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紅葉の想い(紅葉目線)

紬が大声を出して駆け出して行ってしまう。もちろん俺、兄貴、楓は紬を追いかけようとしたが、話してた女達に引き止められた。


「あんな子ほっといてうちらと遊ぼうよ〜」


「そうそう、知らないと思うけどあの子昔、愛歌の彼氏奪ったんだよー?」


紬が……?いや、紬がそんなことするやつじゃない。まだ知り合って間もないけど、少なくともただのクラスメイトよりは知ってる自覚があるし、友達でもないこいつらよりも知ってる自覚はある。


「なんていうかその後自業自得なことも起きたけどね、本当愛歌の彼氏を(たぶら)かすから悪いっていうか」


「分かる〜」


こいつら……イライラする……紬のこと何も知らねぇくせに勝手なことばかり言いやがって……、兄貴も楓もこいつらにいい印象なんて0.1ミリも抱いていないだろ。99.9……いや、100%断言できる。


「きっと今でも高校でたくさんの男誑かしてる悪女だろうしねー」


「ね?だからうちらと……」


その言葉を聴いて俺も、兄貴も、楓もキレた。掴まれた腕を振り払い、そいつらに鋭い睨みをそいつらに向けた。


「さっきから好き勝手言ってくれてるけどお前たちが紬ちゃんの何を知ってんの?」


いつも温厚で、比較的優しい言い方をする兄貴が『お前ら』なんて言う言葉を使うときは本気で怒ってるときだ。


「知り合ってから期間は短いかもしれないけど、俺らは少なくともお前らよりあいつのことを知ってるつもりだ」


「紬ちゃんは絶対そんなことする子じゃない、俺らはそんな話信じない」


楓も本気で怒ってる。楓は怒ると箇条書きのような喋り方になる。少なくとも紬が人の彼氏を奪ったり、男を誑かすような悪女なんて、まったく勘違いも(はなは)だしい。俺たちはそう言い残すとそいつらを放置して紬を探すことにした。


「あの様子なら多分、人目のつかない場所に行くはずだ!まずは屋台の裏を重点的に探そう!」


兄貴の言葉に俺たちは頷き、言われた通り屋台の裏をまずは重点的に調べた。だけど紬はいなかった。


「あと、人目の少ない場所って言ったら……神社の方?」


楓の言葉を聴いて俺たちは神社の方向に走り出す。神社の階段を見て、俺たちは少し驚いた。


「こんな長い階段、下駄で上がったってこと?」


「足とか大丈夫なのかな……?」


「とりあえず行ってみるしかねぇだろ」


俺のその言葉に頷いて俺たちは階段を上がる。もしかしたら途中で座り込んでたり、茂みにいないかを確認しつつ進んで行く。あいつと知り合ってから俺は何かおかしい。普通の人にここまで必死になって探したりしないし、探してる途中何度も危険な目に遭ってないか心配になった。こんだけ心配したこと、小さい頃兄貴や楓が迷子になったとき以来だ。赤の他人にここまで心配になるなんて、俺にはまったく想像できなかった。紬……無事でいてほしい。危険な目に遭ってないか、今も心配でたまらない。階段を上がってるとだんだん息も上がってくる。あいつここにいたとしたら、慣れない下駄でどんな体力してんだよ……。


「みんな大丈夫か?」


「あぁ、こんくらいでへばってられるかよ」


「あともうちょっと頑張ろう」


3人でそう言いながらも階段をひとつひとつ上がっていく。そして階段の終わりが見える頃、金魚の浴衣姿の女子が座って顔を俯かせていた。それは俺たちがずっと探していた女子だ。あの浴衣の柄も、髪も背丈も俺たちがあいつを見間違えるはずがない。俺たちが声をかけると、紬はゆっくり顔を上げて俺たちを見る。

その瞳は涙を流したのか少し潤んでいる。こいつ、そんなに辛かったのか……。泣くまで辛かったのによくあそこまで耐えたな……。そんなこいつが、紬がたまらなく健気で愛しく思えた。あぁ、そっか……。なんでこいつのためにここまで必死になって探すのか。

こんなに心配して、不安になって、無事でいてほしい、危険な目にあってほしくない。そんな想いをしてたのか。ようやく俺は、自分の気持ちに気づいた。

ったく、自分の気持ちにこんな状況になってから気づくとか……俺、鈍すぎんだろ。気づくタイミングなんて今まで山ほどあっただろ。なんで今なんだろうな……。今はそんなこと思っていたって仕方ないし、何より今優先するのは俺の気持ちどうこうより、紬のことなのに。


「ごめんなさいっ……私っ……」


「大丈夫……落ち着いて」


「もう泣かないで」


「謝んなくていい」


こんなこと思うのは恥ずかしいけど、どんな顔も魅力的だと、可愛いって思う。でも笑っていてほしい、泣き顔は見たくない。これからも側にいたいとも。そんな恥ずかしいこと思ったのは本当に、紬にだけだ。気づいたら、いつだって紬のこと想ってたのにな。素直じゃなくたって、愛想が悪くたって、紬を守りたい。戸惑ってばっかりだった……。これが恋じゃないならなんだって言うんだよ……。気づいてなくても兄貴も楓もきっと紬が好きだ。でも、悪いな。紬を誰にも渡したくない。そう思ってしまったんだ。俺は……。五月雨紅葉は……。

五十嵐紬のことが好きだ。

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