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秘密組織の序列十位は自称器用貧乏  作者: 使い捨て系鉛玉
閑話の一
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閑話・ハルカとヒュノの迷宮探索②

水曜日に予約投稿したつもりで全然出来てませんでした。

すいません。


引き続き閑話です。

後一話ほど続きます。

その後はネムリア(第三王女の人)の話を一話書き、本編を再開しようと思います。

 

 ・ハルカ視点


 音速(マッハ)で(比喩に非ず)突進してくるカブト虫のような生物三体と交戦したあの場所は、どうやら三階層でも後半を過ぎていたようで、あの後すぐに森を抜けた。

 現在、四階層との中間地点にある廊下を歩いている。


「ああ、穴があったら入りたい……!」


 ヒュノは森を抜けるあたりで復活したが、記憶は残ったままだったらしい。

 現在俺の背中で、かれこれ二十分悶えている。

 火照った顔が背中に押し付けられると熱いので、いい加減降りて欲しい。

 というか負ぶられるのは恥ずかしくないんだな。


「はあ……誰にも言わないからそろそろ下りてくれ。

 また周りの雰囲気が変わった」

「言いましたよ!?聞きましたよ!?

 誰にも言わないでくださいね!!」


 うっわ必死……。

 分かったから肩に張り付いたまま叫ばないで欲しい。

 首筋にかかる吐息がくすぐったい。


「言っておきますが、さっきのは錯乱してて何の取り留めもないことを喋ってただけです。

 本音とかそんなの一切混じってませんから!」

「え、あれ全部嘘だったのか……?」

「全部嘘です。 真実なんか何一つありません。

 むしろ反対の事しか言ってません」

「……そうなんだ」


 へえ……俺の髪って臭うのかあ……へえ……あれ、なんか涙出てきた。

 ……今度日本のシャンプー作ってみようかなあ。

 そんな事をふと考える俺を他所に、背中から降りたヒュノは廊下の壁に向かって何やら話しかけていた。


「あれは悪い夢あれは悪い夢あれは悪い夢。あ、でもハルカの背中……じゃない! ……あれ、どうかしましたか?」

「……何でもない。行こうか」

「……? はい」


 ◇


 その後も何度か死にかけながらではあるが、迫る脅威をことごとく切り抜け、無事に迷宮を進んでいった。


 四階層は、全域が溶岩の海だった。

 もちろん歩いて進む事は出来ないし、そのエリア気温そのものが六十度はあった。

 その為魔術で飛行して、しかも体温も調節しながら移動しなければならなかったのだ。

 しかも、その溶岩の中から幾柱もの間欠泉が、絶え間なく噴き出してくる。

 当たれば発火して消炭だろうし、その数をことごとく迎撃する訳にも行かず、残された選択は回避のみだった。

 なんとか突破する事が出来たが中々危なかった。

 あと某配管工のゲームのマグマトラップを思い出した。


 五階層は壁や床などの周囲が、全て肉のような蠢く何かで出来ていた。

 その肉が、鼓動のような鳴動を絶えず響かせていたものだから気色が悪かった。生息していた魔物もおぞましい形をしていて、とにかく精神的に辛いものがあった。

 壁傷つけたらそこから赤黒い液体が吹き出すし。

 まあ大した障害があった訳でも無いから他と比べて全然簡単に突破出来たけど。



 六階層には、空が広がっていた。

 そう。空だ。地面は無い。

 前後左右上下どこを見ても、ただ青い空があるだけで、足場がどこにも見当たらなかった。

 例によって飛行魔術による移動を選択したわけだが、もちろんそれだけの階層ではなかった。

 岩石が、どこからともなく、それも無数に降り注いでいたのだ。

 しかもその降ってくる岩石、一つ一つが凄まじい勢いで、被弾した足の骨が砕けた。

 空間に開いた穴が出口となっていて、見つけた時はどうなっているのか不思議だった。



 それらの階層を抜けると、中間地点とはまた雰囲気を異にする、どちらかと言えば遺跡のような、整えられた石造りの廊下に着いた。

 一本道で、罠や隠し扉といった仕掛けも一切ない。


 先程まで隣にあった死の匂いがどこにも見当たらず、だからこそ今までで一番違和感を覚えていた。


 警戒するに越した事はないが、足踏みしていても仕方ないのでとにかく進む。

 変わり映えのしない一本道を二時間ほど歩くと、やがて大きな扉の前にたどり着いた。 途中で会話が無くなって気不味かった程度で、やはり大した脅威は無かった。



 扉の向こうからは途轍もなく巨大な魔力が感じられる。

 迷宮の核、魔石がそこにあるのだろう。

 そう考えるとやっと着いたのかという安堵感と、達成感のような、なんとも言えない感情が同時に胸に湧き上がった。



「どうだ?」


 入る前にヒュノに『魔眼』でトラップの有無を確かめてもらう。


「魔力の反応が魔石、いえ、これは魔晶石ですね。それ以外は見当たりません。少なくとも魔力式のトラップはありませんね」

「オッケ。警戒だけは維持して入ろう」


『魔眼』は便利だ。

 特にヒュノの魔眼は特別で、その気になれば透視や予知など、超能力のような事まで出来るらしい。

 その分制御が途轍も無く難しいが。

 今回もヒュノのお陰で魔晶石から漏れ出る魔力を辿って一直線に来れたのだ。 罠の解除も速やかで、と言っても罠など他の死亡要因に比べれば可愛いものだったが、かなり攻略において助かった。三階層ではアレだったが。

 ……ん?


「そう言えば透視は使わないのか?」

「えっ!?」


 その言葉に、ヒュノはびくりと過剰なまでの反応を見せた。

 しかしどこか大げさで、不自然にすら写った。


「そんなに高性能じゃないのは知ってるが、それでも『透視』ならある程度中の地形が把握出来るんじゃないか?」


 この問いかけにヒュノは目を逸らし、あからさまに狼狽え始める。


「あ、いえ、その、使わないようにしてるんですよ。

 ちょ、ちょっと昔痛い目にあいまして」


 その声は上擦っていて、どこか誤魔化すような、後ろめたい感情がなんとなく伺えた。


 それを聞いて、質問した事を悔やんだ。


 ヒュノはこれまで、生まれつき持っていたその『眼』の所為で色々と不幸な目にあって来た。

 親のどちらにもない銀色の眼を気味悪がられて村で迫害されたり、見たくないものを見てしまって心が壊れそうになったりと、実は中々に壮絶な人生を送っている。

 任務中に透視について知られて気味悪がられたりでもしていたならば、今の質問は余計な事を思い出させてしまったかもしれない。


「ちょっと無神経だった。済まない」

「……? 急に萎らしくなってどうしたんですか?

 ですが、そうですね。この件は出来れば追求しないでくれると助かります」


 その声のトーンはあまり普段の物と変わりなく、本当にあまり気にしていないようだった。

 若干頰が紅潮していたようだったが、落ち込んでいる訳では無さそうだったのでとりあえず安心した。


 ◇


「じゃあ、行くぞ」

「ええ。何か飛んで来たら迎撃します。

 扉が開いたら即座に伏せてください」

「了解。って(おんも)いなこの扉。

 結構力要るぞ。んじゃ、せー……のっ!!」


 重い音を立てながら扉がゆっくりと開く。

 一度引いただけで、扉は重い音を立てながら独りでに開いて行った。

 手を離して一旦扉から距離を取り、態勢を低くする。

 ヒュノの方はと言えば、トラップや魔物を警戒して臨戦態勢を取っていた。


「……」

「……」


 しばらくそのまま待機していたが、音もなく、何も起きる気配がない。そのままただ時間が過ぎていった。


「……大丈夫そうです。入りましょうか」


 頷くと、恐る恐る最深部へと足を踏み入れた。


 だがそんな警戒の思考は、しかし目の前に飛び込んできた景色によって跡形もなく掻き消されてしまった。



「わあ……」


 ふとヒュノの方から歓声が上がる。

 俺も、思わず絶句していた。

 扉の向こうに広がる光景は、屋内のような、石の壁に囲まれた、円状の広い空間だった。

 それも、鳥肌が立つほどに綺麗な。

 綺麗といっても汚れがないのは当然として、そうではなく、まるで教会の中のような、芸術的美しさがあるのだ。 床にはまるで人の手が入っているかのような、さながら壁画のようなデザインが施されている。

 しかし何より目立つのはやはり中心。 青白く輝く水晶だろう。

 膨大な魔力を秘めた魔晶石がこの部屋全てをを照らしながら、圧倒的な存在感を放って佇んでいた。


「これは……とんでもないな」

「浅い階層はあんなに無秩序だったのに、まるで神様が作ったみたい」


 神様とは、なんとも詩的な表現だったが、口を挟むことさえ野暮だと思った。

 それにあながち的を外していないようにも感じられた。

 この完成され尽くした配置は人の意思を感じながらも、人では至れない究極を感じられた。

 まさに神による芸術。

 ヒュノの容貌と同種の美しさがあった。


 まあ、そんなナンパみたいな事、間違っても口には出さないが。



「しかし、参ったな。これだと回収がしにくい。

 勿体な過ぎる」

「そうですね。これが任務で、それも安全の為だとわかっているのに、それでも惜しい」


 核である魔晶石を取って仕舞えば、この光景は迷宮の崩壊とともに永遠に失われてしまうだろう。

 そう思うと、回収任務の放棄さえ考えてしまいそうだった。

 ヒュノも困ったように笑って同意した。

 それも、任務による義務だと分かっているからこそのものだったが。


 ◇


「魔力は回復したか?」

「大丈夫そうです。

 では、そろそろ終わらせましょうか」


 そう言ってヒュノは魔晶石の回収に取り掛かった。

 その表情は未だに名残惜しそうだったが、やらねばならない事だと分かっている為、そこに迷いは見当たらない。

 俺も、その作業の手伝いに取り掛かった。


 迷宮の核である魔石はとある方法によって取り外し、回収ができる。

 魔石を壊してしまっても迷宮は無事消滅するが、こんな莫大な魔力を秘めた迷宮でそれをすると魔力暴走の危険がある。それが魔晶石(よりおおきなまりょく)ともなれば尚更だ。

 その点、魔石を回収してしまえば、その危険がないだけでなく魔石が手に入るのだ。

 魔石の用途は様々で、生活の基盤にもなっている。

 種類によっては高額で引き取る機関も存在し、腕に自信のある冒険者の中には迷宮の攻略を生業とする者さえいる。

 と、まあ長々と語った訳だが、要するにその方法も確立しているという訳だ。

 そして今回もその方法を用いる。迷宮の各所に伸びた魔晶石に繋がる魔力の線、簡易版の魔脈のようなものを解析しながら一つ一つ外していく。

 こんな作業、ノイの奴ならば術式をちょっと弄るだけで裏技のように簡単にやってしまうのだろうが、それは流石に荷が重い。 あんな歩く演算装置の真似をしろなど、全人類にとって無理難題だ。 運動方程式の利用とかを考えれば結構食い下がれる自信はあるが。

 ちなみにその過程でどこから魔力が流れてきたのかも調べる事が出来たので後処理の方も進展した。

 どうやら反魔性の高い鉱石が魔脈を阻んでしまっていたようだ。後で報告して他の人を派遣してもらおう。


 ◇


「後何本?」

「十も残ってません。パパッと切り離しちゃってください」

「おお、意外と早く終わりそうだな」


 現在、ヒュノが『視』て、俺が魔力線を切り離す作業になっていた。 途中までは二人で解析から切断までしていたのだが、俺の提案でこうなった。

 そしてそれももうすぐ終わるらしい。

 迷宮の規模的にもっと掛かると思っていたのだが、魔眼の力は偉大だな。


「それで最後です。取っちゃってください」

「ん、了解。……よし。じゃあ早くこんなところ帰ーーー」


 ーーー帰ろうぜ。と言おうとした、その時の事だった。背から腹部にかけてトン、と軽い衝撃が走る。

 疑問に思って自分の腹部を見下ろすと、銀色の刃が腹から突き出していた。

次回戦闘回です。

明後日の投稿になるかと。


ところで説明回って難しいですね。

八話の術式の説明が自分で読んでて訳が分からなかったので大幅に改稿しました。

よろしければお暇な時にまたご覧ください。

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