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どうやら俺が乙女ゲームのヒロインらしい  作者: 柚みつ
本編

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調べて見つけたのは

 入ってきた扉から見えるのはリビング、とキッチンも兼用だろうな。玄関から入ると腰の高さほどのカウンターで仕切られている先にキッチンが見えるが、それ以外には仕切るものはない。コンロは一つで、調理器具はなさそうだ。引き出しなんかも全部開けて確かめてみたけど、がらんとしていた。

 カウンターの先には二人で使ったらいっぱいの小さなテーブルがあり、椅子は二脚。それと仮眠用なのか簡素な作りのベッドがソファー代わりに置いてある。


「どこもしばらく使ってなさそうだね」

「だな。埃がすごい」


 ちょっと歩いて動くたびに埃が舞うので、目についた窓を全部開けながら進む。少しだけ魔法を使って上手く埃が外に出るように流れをつけてようやく思い切り息が吸えた。


「暖炉もあるけど、使った様子もなさそうね」

「だな。煙突にすすが残ってもないから、相当長い間火を入れてないだろうな」


 煙突の中を覗き込んだハルは、そっと指を煙突の中に滑らせていた。使っていたならそれだけで指が黒くなるそうだが、出して見せてくれた指は白いまま。リビングも整えてあったから、毎年掃除をするマメな持ち主って事も考えられなくはないが、それでもこれは綺麗すぎるらしい。

 そして、まだ見ていないリビングの奥から続く短い廊下の先は洗面所。トイレと、シャワーだけの簡素な作り。


「あら、この小屋にはシャワーがあるのね」

「本当だ、町にもまだ半分くらいしかねえよな」


 ひょっこりと顔を出した二人は、興味深そうにシャワーをいじっている。それでもハルは何かを探るように手を出しているから、あまり慣れていないのかもしれない。


「セリの方が使い方分かるんだね」

「これでも領主の娘ですから。一応、家には浴室あるし慣れてるわよ?」

「領主様、定期的に俺らなんかにも浴室貸し出してくれるんだ」


 だから俺の家にはシャワーない、と言うハルはちょっとだけ真剣な声色でこのシャワー使えるかなと呟いている。けれど、自分からは手を出そうとしない辺り本気ではないのかもしれない。祖父の言いつけがまだしこりになっているのもあるんだろう。


「場合によっては持ち主調べて交渉してやるけど」


 ユリエスが、というのは言葉には出さずに本人を指さすことで示したが、ハルは緩く首を振った。


「ディオ、ユリエスすごくいい笑顔なのに圧が怖い」

「やっべ、先見るぞ」


 あれに言葉をつけるなら、面倒ごとを押し付けるつもりかい? だからな。


「っと、先はないのか」


 小屋、まあまあの高さがあったから二階建てになっているのかと思っていたんだけど上がれるようなものは何もない。


「え? そんなはず……」


 何かがある、と確信している声が背後から聞こえ振り返ってみれば案の定。おかしいな、と呟きながら視線をあちこちへと巡らせている。それを追うように上から下までぐるりと見てみたけど、何かがあるわけではない。上の方に注意しながらリビングに戻ってきても、これと言って気になる所はなかった。

 けれど、同行を申し出てきた彼女がそう言うのは、この小屋に何かがあるということで。


「ユリエス」

「ディオ?」


 俺の声のトーンで何かを感じ取ったらしいユリエス、振り返った顔は真剣だったが若干眉をしかめているから、後で小言くらいは覚悟しないとだな。


「帰り、なんかあったら任せる」

「……そういうことか。ハル、セリ。ちょっとこっちに来て」

「こっち? っていうか帰り任せるってどういうことだよ」

「後で説明するから」


 ハルはまだ納得していない様子だったが、渋々引き下がっていった。ユリエスが慣れたようにカウンター先の椅子に座っているので、二人もそれに倣うようにベッドに腰掛ける。

 それでも視線は俺から外れない。


「これ、疲れるからあんまやりたくないんだけど」


 ただの探知に引っかからないなら、もっと細かく深いところまで見ればいい。なんて言うのは簡単なんだけど、実際にやるとなると消費する魔力はもちろん、集中力も桁違い。魔力には自信があるが、集中を途切れさせないようにするのが俺は苦手。で、ユリエスは反対。

 だからこうやって調べないといけないときには範囲の広さでどっちがやるかを決める。この小屋全体なら、ユリエスだと魔力が足りなくなるから必然的に担当は俺になる。

 そもそも使える属性的にもユリエスがやる機会ってあまり多くはないんだけどな。


「ディオ、調べるなら入り口からの死角」

「分かってるよ。やるぞ」


 魔力を表面だけではなく奥にまで流して、何か引っかからないかを調べていく。確かに二階が存在しているのは読み取れたが、肝心な上がる手段が見当たらない。洗面所の上からリビングの端、そうしてキッチンまで行ったときに一つ、引っかかった。


「あった、が……これも隠蔽かけてあるな」


 探知を切って深く息を吐くと、途端に目の奥に鈍い痛みが走る。目頭を押さえて何度か揉むことでやり過ごし、引っかかった箇所に向かう。


「何もないように見えるけど」

「小屋が見えなかったのと同じだよ。まだいける?」

「さすがに、これを解いたら交代な」


 カウンターの端、玄関からは陰になっていて見えづらいところだが、目の前の壁は他のところと何ら変わらないように見える。

 ちょうどカウンターの高さと同じくらいのところに手をかざす。ユリエスに任せたとはいえ、この後の事を考えたらちょっとでも魔力は節約しておいた方がいいよな。


「仮初めの姿を纏いしもの、役目終えた衣は空に、真の姿を示せ!」


 詠唱したのにいつも以上の魔力を使って現れたのは、手のひらで隠れるような魔法陣。

 これで二階に転移するってわけか。それにしても、こんな手段取るのなんてどう考えても面倒くさいことにしかならなそうだ。



お読みいただきありがとうございます。


今回の探知は2Dを3Dにしているイメージです。

それにしても詠唱って考えるの楽しいけど難しいですね…

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