三人だけの秘密
「そういや、ダニーとリンクスにはどうするんだ?」
言うのか、と聞いてくるウィードの顔には純粋に疑問だけが浮かんでいる。そこに魔法省の人間に取り入ろうだとか、そういった色がないからこそ俺たちも正直に告げたわけなんだけど。
「ま、時期を見てだな」
「今はそれどころじゃないだろうからね」
ヴィオレッタ嬢が倒れたことは月科の中でもちょっとした話題になったらしい。ただ、上級生からは魔力切れか、なんて割とよくあることだといった風に取られたようだったけど。それでもすごく遠回しに第一王子から確認が来る程度には話に上がったみたいだ。
「ヴィオレッタ嬢、目を覚ましてからダニーがずっとついてるもんな」
「もう大丈夫そうなの?」
「さっきリンクスに聞いてみたら、本調子ではなさそうだけど、前みたいにふらついたりは減ったって」
アンナ嬢もそばにいるようだけど、前みたいに倒れた時に自分だけでは支えられるか不安なんだろう。ダニーが近くにいることにも何も言わないみたいだし、リンクスも一緒にあれこれ世話を焼いているみたいだった。
目を覚ましてから念のために魔力を探ってみたけど、あの時みたいな今にも消えそうな感じではなくなっていたし変な気配もしなかったから、原因は調べないといけないが倒れた理由は魔力切れで間違いないはずだ。
「となると、二人の事はしばらく俺だけが知ってるって事か」
「ウィードが他の人に言いふらしたりしなければね」
ユリエスの場合はもはや両親の妄言と思われているが、魔法省で働いているという話が出たこともあるからそこまで本気に取られることはないだろう。俺の場合は今の身分は庶民だし、実習なんかはあまり成績いい方にはしていないから、良くてやんわり否定されるか、下らないと鼻で笑われるか。ま、たぶん後者だろうな。特に月科の一部の連中からしたら、貴族籍でもないのに魔法省で働いてるなんて大ぼら吹いた奴がいるなんて思われるだけだ。
「大丈夫、商家の人間は口が堅いんだ」
「その言葉、聞き届けたぞ」
商家の出身でも簡単に口を滑らせる奴もいるがな。こんな言葉遊びでも誇らしげな表情で頷くウィードを見て、ユリエスも笑っていたし大丈夫だろ。
「何だか三人だけの秘密ってワクワクするな!
もうすぐ待ちに待った長期休暇だし」
「休み、か。どうする、ディオ。一回帰るかい?」
帰るって、いったい何の話だ?
何の事だかわからずに首を傾げたら、そうだった、とウィードが頭をガリガリ掻きながら苦笑している。
「あー、ユリエス。たぶんディオ聞いてなかったと思うぞ」
「……そうみたいだね」
ユリエスと二人、しょうがないと顔を見合わせる様子はいつもと同じ。その姿に気分が上昇したのは自覚したがそれは今は置いといて。
聞いてなかったって言われるって事はどっかしらで教師から説明があったんだろうが、生憎と全く記憶にない。
「長期休暇、一月あるから寮に残るか、一時帰宅って家に帰るかを選ぶんだって」
「月科はだいたい帰るかな。陽科は半分くらいって聞いたけど」
「俺は家に帰っても店でこき使われるだけだし、残るつもり」
そもそもこれ、任務なんだよな。師匠に確認しなくていいのかなんて思ったけど、どうする? と聞いてきたユリエスの様子からすると選択権はこちらにあるようだ。いつの間に連絡なんて取っていたのか。
「どっちでもいいなら、めんどくさいから寮だな」
「ディオならそう言うと思ったから、魔法省にはもう伝えてあるよ」
ウィードにいろいろ話したからか、こう一緒にいるときにでもあまり気にせず話せるようになったのは楽だなと思う反面、これで気を抜くようなことにならないように気を引き締める。
ただでさえ目はつけられてるんだ。どっかでやらかそうものならここまでの時間が無駄になってしまう。
「ここ最近、他に気になることもあっただろうけど。
まさか、追試になんてならないよね?」
自分たちが勉強教えたんだから、なんてもう終わってしまった試験に対して笑顔で逃げ場をなくしていくユリエスに、面白いくらい青くなったウィードが頷いていた。
休み明けの結果発表が楽しみだな。
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