結果発表
試験の結果を待つだけとなった週末の休みは、いつも以上に外出が多かったようだ。
寮の食堂はガラガラで、あまりに暇を持て余したテッドが俺たちとしばらく話していても、厨房の誰からも怒鳴り声が飛んでこなかった。
そうして、休み明け。授業がない代わりに朝から試験結果が張り出されるそうだ。月科も陽科も区別なく点数準での順位だそうで、それを見て休み明けに科が変わる場合もあるらしい。
結果が良くなければ休み返上で補習、これは寮に強制居残り。そうでなければ帰るか残るかは個人の自由。ただし、一月ある休暇で頭の中を空っぽにすると授業が始まった時に辛いぞ、と言っていたのは誰だったか。
「上位とは言わない、せめて補習は回避したい」
「そこは上を目指すって言いなよ」
「冗談。お前ら抜いていけるわけないだろ」
勉強に費やした年月が違いすぎる、と文句を言いながら口を尖らせているのはウィード。そりゃここに来るまでの知識や経験なんかは比べ物にならないけど、学園に入学してからの時間は一緒のはずなんだが。
「あ、三人ともおはよー!」
のんびり歩いて門を潜ると、前方から声がかかる。ぴょんぴょん飛び跳ねる姿に苦笑しながらも手を上げて返せば、待ってましたとばかりに笑顔になった。
「ボクたちね、補習なかったんだ!」
「どうにか、といったところもあったが全教科で回避できた」
「二人ともおめでとう、頑張ったね」
全身で喜びを表現するリンクスと違い、ダニーは淡々と結果を告げているように見えるが、ユリエスがその頑張りを労わるとわずかに表情を緩めた。
「さて、それじゃあ覚悟を決めますか」
「たかが結果を見るだけなのに大げさだな」
俺だって気にはなってる。ある程度の予想は立てていたとはいえ、実際どのくらいの点数になったのかは興味あるからな。
「ユリエスが三位、ディオが二十六、俺は……三十! 補習枠にも名前ない!」
先に確認していたダニーとリンクスと共に手を取り合って喜んでいるウィードをよそに、ざっと張り出された名前を確認する。
「思ってたより上にいた?」
「ちょうど真ん中を狙ったんだが」
狙っていた位置はウィードだったから、次の試験はそこを目安にやってみればちょうどいいのかもしれないな。
「おや、まだ残っていたのか」
何だか聞いたことあるような言い方と声なんだけど、誰だったけな。見たことはあるはずだ、と首を傾げていたら、結果を確認してサッと立ち去ってしまったので、結局思い出せないままだった。
「その言葉、そっくりそのまま返したほうがよさそうなんだけどね」
「ユリエスが珍しいな、そういうこと言うの」
苦笑を返しながらも、ウィードたちには聞こえないように音量を落として告げられたのは、前にラングートの名を出してきたのがあいつだってこと。ユリエスの事を出来損ないだなんて言う前に自分を見直した方がいいんじゃないのか。
今さっき覚えた名前、クルツ・エクレールが補習者リストに上がってるのばっちり見たからな。
「さて、俺たちは寮に残るけどふたりはどうする?」
「ボクは帰るよ。そんな遠くないし、弟と妹が待ってるからね」
ウィードの問いかけには、先にリンクスが反応した。ダニーは、どう言おうかと少し眉間にしわを寄せて考えているようだ。
「残る予定だったんだが、ヴィオレッタが帰るらしくてな。不安だから一緒に帰ることにした」
「あれ、でもヴィオレッタ嬢は補習あっただろ?」
「ああ。今回倒れたこともあって、今後どうするかを一回考えた方がいいって事になってな。
補習の代わりに、課題を持ち帰ることになった」
本人も迷惑になると思っていたらしく、今回の学園側の提案はすぐに受け入れたそうだ。
ダニーやリンクスは残って欲しそうにしているが、こればっかりは本人次第だからな。そのまま食堂に向かい、いつもより時間をかけて昼食を取ってから、それぞれの部屋に戻る。
早い奴だとこのまま出発してしまうそうだが、ヴィオレッタ嬢に合わせたダニーは明日の朝に出るそうだ。リンクスも途中まで方向が一緒だから、と共に発つことにしたらしい。
「それじゃあ、休み明けにな!」
そうして、俺にとって初めての休暇が始まった。
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