繋がり始めた点
どんなに生育状況が良くたって、これは明らかに異常だ。原因が分かっている分まだ対処の仕様はあるが、これならここで隠すように置いてあるのにも納得がいく。
「それで、ひとまずの結果なんだが」
師匠の手には、一握りのスイサイ。それをぐっと力を込めるように握りしめ、開いたその手に乗っていたのは赤い花。
「スイサイは魔力を込めながら育てると花の色が変わる。花はそのまま、使えたよ」
育ち切った花に魔力を込めても色が変わるのか、それとも師匠の魔力が桁違いだからかなのかは分からないけど、手にしているのは間違いなくさっきまでと同じスイサイ。
白い花を隣にして見比べてみても、色が違う以外の変化は見当たらない。
「でも師匠、今のは」
「そうだね、これは育ち切った花に魔力を与えただけだ。初めにディオの魔力で育てた花から出来た種だからか、ここにある物は魔力を吸収しやすいんだよ」
「さっきの使えたっていうのは、具体的に」
魔力を吸収しやすくて使える、となると思い当たる使い道は限られてくるんだけど、それでも確実にこれとは言い切れない。師匠が手に取ったのはただのランプ。魔力を込めた石を燃料として使うタイプのそれを持つって事は俺が想像した通りなんだろう。
予想を裏切ることなく、本来なら石を置く場所に花を入れる。すると、瞬く間に柔らかく明るい光が漏れだした。
「魔道具の燃料として。
他にも育てさせたけど、魔道具の燃料としてまで使えるほどの蓄えがあったのはディオが魔力を通したものだけだったけど」
これは結果を見せる程度にしか入れてない、と言う師匠の言葉通りに、ランプの光は徐々に弱くなり僅かな点滅の後に光は完全に消える。残った花は少し触っただけでボロボロと崩れ落ち、そのままなくなってしまった。
「あたしも育てたのよ。頑張ったのに淡い色になればいい方だったわ」
そこまで期待もしていなかったのか、リーンは自分の魔力でスイサイが色付くとも思っていなかったのだろう。簡単に自分の報告を済ませると、他に育てていた人物の一覧とその結果をまとめた表を見せてくれた。
誰も鮮やかに色付くまでは育てきれなかったみたいだが、誰もがこの結果を見て言うのは同じ事。
「今までそんな報告なかったよな」
「ああ、だからこそ今後の取り扱いには注意しないといけない」
報告があったのなら、今頃スイサイの栽培なんかは全て管理されているはずだ。
街中ではさすがに見ないが、ちょっと奥の山なんかに行けば自然にある花だから目にする機会は多い。それが魔力を吸収して蓄えることが出来る上に、溜めた魔力を使い切ったら消えてしまう。なんて知られたら何に使われるかなんて分かりきっている。
「規格外って言われるディオくらいの魔力が必要だとはいえ、並みの魔法使いだって魔力切れ起こす寸前までを繰り返せば出来ない事はないからね」
部屋を出るように促しながら告げた師匠の言葉、前半の自分がいとも簡単に花の色を変えて見せたことを棚に上げて俺の事を言うのはともかく、後半のやけにリアルな例えに引っかかりを感じた。
本当に分かりづらいことするよな。というか、いつその事を知ったのやら。俺は連絡していないからユリエスかスカーレットか。
スカーレットと言えば、情報を探ってみると言ったあれから、試験やらで慌ただしくて授業以外では会えていない。教師は長期休暇ってどうするもんなんだろ。
「さて、私は別の仕事があるのでこれで。リーンは引き続き管理をお願いするよ」
「お任せください!」
「バランが二人に会いたがっていたから、顔を出してくるといい」
そうして、しっかりと鍵をかけたことを確認した師匠とリーンは足早に去って行く。
リーンはともかく師匠の別の仕事っていうのはサボりの口実のような気もするけど、さっき王城からの使いが来ていたみたいだし今日はおそらく本当に仕事だろう。
「それじゃ、指名されたみたいだし」
「バランにもだけど、スカーレットにも休みのうちに会っておかないとね」
「だな。その前に昼飯にしないか」
その提案に、ユリエスも賛成してくれたようだ。バランのよくいる研究室に向かおうとしていた足がクルリと向きを変えた。
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