表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

三つ子と聴かれたくない話

ついその声に私の手は下がってしまった。この3人には聞かれたくないし知られたくないのに体が動かない……。


「へぇ〜かっこいい男の子3人も連れちゃって相変わらずなんだねー?」


秋くんと紅葉くんと楓くんは、焼きそばとたこ焼きを食べるためにお面をずらしていたから顔が見える状態。それはこの人達から見たらかっこいい男の子3人を私が(はべ)らしたと見えるんだろう。目をフイッとそらすとその子の後ろにいた女の子とバチッと目が合うと、その女の子の方が目をそらし、その子の近くにいる子たちが「愛歌(まなか)大丈夫?」「気にすることないよ」と慰められている。慰めされたいのはこっちだよ……。


「え?何?3人の誰か狙ってんの?それとも3人とも狙ってる感じ?」


違う……そんなんじゃない。そう言いたいのに声が出ない。怖い。そう思いぎゅっと拳を握ると秋くんが私に優しく声をかける。


「大丈夫?紬ちゃん」


「その子に優しくしない方がいいよ?騙されてるだけだよ?」


「男の子ってちょっと女の子が弱くすれば、すぐ気にするもんね」


「ち、違う……」


私がやっと絞り出した言葉はその言葉だった。私のことは仕方ない。でも、3人のことは悪く言われたくない。


「3人はそんなでも、侍らせてるわけでもない……」


こんなこと言っても、信じてもらえないことを分かってるけど……そう言わずにはいられなかった。


「侍らせてないって、あんなことしておいてよく言えるよね~」


「愛歌がどれだけ傷ついたか、考えもしないんだね」


それだってただの逆恨みじゃない……。私はもう何も感じないはずの右胸付近に痛みが走った気がして、ぎゅっとそこを掴んだ。私はなんにも悪くないはずなのに、なんでこの人達に、そんな簡単なこと1つも言えないの……?もう去ったことなのに……なんでこんな怯えてるの……?自分が臆病すぎて嫌になる。


「紬ちゃん?」


「紬?」


「紬ちゃん?」


3人が気遣って声をかけてくれるけど、私は俯いたまま、何も言えずにいた。


「3人とも知らないんですよね?この子昔、こっちの子の……」


「やめてっ!!」


そんなことその3人に聴かせないでっ!!私は大きな声を出してしまった。そのことに気がついてハッとして口を押さえた。


「あ、やっぱ知られたくないんだ〜?だよね、そんなこと聴かれたら幻滅されるもんね?」


3人が何も言わないのは何の話か分からないからで、この人達の話を真面目に聴いているわけでも、気を遣ってるわけではないことは、分かってる……。だからこそ、聴かれたくないし、知られたくないんだ。


「知ってる?あのあと愛歌さ、しばらく引きずってたんだよ?」


そんなの私が知るわけないじゃない。私はあの子と友達でも何でもなかったんだから、あの子がに何があったかなんて、知るわけない。そもそもその子が引きずってたのなんて、彼氏にフられたことでしょ?私のことなんて1ミリも頭になかったんだろうね。その子のせいで私は体にも心にも、消えない傷を負ったのに。


「もう……やめてよ……」


これ以上、そんな話をこの3人に聴かせないで……。


「なんでなんで?五十嵐さんなら学校で男の子引っ掛けてるんじゃないの?中学の時みたいにさ」


「もう言わないでよっ!!」


再び私は大声を出すと、その場にいられなくていたくなくて、3人を置いて駆け出した。浴衣で下駄で、走りにくかったけど、それでもゆっくり歩く気にはなれなかった。早くその場から離れたかったし、話もあの人たちの顔も見たくなかったし、何より3人の顔を見れなかった。私があの場から去ったらきっと間違った情報で、あの話が伝わってしまう。それを真に受けたら、幻滅や軽蔑……されたりするのに決まってる。

それでも一刻も早くあの場所から離れたかった。

私は走って神社の方に着くと5円玉を取り出し、神様に文句を言ってしまった。


「神様、あなたは意地悪ですね……何も今日、こんな日にあの3人といる時にあの人達と引き会わせること、ないでしょう……?」


私は振り向いて見るとお祭り会場より大分離れていた。知らない間に階段まで上がってこの神社に来ていたのか……。それに気づくと急に疲れが出てきて、私は階段のところに座ってしまう。あの3人、真に受けたらきっと、探しに来てくれたりなんて……しないよね。あの人達から見た私はまさに悪女。物語ではそう言われる、嫌われ者の役。それでも私の話を信じてくれたのは未亜と文月と家族だけだった。学校側は生徒の喧嘩の末に起きた不慮の事故として片付けた。

確かに事故かもしれないけど、原因は私じゃないのに……。いや、見方によったら私……なのかな?でも私はそんなつもり1ミリもなかったのに……。


「もう、頭ん中……ぐちゃぐちゃだよ……」


そう言って顔を伏せると、涙が溢れてきた。そのとき聴こえた。


「見つけた!紬ちゃん!」


「浴衣と下駄でよくここまでこれたな、紬」


「紬ちゃん、大丈夫?」


そう、その声は最近よく聴くあの3人の声。


「秋くん、紅葉くん、楓くん……」


3人は肩で息をしている。もしかして私のこと、走ってまで探しに来てくれたの……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ