二人だけのお茶会
「俺、一生分のスイサイ育てたと思う」
「じゃあ次に使うときは買わないとね。
……それで、どうだった?」
「話が早くて助かる」
連絡もせずにユリエスの部屋に行ったが、来るだろうと思っていたんだろう。机にはカップが二つ置いてあり、お茶と軽く摘まめるお菓子が用意してあった。
ドアを閉めてから軽く手を振って防音魔法を施す。どこで誰に聞かれるかも分からないから二人で話すときにはいつものこと。最近は五人でいることがほとんどだったからあんまり出番はなかったけどな。
「水質、流れの速さなんかを変えてみたけどどれも結果は変わらず。試しに魔力を水と種に込めてみたのは結果待ち。
それで、おそらくなんだがヴィオレッタ嬢の感じは魔力切れに近いと思う」
そんな状況になることなんてほとんどなかったから最初は思い当たらなかったけど、師匠のところでいろいろ実験した後の感覚で思い出したことがある。
「言われてみれば、魔力空っぽになると気絶するね」
「授業で見ている限りだと威力はあったし、それなりに魔力は持ってそうなんだけどな」
何回か魔法を使っている様子を見ていたが、他の奴よりも威力があるのに、使った後にふらついたりなんかはなかった。あの一発で魔力使いきっているならすぐに反応があるだろうし。それがなかったって事はまだ余力があるって事だ。
大体の人が、魔法の練習をしているうちに自分の魔力量の限界を知っていく。魔法一回使うごとの何かが抜けていく感覚を覚えて、何回使えば立っていられなくなるのか、その状態で魔法を使ったら自分の体にどんな変化が起こるのか。魔力切れは魔法使いにとっても死活問題だから、早いうちに覚えていないと困るのは自分だ。
初めて意識して魔法を使ったときに、そのまま魔力が切れるまで使わされて倒れるなんて経験は他の人はしていないなんて知ったときは腹も立ったけど、その経験があるのとないのでは魔力に対しての考え方がまるで違うから今では感謝している。
けれど、ヴィオレッタ嬢のあの様子だと自分の限界を知らないか、分かっていてもそれ以上に魔法を使おうとしているかで回復が追い付いていない、そんな感じだった。
「今日の試験の感じ、あれ半分も答えられてないな」
「難しかったわけじゃないんだろ?」
「あー、まあ。三人にも確認したけどそれなりに解答埋められたって言ってたから」
簡単すぎる問題ばかりだったが、それは俺たち基準でだって言うのは理解している。今まで魔法に関わってこなかったあいつらがそれなりに答えられた、と言うならそこまで難しいというわけじゃないんだろう。
「ディオの言う通り魔力切れだとして、そうなった原因はおそらく、前に聞いた」
「魔力操作の練習でもらったスイサイ、だろうな」
魔力込めて育ててみる分に関しては師匠が送ってくる結果を待つしかないけど、他に思い当たるものもないのでおそらく、としか言えないけどそれが原因だと思うんだよな。授業でだってそんな無茶なことはまだしていない。魔法を覚えたてで楽しくなって何も考えずに使うような性格ではないみたいだし。
「ダニーに様子を探ってもらうか」
「僕たちが聞くわけにいかないからね。ブレア先生についても、もう一度スカーレットに当たってみるよ」
ダニーもヴィオレッタ嬢の様子は気にかけているから、話を聞くだけなら出来るだろう。あとはダニーがヴィオレッタ嬢と話ができているか、なんだけどたぶんこっちはうまくいってないと思う。
今日も試験終わるのと同時に教室出て行ったからな。
それにしても、と脳裏に浮かぶのはスイサイを渡した人物。
「いったい、何が目的なんだろうな」
「それが分かれば苦労しないって」
用意してくれていたお茶はすっかり冷めていたけど、お菓子を摘まみながら久しぶりに二人だけで話せた時間はとても心地よかった。




