見つけた目的地
今年最後の更新です。
ちょっとだけ増量中!
そこから先は、サクサク進んだ。というのも、ある所を境に草木が刈られた跡があったりして、やけに歩きやすくなったからだ。
「この辺りは町の人でも滅多に来ない、はずなんだけど」
「その割にはだいぶ手が入ってるな」
さっきまでは腰の高さくらいまで茂った草をかき分けていたのに、それが足首くらいまでの高さにざっくり刈り揃えられている。地面も踏み均したようで適度な硬さがあり、足を取られることもない。大きな石なんかは踏み固めた先に置いてあり、簡単な道、と言われても納得するくらいのものが出来上がっていた。
その道を歩いていくと、見えてきたのは簡素な作りの小屋。外から見る限りだと窓は壊れていないし、扉もしっかりしまっている。屋根が抜けたりもしていないから今から使おうと思っても大掛かりな修繕は必要なさそうだ。
「これで、合ってるよな」
「地図上は間違いない」
外に置いてあった甕には水は残っていないし、耕してあった形跡の残る場所はおそらく畑としていたのだろうが、今は雑草が自由に伸びている。それなのに窓から中を覗くと見える範囲は荒れた様子もなく、ある程度整えてあるのは、最近まで人が使っていた可能性を思わせる。
「それにしても、ディオ。さすがね」
「ん? セリ、どういう意味だ?」
「ああ、えっとハルの速さについてこれるなんてねって」
「僕ら、体力が物を言う場合もあるからね」
やんわりと話題を逸らしたユリエスに、案の定ハルが食いついている。その間にうっかり発言をやらかしてくれたお嬢さんにそっと詰め寄った。
「で、本意は」
「この小屋、一定以上の魔力がないと見えないようになってるのよ」
「なるほど、隠蔽かけてるのか」
「だから、わたしだけじゃここは多分、何もないぽっかり開けた場所にしか見えなかったはずよ」
無茶だって知っていてあの場で一緒に行きたいと言い出した理由がこれで、きっと小屋にも何かあるんだろうということも分かった。
とりあえず、それだけ分かった事だしさっきの発言はそのまま流してやるか。小屋を見ながら何かを呟いて自分の世界に入り込んでしまっているのを、頭を軽く小突くことで引き戻す。
「ほら、さっさと行くぞ」
「あ、はい!」
何で急に敬語?
「本当に入っても大丈夫なのか?」
「大丈夫、何か言われたら僕が対処するから」
ハルは祖父からかなり厳しく言われていたらしく、俺たちが何の躊躇もなく小屋の扉に手をかけたのを慌てて引き留めた。このやり取りももう、三回ほど繰り返しているんだけど。
「おい、ハル。そろそろ手を付け始めないとこの小屋で一夜を明かすことになるぞ」
「あーもー分かったよ! なんか言われたら責任取ってもらうかんな!」
地図の気になったところをその都度確認して、昼休憩も取ってからここに来たから出発が早かったとはいえ日も傾いてきている。帰りは真っすぐに町に向かうとしても、不慣れな道は暗くなると時間もかかる。もちろんそんな事は案内をしている本人が誰よりも分かっているはずなんだが、それでも小屋に入るのには抵抗があったんだろう。
「それじゃ、お邪魔します」
「もう、ハル。誰もいないんだから」
「うるせ、何となく出ちまうんだよ」
照れ隠しなのか、俺たちと話すときにはまた違った感じに砕けた会話を交わしながら二人が小屋に入ってくる。光が入るように扉を開けておいてもらうが、そこまで効果がなく部屋の全体がぼんやりと分かる程度。
ユリエスも考えることは一緒だったようで、手のひらに乗る程度の大きさで何個かの光源を作り出す。それを放り投げて、部屋の隅々まで明るくなったのを確認すると、後ろから感嘆の声が上がった。
「二人とも、すごいわね」
「セリだって魔法学園で勉強してるんだろ?」
「わたしは詠唱も必要で、手のひらから離したら消えちゃうわよ……」
チラリとユリエスを見ると、二人には分からないように静かに頷いている。実習が始まったのは知っているが、どの程度進んでいるのかは分からないから、こういう時は頼るに限る。
そもそも、ハルは俺たちが魔法学園にいるとは知らないんだし。
「学園で勉強しているのなら、これくらい出来るようになるよ」
「ユリエスにそう言ってもらえると心強いわ」
「だから、どうしてそんな親しげなんだよ」
脱力しながら呟いたハルの問いかけに、そういえば伝えてなかったな、と思い出す。魔法省の人間と、魔法学園の生徒。同じ王都にいるとはいえ、接点はあまりない。
そういや森の入り口でも同じようなこと言ってたな。
「彼女とは、王都での任務で知り合ってね。何度か話をしたこともあるんだ」
「ここで会うとは思ってなかったけどな」
「それで、調べ物をするならって事で手を貸してもらっているんだ。僕たちだけじゃ気づけない事もあるだろうからね」
王都の任務が魔法学園の潜入なんだけど、詳細を告げてないだけで嘘は伝えてない。それでも何度か顔を合わせたことがある、というので気安い態度の理由も分かったようだ。
「あんまり役に立つとも思えないけど、二人がそういうなら」
「ちょっとハル、どういう事よそれ」
「そのまんまの意味だよ」
騒がしい、まではいかないが言葉の応酬を始めた二人は置いといて、小屋の全体を見渡すと同時に魔力の探知もしていくが、これといって引っかかるものはない。
警戒しすぎだったか、とユリエスと肩をすくめたところで言い合いを終えた二人も合流して小屋の中を細かく調べていくことになった。
たくさんお読みいただき、ありがとうございました。
来年も、どうぞよろしくお願いいたします。
良いお年を!




