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竜契の巨人 血を啜れ約束を果たせ 闘技場の王  作者: 織部


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将軍気取りの夜

闘技場地下 俺の部屋


次の日、敵の陣営に動きはなかった。あくまで表面上は、だが。

カインの仕入れた情報で、裏の動きを教えてもらう。


「……あれは、自然災害とは言い切れない。お前たちも、和解の道を考えたほうがいい」


魔術師団の団長はそう言い残すと、生き埋めになって死んだ者たちの遺体を引き取り、多額の違約金を払って引き上げたらしい。

生き埋めになった者たちの数は、全体から見ればそれほど多くはない。それでも、「死にかけた」という事実は、彼らの士気を大きく下げていた。


「それでも、奴らは撤退しないのか?」

「ああ。古井戸家の新当主が、強硬に主張してるみたいだな」

「……まあ、その方がやりやすいが――」


言いかけて、俺は寝床に視線を向ける。


「ところで、サーミヤ。聞いてないぞ!」


寝たふりをしていたサーミヤが、目だけこちらに向けてにやりと笑った。


「何のことかなぁ。騙される方が悪い……いや、騙してさえない。聞かれんから、答えんだけのこと」


「サーミヤ様から会いたいとのことですが?」

カインが機嫌悪く眉をひそめる。


「魔力が足りんで動けんわ。ほら、トルサン、約束じゃ。早よぅ、隣に座れ!」


俺の部屋には、カイン、サーミヤ、そしてもちろんライラもいる。テントより二回りも狭い小部屋だ。カインもサーミヤも自分の部屋があるのに、帰ろうとしない。


「わかったよ」


サーミヤはニヤリと笑うと、唐突に俺の首筋に顔を寄せ――


「うわ、ちょっ……!」


がぶりと、俺の首に噛みつき血を啜る。幻覚の魔法で周囲には気づかれないつもりらしいが、じっと見ていたら怪しい動きくらいは分かるだろう。


「何してるんですか?」


近づいてきたライラに、サーミヤが反射的に風魔法を放った。


どすん、と跳ね飛ばされたライラは壁にぶつかる。


「あ、すまん、やりすぎた! トルサンが治癒魔法をかけるから、待っておれ!」


ライラは瞬間的に受け身を取り、怪我はなさそうだ。それにしても、俺より遥かに早い。


ぽかっ。


呑気に吸血を続けるサーミヤの頭を叩いた。


「痛い、痛い!」


瞬時に幻覚を解き、走って逃げ出す。さすがに速い。そして、カインの背後に隠れる。


「そんなに元気なら、シャーヒナ様に会いに行けますよね?」

カインが冷たく言い放つ。


「明日は、正々堂々の撃ち合いだ。楽しみだな!」


俺がそう宣言すると、ライラがいつの間にか俺の膝に腰掛けていた。俺の顔を覗き込むようにして、小さく微笑む。


「ヒールをお願いします」


……どいつもこいつも甘えてきて、困る。


「食事をお待ちしました」

アミンが給仕台に、早い夕飯を持って来た。



次の日、敵の動きはなかった。武器の補充や部隊の再編を行なっていた。それと、捕虜の解放交渉にやってきた。


「はした金などいらん!」

シャーヒナは、にべもなく断った。捕虜を捕まえておくことは経費がかかるが、それ以上に有益なのだ。


そして、その日の夜。暗殺剣士、牙狼剣士、魔法剣士率いる三部隊による夜襲が行われた。


「俺も、夜目は効くぞ、連れていけ!」

「はぁ、俺たちの出番だ。じゃあ、しっかり俺たちの活躍を見ておけ!」

ウルフやフウマが、俺の肩をぱんと叩くと、出陣して行った。


「サーミヤ様に、私たちの魔術を見てもらうように伝えて」

シフリーも慌てて出撃の準備をしている。


不意を突かれた――いや、こんな時に不意を突かれる方がおかしいのだが――古井戸・子狐家連合軍は大混乱に陥った。


いくら隠密行動が得意な部隊でも、不用意に近づくことはできないはずだ。夜間警備や巡回は何してるんだ?


魔術灯や篝火を、魔術師部隊が消して周囲を暗くし、他の二部隊が攻撃を仕掛ける。


特に、古井戸家は戦慣れしていなさすぎだ。


「誰だぁ? 獣人の分際で!」

「敵襲だ。助けて、囲むなんて」

「卑怯だぞ! 一対一で勝負しろ」


俺は溜息をつく。何やってんだ、戦争だぞ。殺し合いだ。お行儀良くやるわけがない。一応、ルールを守る剣闘士の俺たちでもわかる。


ひと暴れして満足したのか、三部隊は悠々と引き上げて来た。こちらの死者は無し。数人の怪我人だけ。相手は最低でも百人以上の死者と、数百人の怪我人を出しているだろう。


「これは、明日の朝まで敵の攻撃は無いな」

前衛のファーリスが俺に寄って来て、残念そうに呟いた。


「わからんぞ」


「チェン老師など、引き上げて飲み会を始めたいらしい。交代での警備で良いか?」

「俺の部隊が朝まで見てるよ。朝になにか異変があったら伝令を飛ばす。ワッド、看守部隊も休ませてくれ! チェン老師には、この岩壁で宴会しろと伝えて!」


カインがにこにこしながら、俺を見ている。


「どうした? カイン」

「まるで、トルサンが将軍のようだ。敵の被害状況は現在集計させてあるから、お待ちください、将軍様」

お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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