仲直りは衝撃と共に
「さて、それじゃあ仲直りだね」
ユリエスがにっこりと笑いお茶を入れてくれる。
喧嘩をした、なんて自覚もなかったが意見の相違があったのは確かだ。それに対して仲直りだと言うのならそうなのかもしれない。
「おでこ、赤くなってんな」
「あんなにテーブル近いと思わなかったんだよ」
「ちょっと待って、何か冷やすものを」
そう言いながら立ち上がろうとしたユリエスの腕を掴み、その場に引き留める。おでこに出来たたんこぶを押さえながらも、ウィードが首を傾げたのは分かっているが、わざわざ冷やすものを持ってこなくても、もっと簡単な方法がある。
ただ、それは俺だけでなくユリエスの同意もないと出来ない事だけど。
さっきのウィードの言葉は心からのもので間違いないと思う。だとしたら、まだ俺に対する恐怖なんかを全部拭えているわけではない。
次にまた同じようなことが起きれば、今度こそウィードは離れていく。そう確信もあったし、何よりもこいつなら、俺たちの事を悪いようにしない、そう思えたから。
「いいのかい?」
「そう思ってなかったら聞かないだろ」
確認するように口に出してきたユリエスだって、そうであればいいと願っているくせに。その表情の機敏を読み取れるくらいの時間は重ねてきていると自負している。このタイミングで嬉しそうに笑っているのは、ちょっと分からないけど。
会話についてこれないウィードがしびれを切らすのと同時に、ユリエスがおでこの赤くなったところに手をかざす。
「ユリエス、何を」
「悪いようにはしないって」
ユリエスがかざした手に光が集まる。あれくらいなら一瞬で治すんだけど、ウィードが状況を理解する時間を取るためにいつもよりもゆっくりとした動作でおでこに出来たたんこぶを治していく。
「もう目を開けて大丈夫だよ」
眩しかったのだろう、いつの間にか目を瞑っていたウィードがそろそろと目を開ける。
そのまま自分の手を持っていったおでこを確認するように何度もさするが、あったはずのこぶは見つからなかったようで驚いた表情でこちらを見てくる。
「今の、まさか」
「ユリエスの治癒はすごいだろ」
「すごいだろ、って……」
呆然としているが、何かに思い当たったようにハッとしたウィードはユリエスの方を見る。
「授業で習った、訳じゃないよな。ディオだってそれを当たり前のように思ってるし」
「まあ、何度か世話になってるからな」
「何度かどころじゃないよ、おかげで得意になったんだから」
何度やっても俺は光属性が使えるようにならなかったから、任務で怪我をするたびにユリエスのところに駆け込んだからな。徐々に怪我をすることもなくなっていったから、最近ではほとんど世話になってない。
扱うのが難しいと言われる光属性だけど、ユリエスがこれだけ上手に扱えるのは師匠にスパルタで鍛えられたのもあるけどまあ間違いなく俺が理由だろ。
「そんなの使えるのになんで学園に入学なんか」
「何でって、それが任務だからだ」
当たり前であるように、何でもない事のように言えば、息を飲んでウィードが俺とユリエスの顔を交互に見る。若干、引き攣っているように見えるのは気のせいではない。
「魔法使える奴が任務って言うの、俺の思い当たるのは一つしかないんだけど」
「たぶんそれで合ってるよ」
ウィードの前で座り直したユリエスはふふ、と穏やかな笑みを崩さない。その態度はたどり着いた答えを肯定している。
冗談であってほしいとでも思ったのか、ウィードは俺の方を見上げてきたが悪いがその期待には答えられそうにない。
「俺とユリエスは、魔法省の人間だ」
お読みいただきありがとうございます!




