彼女は映画の約束をする
俺が家に着くくらいを見計らって、葉月は連絡をくれた。
見ていたかのようなどんぴしゃで俺は驚く。
『着いた?』
「着いたぞ」
『良かった。じゃあ、私お風呂行ってくるね』
そんなことを言われると、お風呂に入っている所を想像してしまう。
絶対に確信犯だ。
俺は想像しないようにして、自分も風呂に向かう。
風呂に向かう時にリビングを通らないといけないので、母親が声を上げる。
「隆臣!ちゃんと送ってきてあげたの?」
「勿論」
「女の子なんでしょ?」
「うるさい」
「え!何!?女の子なの!?」
「うわ、姉貴」
俺は声を上げる。
「何よ、その反応。え、何、彼女出来たの?」
姉がソファから振り返って俺に聞いてくる。
「あー、お帰り」
俺はそう言うことで、話題を逸らす。
「はいはい、ただいま。で、彼女なの?」
姉はしつこく尋ねる。
「違う」
「でも、家まで送ってきたわけ?」
「女子だからな。夜道は危ないだろ」
俺は答える。
「そりゃそうだけど、好きでもない女の子の家まで送らないでしょ?」
「女子相手ならするだろ」
俺は誤魔化す。
「違うのよ、お姉ちゃん。わざわざバイト先に本を届けに行ってきたのよ」
母親が口を挟む。
余計なことを。
「えー!何、やっぱり好きなんじゃん」
姉は前のめりになる。
「うるさい」
俺は言う。
「えー!めっちゃ会いたいんだけどー」
「さくらcafeで働いてるらしいわよ」
姉の言葉に母親が反応した。
また、余計なことを。
「お母さん、今度一緒に行こうよ」
姉は母親を誘う。
「いいわね。行きましょ。その子の名前は?」
母親はさらりと俺に聞いてくる。
「言うわけないだろ」
俺は答える。
「分かった。勝手に行ってくるわ。ね、お母さん」
姉はにやりと笑いながら母親に言う。
「そうね。で、可愛いの?」
「………可愛い」
俺は答える。
「あらあらあらあら」
姉はニヤニヤと俺を見る。
「家には連れて来ないの?」
「来たいとは言ってる」
「あら、じゃあ付き合ってるの?」
母親は言う。
「付き合ってない」
「……何なのその関係」
母親は眉間に皺を寄せる。
「付き合う前の状態じゃない?」
姉は言う。
「家に来たいなら、あんたのこと好きでしょ。嫌いな奴の家になんか普通行きたいなんて言わないからね」
姉は推測する。
「………そう思う?」
俺は少し不安げに姉に問うた。
「情報が少ないからハッキリとは言えないけど、そんな感じするけどね」
姉は答える。
「恋愛相談なら乗るわよ。女子の気持ちは分かるしね」
「ふぅん。まあ、考えとく。とりあえず、風呂行ってくる」
俺はそう答え、風呂に向かった。
♢
葉月と連絡先を交換してから、長いやり取りをしたことはなかった。
いつも最低限の会話。
だが、今日は違った。
『起きてるー?』と、メールが届く。
「起きてるぞ」
『何してるの?』
「今からTV見る」
『何見るのー?』
「映画の地上波。10チャン」
俺は連絡を返す。
魔法学校が舞台の映画。闇の帝王を倒すために奮闘し、成長していく主人公達。俺達世代は絶対知っていると言っても過言ではない洋画。原作小説も10人に2、3人は持っているだろう。
『そういえば、その映画の続き、今年するでしょ?』
「らしいな」と文を打ったあと、送信せずに少し考える。
「一緒に見に行くか?」と付け足して送信した。
『行くっ!!!』
その返事が葉月のいつもの嬉しい顔を思い出させる。
「じゃあ、公開されたら行くか」
俺はそう送る。
『うん。やった!』
葉月の嬉しそうな顔が思い浮かぶ。
「あんた、何ニヤニヤしてんのよ」
リビングでテレビを見ているので、俺は姉に突っ込まれる。
「してねぇよ」
「してるし。何、彼女?」
姉は俺のスマホを覗こうとしてくる。
「見るな。それに彼女じゃない」
「彼女でしょ。今やり取りしてるんでしょ?何の話してるのよ」
姉はしつこい。
「しつこい女は嫌われるぞ」
「大事な弟の彼女だから、気になるに決まってるでしょ」
「何が大事な弟だ」
俺は突っ込む。
「で、何の話をしてるのよ」
「この映画の話だ」
俺は顎でテレビをしゃくる。
「あー、これ?続きが公開されるから、それに伴っての放送でしょ?」
姉は言う。そして、何か分かったのか声を上げた。
「あ、見に行くわけ?2人で?」
「………」
俺は黙り込む。勘がいい。
「悪いかよ」
「お母さーん!」
姉はキッチンにいる母親に声をかける。
「なぁにー?」
「この映画の新作、彼女と見に行くらしいよ」
「えっ!嘘ぉー。いいじゃないの」
母親がキッチンから声を上げた。
「まだ彼女じゃないって言ったろ」
俺は突っ込む。
「あ、まだって言ったわね」
姉がにやりとする。
「っ。言ってない」
俺は答える。
「まあいいわ。どんな子なのよ」
姉は問う。
「どんな子でもいいだろ」
「一応聞いてるだけよ。あんたがヲタクなこと知ってるの?」
「知ってる。むしろ、あっちのがヲタクかもしれない」
「え、そんな子いるの。何、超陰キャ?」
「差別発言だな。それでよく先生が務まるな」
俺は呆れながら言う。
「悪かったわね。会うのが楽しみになってきたわ。早く連れて来てよ」
「姉貴がいないときにする」
「ええー。嫌よ。見たいし。写真無いの?」
「それは無いな」
俺は即答する。
「とりあえず、黙っててくれ」
俺はそう言って、携帯を見る。通知がいくつか来ていた。
「もう部屋に上がる」
俺は立ち上がる。
本当に姉は面倒くさい。
「あら、そーう?何か聞きたいことはなくて?」
「何もねえよ」
俺は吐き捨て、自室へと戻る。
道中、返信遅くなって悪いな、というのを送信し、やり取りを再開する。
『映画見てるの?』
リビングで見てたが、姉貴のせいで見れなくなった旨を話す。
『また家に行かせてね。お姉さんとも会いたいし』
奇特だな、と俺は思ってしまう。
「姉貴は面倒くさいぞ」
『それでも隆臣のお姉さんでしょ?会いたいな』と返ってきた。
本当に勘違いしてもいいのだろうか。
俺を好いてくれているんだろうことは何となく感じるのだが、確信が持てない。
「受験前になったら、勉強教えてくれ」
俺は送信する。
『どこ受験するの?』
「まだ決めてないけど、学部は決めた。だから、それがあるとこ」
『何学部?』
「内緒」
『えー!何でー!』
「その内分かる。だから、受験前俺の家に来て、勉強教えてくれ」
『いいよー。でも、何処の大学か決まったら教えてね。それに合わせたレベルまで持って行かないといけないから』
「了解」
『将来の夢があるの?』
「………」
その問いに俺の指が止まる。
「葉月は?」
俺は聞いてみる。
『んー。今はない。それで、隆臣は?』
「分からん」
『分かった。じゃあ、今したいことは?』
「葉月はしたいことあるのか?」
俺は聞き返す。卑怯であるが。
『私はねー、隆臣とお出かけかなー』
「勘違いされるぞ」
『別にいいって言ったじゃん』
葉月から即レスが来る。
これはやっぱりそういうことだと思っていいのだろうか。
『隆臣は嫌?』
「んなわけないだろ。一緒に過ごしたいに決まってる」
『本当?なら嬉しい』
その返事を送ってくる葉月の表情が想像出来た。
嬉しい時、本当に素直に表情に出るので、それが可愛いのだ。
出来れば、あの顔は俺の前でだけ見せて欲しいと思っている自分がいた。
ハリポタはご存知ですか⁇
ドンピシャ世代です。原作は持ってます。多分、周りの人も殆どが持ってました。笑
最後の最後は1人映画してました(*´-`)
皆さんはどのキャラが好きですか⁇
私はセブルスです(´∀`*)




