↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら俺が乙女ゲームのヒロインらしい  作者: 柚みつ
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/178

休みの過ごし方

 長期休暇、その名の通りに長い休みをもらったわけなんだけど。その期間、ほぼひと月。

 いったん家に帰るダニーやリンクスはもちろん、他の奴らもどこかソワソワした様子だったし学生、という身分では貴重な何もしなくていい時間だっていうのは分かる。

 分かるんだが、それがいざ自分の身に起こった時にどうしたらいいのかは分からない。


 とりあえず、久しぶりに朝の決まった時間に起きなくていいというのを楽しもうと思い、最近は習慣となっていた目覚ましをセットせずにベッドに潜り込んだのはいいものの。


「習慣ってすごいな……」


 結局授業があるのとさほど変わらない時間に目が覚めたので、そのまま二度寝するべく布団を深く被ってみたがわずかに微睡んだだけで終わってしまった。

 このままベッドでだらだらとするにも、何かをするにも中途半端な時間。


「――で、休みって何するもんなんだ?」

「来るだろうとは思っていたけど、そう来るとは予想外だったな」


 困ったように笑いながらも本人が言うように俺が来ることは予想していたんだろう、いつものように椅子に座るとすぐにお茶を出してくれた。


「今まで任務がないときは何を?」


 魔法省の中では俺とユリエスはペア扱いだし、実際にそういう任務が多かったけど四六時中ずっと一緒ってわけじゃない。お互いに指名で依頼が入ったりもするし、ユリエスには貴族としての責務もある。それなりにどこで何をやっているか、は知っているが全てを把握しているなんて事はない。ユリエスもそれを分かっているから今改めて休みに何してたか、なんて聞いてきてるんだと思うんだけど。


「それが、何をしていたっていう覚えがないんだよ」


 王都内で済むのならだいたい二つ、どっかに遠出するならその通り道で受けられるのもまとめて、なんて任務の受け方をしていたから空き時間はその準備なんかで終わってしまう。

 それでも街に出れば面倒くさいのに見つかる可能性があるから、出来るだけ任務中の変装した姿で買い出しなんかをしていた。

 師匠に週に一度は任務を入れない日を作るように、なんて言われて実際に丸一日空けてみたこともあるが、どうにも落ち着かなくてその時は結局魔法省の中にある閲覧許可が必要な本棚を手あたり次第に漁ったっけ。


「いい傾向、かな」

「こんなに悩んでるのにどこがいい傾向なんだよ」


 ユリエスの考えていることはだいたい分かると思っているが、どうして嬉しそうな顔をしているのか、その答えは今持ち合わせていない。


「これから、街に出ようか」


 カップに半分ほど残っていたお茶を飲み干し、にっこりと有無を言わせない笑顔で部屋を追い出された。これは、出かけられるようにさっさと準備しろって事だよな。

 わざわざ街に出る用事なんてないけど、あの笑顔のユリエスの言うことは聞いておいた方が無難だということはこれまでの付き合いの中で嫌というほど学んでいる。

 仕方ないか、と自分の部屋に戻り外に出れる格好に着替える。休みの間は街に出るのに制服じゃなくてもいいらしいけど、私服なんてほとんど持ってきてないから白シャツ、それにゆったりした黒いパンツとブーツ、なんてあんまり代わり映えしない服にしかならなかった。


「お、ディオ出かけるのか」


 着替え終わってユリエスと待ち合わせた門の前に向かう途中で、ウィードとすれ違った。向こうは制服だったけどちょっとだけ街にも出るらしい。必要なものの買い出しなら学園の生徒だってわかる方がおまけもらえたりするから、だと。


「相変わらずしっかりしてるな」

「そう簡単に着崩せないからね」


 ユリエスは制服だっていつもボタンをしっかり閉めてかっちりと着こなしているが、私服でもそれは変わらない。本人はどこにどんな目があるか分からないから、と言っているがたぶん性格的な部分も大きいと思う。

 白いシャツに薄い青のジャケット、それよりも濃く、紺に近い色のパンツを履いている姿は学生よりも貴族子息と言った方がしっくりくる。さりげなく袖口にはカフス代わりに小さい飾りをつけているし、シャツやジャケットには皺ひとつない。あの短時間でよくここまで準備したもんだ、と思ったが恐らくユリエスなら出来るだろうな。ローブ一枚纏っていればよかった俺と違って、小さい頃から仕込まれてそれを当たり前としているんだから。


「んで、街に行くって言っても当てはあるのか?」

「そうだね、まずはパン屋に行こうか」


 言われた言葉を理解して数秒後、いたずらが成功したように笑うユリエスにデコピンを一発お見舞いする。

 対して痛くもないだろうにわざとらしく声を上げるのを見て、俺も笑って街に向かって歩き出した。


お読みいただきありがとうございます!

評価やブックマークもいただけてやる気上がりますー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。