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どうやら俺が乙女ゲームのヒロインらしい  作者: 柚みつ
本編

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森の探索開始

投稿予約、しているつもりでいたんだ…

 森の入口で待っていた人物は、俺たちの姿を確認すると軽く頭を下げた。そして、俺たちの隣を歩く女性の姿が誰だか理解すると同時に頭を抱えて隠すこともなく溜息を吐いた。


「領主様からは聞いていたけど、本当に来るとは思わなかったよなぁ」

「あら、聞いていたなら予想はしていたでしょ」

「これほどまでに外れて欲しいと思ったことはなかったわ」


 領主はこうなるだろうことも話してあったらしく、実際にその通りになった現状はさすが、というべきか。テンポよく進んでいく会話に、いつもの事なんだろうなと思わせるくらいの気安さがある。

 ある程度予想していたとはいえ、いきなり増えた同行者に言いたいこともあるだろう、としばらく言葉のラリーを見学していたら、途中で俺たちの方を見た案内人が慌てて頭を下げた。


「ご挨拶遅れまして申し訳ありません。本日、おふたりの案内を仰せつかったハルディーンと申します。

 町の者からはハルと呼ばれていますが好きなようにお呼びください」

「では同じように。それと、楽に話してください。僕たちもそうしますから」


 森に入る用の服装なのか、淡いクリーム色の長袖シャツは普通の生地よりも厚手のようで動かすたびに少しざらついた布が擦れる音がする。シャツのボタンをかっちり閉めているが、袖から覗く手首は白いのに線が細いわけではないし、どちらかといえばがっしりとした印象。薄い茶色の髪は陽の光を通すと透き通って見える。

 緊張していた様子だったが、ユリエスの言葉と笑顔で適度に空気が抜けたらしく、一度頭を下げてから見えた表情は人懐こそうな笑顔に変わっていた。


「大丈夫よ、二人とも言葉使いくらいじゃ気を悪くしないもの」

「俺はお前がどうしてそんな風に言えるのかを問い詰めたいわ……」


 がっくりと肩を落としたその姿が、ああいつも苦労してるんだろうなあと思わずにはいられないくらい様になっているっていうのは、言わないほうが賢明だろう。


「それじゃあ、早速だけど森に入る。渡した地図はあくまで目安だから、なにか気になることがあったら教えてくれ」



 そうして切り替えてからの案内は的確で、地図との違いがないかを丁寧に確認していく。

 森だって広いってわけじゃないけど、散歩でちょっと足を踏み入れようものなら簡単に迷ってしまう程度には木が茂っている。ちょっと前までは遊歩道とまではいかないが、簡単に道を整えていたのを、最近は止めたそうだ。魔獣被害の多さに罠を仕掛けたりしているから、町の人も今までみたいに気楽に森に入らないように、とのことらしい。

 地図に書いていないその情報を加えていったりするとあっという間に地図の空白がなくなっていった。


「とりあえず、半分は見て回ったけど何か気になるところは?」

「それがないっていうのが気になるところかな」

「それに魔獣が出てるにしては森が綺麗すぎる。あとはひとつ、確認したいところがあるけど」


 道を整えるのは止めているが、休憩できる場所がなくなるわけじゃない。仕事なんかで森に入る人用にスペースは確保しているようで、その中の一つで簡単に昼を摂りながらここまでの探索で気になったところを上げていく。

 俺もユリエスも魔力の探知を広げていたけど引っかかるところがない。むしろ、魔獣が出ているのに、魔力の流れが綺麗すぎるんだよな。


「この森の中に、魔道具が置いてあるような場所は?」

「奥に小屋があるから、あるとしたらそこなんだけど。だけどだいぶ使ってねえはずだからどうかなあ」


 このあとに案内する、と地図に書き込みをしながらハルが手に持っていたサンドイッチを口に放り込む。それを飲み込んだタイミングで差し出されたお茶を受け取ってお礼を言っている。もちろん、差し出したのは俺たちではない。それなりに大きなリュックを背負ってきて、女性だから荷物も多いんだろう、なんて思っていたんだけど大半が弁当含めた食料だったのには驚いた。

 昼時には一旦切り上げて町に戻ることを想定していたから、素直にありがたく受け取ったけど。


「使ってないはず、っていうのは」

「そのまんま。なんか昔、まだ村だったときに来た貴族が買い取ったらしくてさ。それから俺たちは使ってねえの」


 その後その貴族が村に来ることはなく、町となってしばらく経つがその小屋には近づくな、という話だけが受け継がれているそうだ。彼も祖父からこの小屋には行くな、と話を聞いているから場所だけは知っている、という状況らしい。


「貴族の関係ならユリエスの名前出せば、たいていは何とかなるだろ?」

「またディオはそうやって。もちろん、必要なら使うけど」

「じゃあ行くか、あんまりのんびりすると日が落ちるまでに帰れなくなるからな」


 さっと立ち上がったハルに続いて、森の奥へと向かう。

 確かにこの距離を帰るのはちょっと急がないといけないな。



お読みいただきありがとうございます。

読みやすい文字数、手探り中です

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