

 するとそこに居たのは身の丈二メートル程の大男。

 体格が良く、穏やかな少年とは対照的な荒々しい雰囲気を持つ壮年だった。

 まるでスラム街のヤクザのような外見をしているが、その威圧感はチンピラのそれとは比べるまでもない。

 幾度となく命のやり取りを交わした、強者特有の凄みがあった。


「直前で勘付くとはめんどくせえヤローだ。

 気配なんかわかるはずがなかったんだがな。

 ったく黙って頭蓋骨砕かれてろよ」


 男は鬱陶しそうに言い捨てると、地面に唾を吐いた。


「はっはは……むちゃ……を……言うなっての……」

「あれ? そんな傷を負って、叫ばないどころかまだ軽口を叩きますか」


 気丈に取り繕う俺を見て少年は本当に驚いたように目を見開いた。

 確かにめちゃくちゃ痛いが、今はむしろアドレナリンが分泌され始めたおかげでかなりマシだ。


 そんなことより、そろそろ取り返しがつかないくらいに怪しまれている。

 流石に【秩序の鎖】の事まで勘づかれる訳には行かない。

 もう校則とか言ってないでこいつら捕らえた方が良いんじゃないかと、正体が露見する不安から今更ながらにそう思った。


 ーーあれ?

 そういえばそうだ。そもそも俺は学生である前に【秩序の鎖】の人間。


「ああ、なんだ」


 今取るべき行動は正体を隠し通す事じゃない。

 幸い、今は何をしようが誰かに見られることはないんだ。

 ならばむしろーー


「『踏み潰せ(リゲル)』」


 ーーこいつら外敵の駆除こそが、役目というものだろう。


「ーーッッ避けなさいタルセカ!」

「あ?ルダ?急になんーーうおッッ!!!?」


 タルセカと呼ばれた男のすぐ真横に巨大な光の塊が落下し、地面に大穴が空く。

 衝撃から大きな震動が起こり、男、タルセカはよろめいた。

 呆気にとられたように一瞬呆然とするタルセカは、しかし直ぐに我に帰ると、俺に敵意を込めた視線を投げつける。

 が、その先に俺はもう居ない。


「な、消えーー!?」

「ーーてねえよ。お前が消えろ」


 見失った俺を探して辺りを見回すタルセカの頰に俺の拳が深くめり込む。

 勢いよくタルセカは吹き飛び、何度もバウンドしながら建物八つ分程度向こうでよろよろと起き上がる。


「景気良く飛んだな」


 そんな感想を呟きながら、その時に生まれた間隙を突いて神聖術を行使し、ひしゃげていた右腕を治す。

 十秒程度掛け続け、それっぽい形まで修復出来た。

 本格的な治療はこの後にしようと思い、トドメにと魔術をタルセカに放つべく魔力を練り上げるが、しかしすぐに中断して横に跳んで後方から迫っていた斬撃を回避。

 少年、ルダからの攻撃は当然一度では終わらず、空間そのものを裂くような連撃が嵐の如く振るわれる。

 斬撃が先程とは比べ物にならない程に鋭く重く激しい。

 全力ーーかは分からないが、さっきの様な様子見を兼ねたお遊びとは動きが、目が、空気が違っていた。

 なにより、笑っていない。


「随分と怖い顔だな?」

「まだ彼に退場される訳にはいきませんので」

「そうか。なんならお前が捕まってくれて良いんだぞ?」

「それも結構!」


 突如、その大鎌の柄が勢い良く伸び、うねりくねって襲いかかってきた。

 その意思を持つかの如く動く様は、こちらの喉笛を食い千切らんとする蛇を思わせる。それを直前まで見切ってギリギリで避ける。

 行き場を失った鎌は後方にあった民家を一つまるまる粉砕した。

 それを見て避けて正解だったと胸中で胸を撫で下ろし、胸の中でどうやって胸撫でるんだよとツッコミながら奴との間合いを詰める。

 鎌の柄は伸びきったままで、それを未だに握っているルダは隙だらけだ。

 タルセカとやらと同じようにちょっと魔術で強化したパンチを叩き込もうと拳に力を込めて跳びかかる。


「っとお!?」


 が、気がつくと眼前にナイフのような黒い塊が迫っており、慌てて身を捻る。

 完全に回避した事を確認しルダに視線を戻すと、奴の手には先程のナイフがいくつも握られており、あの大鎌はもうこの場には見当たらなかった。

 瞬間、その真っ黒のナイフが次々と投擲される。

 易々と当たる俺では無いが、避けた先に投げられていたりと狙いが厭らしく、かなり躱しづらい。


「ゼェイッ!!」


 もう面倒なので簡単な魔術で地面をせり上げ、ナイフを全てまとめてカチ上げる。

 そしてその盛り上がった地面に跳び乗って視覚の死角(ココ笑うところ)から急襲する。

 しかしルダの目はしっかりとこちらを捉えており、接近と同時に踊るような動きで四方から無数の斬撃が迫った。


「うっおッッぐぅ!!」


 全力で体を縮めて捻りまくりながら跳んで躱し、なんとか掠っただけに留めた。

 しかしかなりギリギリで、割と本気で死ぬところだった。

 ナイフを繰り出してくる時に浮かんだ笑顔が死神のそれに見えて恐ろしかった。


「あはは。まるで曲芸師ですね」

「ハッ!こんなみっともない動きじゃ金は取れねえよ。

 それに、もっとアクロバティックな弟分を知ってるんでね」

「それはそれは、見てみたい」

「なら今度会わせてやるからとっととお縄につけ」

「お断りします」


 お互い同時に駆け出し、超近距離の攻防が再び展開される。

 こんなに唐突に遭遇した癖にこのルダとやら、かなり手強い。

 決して一桁メンバーに迫るほどではないが、こいつもまだ本気ではないだろう。

 使う魔術が黒い武器を生み出すというものだけで、攻撃の手段にかなり遠慮が見られた。

 しかしそれを隙とし、俺はつけこむ。


「『(デネブ)』」

「ーー!」


 ルダへ向けて手をかざしながらそう唱える。

 攻撃魔術が来ると予測した奴は即座に後ろに跳んだ。


「ッ!?」


 しかし直後、ルダの跳ぶ軌道が空中でカクンと下に曲がった。

 よく見ると、ルダの足には黒い糸が捕らえるように巻き付いており、地中から伸びているそれは、地面へと足を引っ張っていた。

 一瞬何が起こったのか理解できなかったルダは目を見開き、意識をこちらから外してしまう。

 当然、そんな大きな隙を逃すつもりはない。


「しまっ……!」


 一気に肉薄し、顔面めがけて拳を振りかぶる。

 しかし次の瞬間、眼前の景色が前方へと急速に遠ざかった。

 いや、違う。俺が後方へと吹き飛んだのだ。

 何故?

 決まってる。


「おッ返しだハッハアァァァァ!!」


 先程まで戦闘から離脱していたもう一人、タルセカに殴り飛ばされたからだ。

 クソ、すっかり忘れていた。

 地面に叩きつけられる寸前で受け身をとりながら自分へ悪態をつく。

 そういえば人間との殺し合いはおよそ一年ぶりだ。

 平和ボケしてしまっているのかもしれない。


「助かりましたよタルセカ。

 それにしても、本当に強いですね。戦い方といい攻撃の対処法といい、明らかに場数を踏んだ者の動きだ。

 魔術の質も先程から恐ろしく高い。

 こんな存在、"彼女"が見落としていたとは思えないのですが」

「ァア!?ンなモンどうでもいいだろ!

 とにかく今オレは嬉しいぜ。こんな獲物久し振りなんだ。

 ほら、殴られたところがまだめちゃくちゃ痛えんだ!

 なんならオレ一人に戦らせてお前は報告しに帰ってろ。

 謎解きでもなんでも勝手にやってりゃ良い」

「……はあ、仕方ないですね」

「ああ仕方ねえんだ。疼いて疼いて仕方ねえ」

「そうですか。じゃあーー」


 呆れたようなルダに期待に満ちた目を向けるタルセカ。

 その視線を受け、ルダは諦めたように力なく笑った。


「ーー帰りましょっか」

「おおそうかそうか!……ハア!?」

「出来るならあなたの言う通りに始末したいのですが、少々未知数な要素が多過ぎる。

 下手に手を出すと……」

「……ンだよ」

「とんでもない藪蛇になりそうだ」

「ァア!?」


 こちらを見てルダは怪しげに笑う。

 その意味深長な態度が合わない性分なのか、タルセカは気にくわない様子で依然つっかかる。


「藪蛇だと!?そンぐらいーー」

「あなた一人では責任を取りきれない程の、ね」

「……チッ。あークソそうかよ!!」


 タルセカが盛大に舌打ちし、話は纏まったようだ。

 二人は揃ってこちらを見据える。


「申し訳ありませんが、今回はここで退かせていただきます。

 今度相見(あいまみ)えた時は全力で決着をつけましょう」

「待っ……!」


 背を向ける二人組を慌てて追いかける。

 しかしその行く手を阻むように、突然目の前に人が現れた。

 あまりにも急だったために避けきれず、その人間とぶつかってしまう。


「キャッ!」

「うわっ!」


 思わず尻餅をつき、ぶつかった人物と目が合う。

 その目は、俺と同じ黒。

 髪まで黒いその人物はーー


「あ、あなたは」


 ーー勇者コノミ・イザヨイだった。


「ッッ奴らは!」


 我に帰りあの二人を探すが、もうその姿はどこにも見当たらない。

 逃げられてしまったみたいだ。

 しかしそこで、ふと気がつく。喧騒が聞こえることに。


「……あれ?」


 あたりは先程戦闘を繰り広げていた場所となんら変わりない。

 ただし見回すと、先程とは異なる点が一つ。人が居た。

 通りを歩く一般人が、隣の建物の中には笑い声を上げる子供が、道の端で果物を売る露天商が、まるでずっとここに居たかのようにいつも通りの生活を営んでいた。


「ねえ、どうしたの?」

「あ、ああ」


 かけられた声に、思考が定まらないまま曖昧に返事する。

 脳内を疑問詞が埋め尽くしてすっかり混乱してしまっていたので、それも仕方ないだろう。


 このあまりにも突然の事に全く状況が飲み込めない中、ただこれだけ分かった。


 また、厄介な事に巻き込まれた。と。


戦闘描写がやっと書けた……!

おかげでいつもに増して話が進まない上に駄文になりました。すみません。


……なんか最近謝りまくってる気がする。

誤りまくってる所為なんですけどね(爆笑ギャグ)

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