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太陽の国  作者: ラジオ
第二章 魔法学校編
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~リーン、モールスに接触を図られる~

 リーンがウラシルと一日の最後の食事を取りに食堂へ足を運ぶと、普段はリーンと一緒になることのないモールスの姿があった。しかも、リーンとウラシルが食事を共にすることの多い端っこのテーブルからいくつも離れないテーブルで、食事には手をつけず一人ばつが悪そうにそわそわしていた。

「ウラシルが会ったっていうのはあいつのことだよな?」

 リーンが視線で示して尋ねると、ウラシルは迷うことなく頷いた。

「彼だよ、間違いない。見るからに何か気がかりなことでもありそうだね」

「俺は本当に心当たりがないんだが……」

 リーンはウラシルと食事を載せたトレイをもっていつもの席に着く間際、モールスの前を通りすがりに「おお、久しぶりだな、モールス」と何気なさを装って声をかけた。しかし相手は「お、ああ。久しぶりだな」とだけ返して目を伏せてしまった。

「リーンの知らないところで、何かリーンに悪いことでもしちゃったんじゃないの?」

 席に着いてからウラシルが当てずっぽうに言った。

「何にせよ、向こうから話してくるまで待つしかないだろう」

 モールスがリーンたちの方をちらちら窺っているのを確認しながら食事を終えた後も、リーンは気を遣って少しウラシルと世間話をして待ってみた。そして不意にモールスが立ち上がったかと思うと、ずかずかとまっすぐにリーンたちのテーブルの前に立ちはだかった。

「な、なあ、リーン」

 リーンは落ち着いた柔らかな態度を意識してモールスの方へ顔を向けた。

「どうかしたかのか、モールス?」

 モールスはしばらく俯いがちに目を閉じていた後、ついに口を開いた。

「リ、リーン、普通学校の時と変わらず、元気か?」

 会話のあいさつにしては不自然な言葉だった。

 ――俺が普通学校の時と変わらないことがそんなに大事なのか?

 内なる疑問を差し置いてとりあえずリーンは「ああ。特に風邪もひいていない」と返した。モールスの用件を知りたいと思う気持ちの方が断然強かった。

「そ、そうか。あの頃のお前は悪を許さない正義感の塊みたいな、根っからの善人だったよな」

 モールスは世間話とも用件の内容とも取れない、まるで何かを確認しようとするような言葉を発した。

「俺は俺なりの信念を貫いて生きているだけだ」

 リーンが偉そうにそう言うと、

「正義感? 寮の部屋で魔法の練習してなかったっけ?」

 とウラシルがからかい口調で囁いた。

「度を超えない分別はわきまえているし、誰の迷惑にもならないことを前提に行っているからいいんだ」

 リーンは平然と返した。リーンの中では規則を破ることと他者を傷つける「悪」には明確な線引きがされていた。

 モールスが一瞬リーンに目をやってやや期待の表情を浮かべたように見えた。

「リーン、実はお前に……」

「あ、あの人がイルジーって生徒だよね?」

 ウラシルが唐突に食堂の出入り口の方を指差して口を挟むと、モールスはぱっとそちらを振り向いた。そしてイルジーの姿を確認すると、「悪い。何でもない」とだけ言い残して、まるでイルジーから逃げるようにイルジーの背後を取って食器を返し、足早に食堂を去った。

 ウラシルはわずかに罪悪感のこもった口調で呟いた。

「あれ……イルジーって生徒はモールス君の友達だって聞いたから、彼と一緒なら話しやすいかなって思ったんだけど……何だか逆効果だったみたいだね」

 リーンは呆れたように溜息をついた。

「もしそうだったら、最初からイルジーと一緒に俺に声をかけにくるに決まっているだろう」

「それもそうだね、悪かったよ。でもそうすると、モールス君のリーンへの用件は、友達のイルジー君には聞かれたくないってことだよね」

「だが、イルジーに対するあの態度はどうもその程度じゃなかった気がするぞ。どちらかと言えば、イルジーに気付かれずに何かを為そうとしていたように見えた」

 だが、ウラシルの意見はリーンとは異なった。

「そう? 僕の目には、彼はイルジー君を怖がっているように見えたんだけどな」

 そう言えばそうかもしれない、とリーンは思った。

 とにもかくにも、リーンはモールスの用件を聞きそびれてしまい、彼が再びリーンに意を決して話しかけてくるまでは、その内容はモールスの心中の閉ざされた密閉空間からは出てこられないに違いなかった。


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