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リトヴィー家の執事  作者: 蒼咲猫
学園編
18/18

踊らされた彼らと理事長の決断

お知らせが活動報告にあります。


前に活動報告にて実施したアンケートで要望のあった要素その1がはいっています。



『ーーねぇ、学園初等部理事長様?』



ーーside ラディアス


 思いの外よく響いた言葉に、空気がピシリと凍る音が聞こえた気がしました。

 けれど、そんなことは些細なことで。

凍り付いた空気を気にすることもなく後ろへと振り返り、意識していつものように笑います。


 陽の光を背に立っているのは、私と共にリーチェ寮へと向かっていた学園初等部の理事長です。

 彼女はその金の長い髪を風になびかせ、栗色の目でギッ!と男たちを睨みつけています。


「初等部、理事長……?」

「って、あの(・・)『金炎』の!?」

「嘘だろ……。何故此処に……!」


 暫し呆然とした後でザッと青ざめた男たちの顔は恐怖でひきつっていて、再びガタガタと震え出しました。

 ……まったく、情けない。

 理事長の登場(これぐらい)で怯えるくらいなら、最初っから欲を出さなければ良かったのです。

……まぁ、もう手遅れ(おわったこと)ですが。


「ラディアス殿、コイツらが迷惑かけて悪かったわね」


 笑顔で謝ってくる理事長。その一挙一動の全てが優雅で、一見穏やかな女性、なのですが……。


「わたしのシマ(ナワバリ)で、よくもまぁやってくれたじゃないの。ん?」


 爛々と輝く目が、その優雅な仕草や雰囲気を裏切っていて、彼女が見た目通りの存在ではない

ことを暗に示しています。

 ……。

 可笑しいですね、理事長は笑顔なのですが、背後に般若の顔が……。

あぁ、よく見ると、理事長の額にうっすらと青筋が……。

 相当、キレているようですね。

……カルシウム不足でしょうか?

後で何か差し入れを手配しておきましょう。


 さて、そろそろ理事長(かのじょ)を止めなければ。

いつの間にか、グロウシィツ家の方々が気絶してしまいそうになっていますし。

……軟弱な人達ですね、本当に。


「構いませんよ、理事長(リートウルケ)様。貴女様()悪くありませんから」


 つまり、学園「は」悪くないから見逃すが、グロウシィツ家の方々は赦さない、ということを遠回しに伝えています。

 イイ笑顔で言った自覚はあるのですが、ザッと(物理的に)退()いた理事長達を見ると、予想以上に効果があったようです。

 自分でも(タチ)悪いとは思いますが、どうしてもこういう(ゲス)をみると、徹底的に潰すか心を折るかして、完膚なきまでに叩きのめ(ボコボコに)したくなるんですよね。

……前世(もともと)が女性だったことも、大きな原因なのでしょうが。


「そう。……あぁ、コイツらのことを忘れていたわ。うーん、そうねぇ、今回の事以外にもいろいろあるし、ねぇ……。

 ーー貴方たち(グロウシィツ)には、今後学園に対する一切の手出しを禁じます。

 ああ、学園を退学にはしませんから、安心して頂戴?」

「「「なっ!?」」」


 余罪を含めて考えると、一見甘いような処罰。

しかし、グロウシィツ家にとってはたまったものではないでしょう。


 初代当主が商人だったこともあり、グロウシィツ家の子飼いの商人の規模が、男爵家にしてはかなり大きいのです。

 そう、この学園という激戦区にも支店を出せるぐらいには。

 学園に手出し禁止ーー。

グロウシィツ家にとっては、何よりも厳しい罰でしょう。



「成る程。しかし、独断で、ですか……?」


 そう、懸念すべきなのはそこ。

 学園に出店する店は、ある程度の金額をある一定の期間で支払っています。

どの程度の金額かは学園に出している店舗の規模にもよりますが。

ただそのお金が学園の運営資金の一部である以上、独断で商会の立ち入りを決めたとなると、かなりの確率で大問題になります。

そんな基本的なこと、彼女が忘れるとは思えませんが……。

……下手すればこれは、レクト様の陰謀だという噂がたつかもしれません。

それだけは何としてでも阻止したいですね。

 そんな私の内心など気にもせず、あっけからんと彼女は事情を暴露します。


「心配しなくて大丈夫よ。理事会で決まっていたことだから」


 ……つまり、最初っからその気だったということですか。

こちらが彼女を利用したつもりでいましたが、実際はこちらも利用されていた、と。

 策を見抜けなかったことは失敗です。次の機会があれば、こんどこそ利用されないようにしなければいけませんね。

ですが、今はただ……。


「流石、ですね。相変わらずの策士ですね、師匠(・・)


 素直に見習おうと思うのです。


「あら、あなたも腕を上げたじゃないの。確か……あぁ、『魔王執事』だったっけ?噂は聞いているわよ」


 学園初等部の理事長は、幼い頃に師事した私の策略や謀略などの師匠ーーリートウルケ様。

 彼女の2つ名は『金炎』。

かつて魔物の大侵攻があった際に、効率のいい魔物の殲滅作戦を提案し、自らも戦場にたった女傑。

その時に、風になびく金の髪が炎のようにみえたことから、『金炎』の2つ名がついたらしいです。

 『金炎(かのじょ)』は、軍師や文官などの憧れなのだそうです。

普段の姿を見ると、とてもそうは見えませんが。


 ……ところで、師匠。

『魔王執事』とは一体……?


「あら、知らないの?あなたの新しい2つ名よ」

「さりげなく思考を読まないでください」


 と言うか師匠。あなたは一体、どうやって思考を読んだのですか。


「え?だって顔に書いているもの。判りやすいわ」

「ですから、思考を読まないでくださいと、」

「イ・ヤ♪」

「…………」


 思わず、無言で師匠を見た私は間違っていないはずです。

いい年した大人ーーしかも理事長ーーが、何駄々こねているのでしょうか。しかも音符付き。

と言うか、また(・・)ですか。


3つ目(・・・)の2つ名おめでとー、『魔王執事』殿」

「棒読みで言われても……。

 ですが、一応ありがとうございます、師匠」


 これで、現在私の2つ名は3つになりました。

あと何年か経てば、2つ名の内からどれか1つの2つ名が選ばれて、それが主に使われるようになるでしょう。


 さて……。


「ーーで、邪魔者(グロウシィツ)は居なくなりましたし、本題は何でしょうか、理事長様?」


 グロウシィツ家の方々は、私達が談笑している間に逃げるように……いえ、実際に逃げていきました。

 マイリーンも空気を読んでレクト様の寮室へ先に向かいましたし、この周囲には誰もいないことは確認済みです。

 敢えて私が役職名で呼んだ意図に気付いた理事長は、感情の読めない独特の笑みで私を見つめて、こう言いました。


ーーあなたに依頼よ、『影の支配者(ラディアス・シリカヴィルス)』。


 影の支配者(そのなまえ)は、とある筋ではとても有名な。

 ……情報屋としての、私の2つ名を。



ありがとうございましたー!


だから勝手に動かないでくれるかな、ラディアスと師匠!(笑)

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