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竜契の巨人 血を啜れ約束を果たせ 闘技場の王  作者: 織部


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秘密兵器

「おいおい、又、隊列の整備で一日終わらせるつもりか?」

 俺はいらいらしていた。


「どうも、秘密兵器があるみたいだ。それを待っているらしい」

 カインが答えた。


「秘密兵器ってなんだ?」

「珍しくあいつらの口が硬いらしい。いや、当主と数人しか知らないみたいだ」

「まあ、楽しみにしていよう!」


 敵は、夜襲の体制も組んでいるようだ。こちらの戦略は、出来るだけ被害を出さないことだ。


「今夜の夜襲は、中止だとよ」

 フウマが、俺に愚痴を言いにきた。

「仕方ないさ、奴ら、堀を作ったり、灯火台を増やしたりしてるしな。それに……」


「ああ、奴ら、獣人族の一般民を警備に駆り出したと聞いている。こんなやり方をする古井戸家は、許さん」


 ウルフは、怒りでガシガシと歯を合わせた。

「ああ、決戦は近い。その時までの我慢だ」


 どしゃ、どしゃ、どしゃ。

 砂を掻き分け、何かが這い寄ってくる。

 現れたのは――砂漠蛇。アジ=サハラ。それも、一匹ではない。三匹だ。


 金色の光を帯びた波のような体が、砂漠に螺旋の軌跡を刻む。

 複眼が鋭く光り、長い舌がしゅる、しゅると音を立てる。


 大きく開いた口の奥、濡れた牙がぎらりと覗いた。

「ほお、魔物使いか?」

「知ってるのか?」

「ああ、魔物の額に、従魔紋があろう。しかし、悪趣味だな。可愛げがない」


 確かにだ。何を好き好んで、蛇を飼うのか。秘密兵器とはこれのことか。

「さて、迎え撃つか!」

 あっという間に、防御壁の前にまでやってきそうな勢いだ。


「駄目だ! 効かない」

「消されるだけだ。攻撃は無駄だ。弱点を探せ」


 迎撃に出た魔法剣士軍の、魔法の矢は悉く跳ね返り消える。

「シフリー、後退しろ!」


 俺は大声で叫ぶ。飛び道具を持つ部隊は、大切な戦力だ。砂漠蜥蜴のそりに乗った

 砂漠蛇の全長の長さは、荷車を十台くらい並べた長さにもなるだろう。


 首を高くもたげており、その高さは、俺の数倍はある。

 アジ=サハラと呼ばれる砂漠蛇が、獲物を捕らえに、首を下げた瞬間に、狙うしかなさそうだが。


「どんな蛇だ? カイン、知ってるか?」

「あくまで、魔物図鑑の知識だが、金色の胴体は、魔法耐性があり、刃の届かぬ鎧皮と言われている」


「あの針山みたいな尻尾も曲者だな。鞭みたいに、ふられたらまずそうだな」

 まだ遠い。俺のように、目が良く無ければわからないだろう。


「それと、針が広がる尖った尻尾と牙には猛毒がある。普通の人間ならば、即死だ。気をつけて」

「ありがとう。カイン、だいたいわかった。丁度、三匹だ。一軍で、一匹倒すだけだ!」


 その前に、このままだと魔法剣士達の部隊を載せたそりが捕まってしまう。

 俺は、素知らぬ顔で砂漠蛇に地面から硬い土槍を魔法で撃ち込んだ。だが、硬さが足りなかったようだ。無傷のようだ。


 俺は、サーミヤだけに聞こえる声で話す。

「まだ、俺の魔法は力が弱いな!」

「ほっほっほ、そうじゃな、子供の魔法じゃな」


 サーミヤに笑われてしまった。

 それではと、土魔法で、穴を開けて砂の中に引き摺り込んだ。


 蛇達は視界から地下に消える。

「トルサン、そんなくらいじゃ奴らは死なんよ。奴らが行方不明になるぞ」


 逆に姿を消されて地中を進まれる方が面倒だと、サーミヤに言われて仕方なく、地上に押し出した。彼女の言った通り、蛇達は平然と変わらず、余裕が見てとれた。


 だが、魔法剣士達の逃亡の手助けはできたようで、慌てて、壁の隙間に、逃げて走り込んできた。


「助かった」

 彼らの声が聞こえてきた。

 今回の魔法は、ばれていない筈だが、シフリーの目は、俺とサーミヤを睨んでいた。


「じゃあ、わしが吹き飛ばすか?」

「かなり重いと思うが、いけるのか?」

「当たり前じゃ、と言いたいが、自信は……」


どっちなんだ?

 俺が小馬鹿にした仕草をしたのに気づいたらしく、サーミヤが俺の頭を軽く叩いた。


「非効率なだけじゃ。あいつらは高いところから落としても傷ひとつつかんし、遠くに飛ばしても、すぐに戻ってくる」


「そうだな」

「他にもではあるが、その時ではないしな。……まあ、お主も、隠しておるだろうし」


そんな会話をしていたところで、蛇たちが壁の前に到達していた。予想を超える到達時間の早さだ。


大蛇退治の開始だ。

三匹の蛇の正面の壁には、それぞれファーリスとチェン、そして俺が立つ。


壁の隙間を、大楯を構えた看守の防衛部隊が最終ラインとして固める。

各兵団の兵士たちが、次々に戦場へと姿を現す。


「まるで、闘技場への入場みたいだな」

「健闘を祈る!」

敵兵の主力部隊は、砂漠蛇との戦いに巻き込まれまいと、距離を取った場所に布陣したまま、動かない。


「さて行くぞ! サーミヤ達は下がっていろ!」

俺は岩壁の縁に立ち、全身の筋肉を爆発させるように跳躍した。


両手で構えた、巨人族の古き剣を振りかぶる。

アジ=サハラの頭部が、目前に迫る。


「――はああッ!」

ドン――ッ!

風が唸り、剣が閃いた。


ズガァァンッ!

鋼のような鱗を裂き、剣は蛇の頭蓋にめり込んだ。


ゴギャリッ……!

砕けた骨の音が、腹に響いた。

砂漠蛇の巨体が、ドシャアッ!と崩れ落ちる。


地に重たい衝撃が走り、砂が舞い上がる。

「やったか?」


――一瞬の静寂。

「……動かない」

「仕留めたのか?」

誰かが呟いた。


そのときだった。

縦に三つ、二列に並んだ閉じられた小さな目が、パチリと音を立てて見開かれた。

その瞳は、憎悪と怒りに染まっていた。

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