平和ボケと違和感の正体
王都は平和を取り戻した——はずだった。通りには笑い声が戻り、屋台の香りが風に乗る。だがハルキだけは、どこか居心地の悪さを覚えていた。
(静かすぎる)
普通なら“平和”と呼ぶ状態だが、彼にとっては“ノイズが足りない”。この男は、情報が多すぎても少なすぎても違和感を覚える。つまり常に不満である。
「この串うまいな」
「今それか」クレアが呆れる。
「いや、味の層がな——」
「分析するな、食え」
ダルムは笑いながら三本追加で買ってきた。
「ほれ」
「増やすな」
そのとき、ハルキの手が止まった。
(来た)
目には見えない。だが、空気の密度が一瞬だけ変わる。極めて微細な“抜け”。
「今、変なのあった」
「どこだ」
「説明できない」
最悪の報告だが、精度は高い。
「じゃあ探す」クレアが即断する。
「理由は?」
「お前が言うからだ」
夜、三人は静かな路地に立つ。影が伸び、風が止む。
「出たな」
黒い揺らぎが、壁から“剥がれる”ように現れた。
ハルキは小さく頷く。
(本体じゃない。これは端末)
彼の中では既に結論が出ている。問題は——
「じゃあ本体行こう」
結論が早すぎることだ。
「説明しろ!」クレアが叫ぶ。
「端末だから壊しても増える。元を止める」
「最初からそれを言え!」
ダルムが肩を回す。
「ほれ、前座じゃ」
戦闘は短い。ハルキはほとんど見ていない。
(本体、地下だな)
視線はすでに“次”に向いていた。




