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竜契の巨人 血を啜れ約束を果たせ 闘技場の王  作者: 織部


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歪な軍団

各軍団の副団長が決まると、一旦休憩となった。

 次は、副団長も交えて小隊長の選抜に移るからだ。


「じゃあ、ワッド委員――いや、副団長を探しに行こう!」

「ごめん、トルサン。勝手に決めてしまって」

 カインはそう言って、素直に頭を下げた。


「いいよ。カインが俺のために、いろいろ考えてくれたんだろ?」

「まあな……」

 罰が悪そうに視線を逸らすカインを見て、俺は小さく息を吐いた。


 気を遣われるのは嫌いじゃない。だが、期待されるのは面倒だ。


「ああ、シャーヒナ様からは聞いている。構わんよ。サーミヤ様も一緒だそうだな。お前のことを、ことさら気にかけておられる」

 ワッドは答えた。


「……何ですって? どういうこと、トルサン?」

 カインが驚いたように振り返る。


「さあな」

 俺は視線を逸らして誤魔化した。

 説明するのは、後でいい。その後、俺のテントで遅い昼食をとった。


 食事を終えると、会議室に向かい円卓についた。

 八人の上級剣闘士。その後ろに中級剣闘士が二人ずつ並ぶ。


 戦闘スタイル、種族、性別――似た者同士を揃えているせいか、各軍ごとに雰囲気がはっきり分かれていた。


「式典の時くらいしか、こうして揃わんからな。壮観だ」

 斧剣士のガサムが、豪快に笑う。

「カイン、シャーヒナ様から何かご指示は?」

 ファーリスの問いに、カインが立ち上がった。


「はい。この会議の後、各隊で顔合わせを行うようにとのことです。それと夕刻には、軍団長全員参加の御前会議が開かれます」


「武器については、副団長が代表で武器庫へ行こう。分配で揉めるし、大人数で行っても管理ができん」


 ワッドの提案に、全員が頷いた。

「それなら、小隊長も選択指名でいいな?」

「ああ」

 異論は出なかった。

「俺は、残りものでいい」


 そう言った瞬間、円卓の空気がわずかに沈んだ。

 本音を言えば、期待されるのが一番厄介なのだ。

 カインやワッドが反対するかと思ったが、何も言わない。


 それが逆に、少しだけ胸に引っかかった。

 カインが黒板に名前を書き、ワッドが書類をまとめていく。


 他の軍団は、軍団長と副団長が熱心に話し合っている。

 それに比べて、俺の軍団は――どこか歪だ。


「次は剣闘士見習いです。各軍八名。本日中に配属を決めてください」

 結局、見習いも新人兵も、すべて選択指名となった。

「あいつは、うちには合わない」

「性格に難がある。いらん」

「あの男は是非とも欲しい」

 熱のこもった議論が続く。


 だが、俺には見習いの顔と名前など、ほとんど分からない。

 副団長二人は雑用で手一杯だ。


「俺の軍は、残り者でいい」

 それだけ言い残し、席を立った。

「トルサン?」

 心配そうにカインが追ってくる。


「問題ない。用事を思い出しただけだ。会議は続けろ。後でな」

 本当に用事がある。


 連日だが、サーミヤに話を聞きに行かなければならない。

 ライラに菓子を用意させた。

「こんな時に何を悠長な」と、嫌味を言われたらしい。


 まずアミンを連れて武器庫へ向かう。

 入口には看守が立っていた。

「管理人はいるか?」

「ああ……」

 疲れ切った様子で現れる。武器の準備で手一杯らしい。


「カビース戦で使った武器と防具を。買い取る」

「何だと? いくらすると思ってる。貸し出しにしろ!」


 だが管理人は記録も見ずに、俺の武器を出してきた。

 久しぶりに触れる巨人族の剣。


 やはり、真剣勝負にはこれだ。

「俺名義でつけてくれ。足りなきゃ、ワッドの保証もつける」

「相手は委員だぞ……」

「俺の副団長だ。問題ない」


 渋々ながら、武器は渡された。

 今まで使っていた装備は予備として持ち帰る。

 ギガンドブレードを手にし、自然と口元が緩む。


 昨日に続き、塔を登る。

「今日もか……」

 看守は呆れた顔で扉を指差した。

「トルサンなら構わん。さっさと行け」


 武器を預け、菓子袋を見せると扉が開く。

「話は聞いたか?」

「ああ。本気なのか?」

 菓子を渡すと、サーミヤは嬉しそうに中身を確認した。


「当然だ。わしの力を見たいのだろう?」

「その時に教えてくれ。部隊もそろそろ決まる。顔合わせに来ないか?」

 サーミヤは菓子に伸ばした手を止め、頷いた。


「面白そうだ。おんぶしていけ」

「その姿でか?」

「迷彩しておる。見える者は限られておる」

 見える者からすれば驚くだろう。


 だが、これほどの存在なら――心強い味方か、最悪の敵だ。

 塔を降りると、ライラが待っていた。

「ワッド様がお探しです。それと……トルサン様、変な匂いがします!」


「菓子の匂いじゃないか?」

「いえ、もっと妖しい匂いです!」

 首を捻りながら一周見回し、諦めたように前を歩き出す。


 河原では、いくつもの部隊が集会を開いていた。それぞれに個性があり、見ていて飽きない。


 ――だが。

 一角に、明らかに浮いている集団がいた。

 笑っているのに、目が笑っていない。


(……面倒だな)

「やっぱ、俺一人で戦おう」

 踵を返した瞬間、腕を掴まれた。

「どこへ行く。こっちだ」

 ワッドだ。


「用か?」

「顔合わせだ」

 カインが睨んでいる。逃げ場はない。

「トルサン、挨拶を!」


 仕方なく、俺は部下に向き直った。

 ――その瞬間。

「……こいつが軍団長かよ」


 どこかで、確かにそんな呟きが聞こえた。

お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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