決意の舞台裏 sideセリ
「明日の授業終わりに、談話室で」
逃げるように食堂を後にしたけど、明日どうしよう。
あの二人に話そうと、そう決めたまでは良かったんだけどユリエス様一人ならともかく、二人だけでいる時なんてなかなかない。食堂でご飯食べている時に声をかけようかとも思ったけど、たいていもう一人一緒にいるからなかなかタイミングが掴めない。
「なあ、セリちゃん。それはそんなに力を入れないといけないのか」
「え、ああ、えっと……私と料理長じゃ力の差があるからここまではしなくていいと思うわ」
どうしたものかと平日だけど食堂に来たら、大きな袋を前に頭を抱えていた皆に縋るように見つめられた。
どうやら、蕎麦粉と小麦粉が間違えて届いてしまったらしい。前にガレットを作った時に使った蕎麦粉は食材の手配をしている商会が新しい穀物が見つかった、とかで試しに置いていってくれたものだ。出来ればお蕎麦を作りたいとは思っていたけど、修学旅行の職業体験でしかも一回しかやったことのない蕎麦打ちに手を出そうなんて到底思わず。
なのに、目の前の料理人皆はこちらを見ているし、食材持ってきた配達人はもう泣きそうな顔をしているしでこの状態で出来ません、なんてすごい言いづらい。
「じゃあまとめた生地を伸ばして、細く切っていってね」
「なんだかパスタを作っていた時の事を思い出すな」
「学園で賄う量はさすがに作りきれないからな。買えるようになって助かったよ」
正確な分量までは分からないし、この世界に来てから何故か曖昧な分量でも失敗作が出来上がることはないからきっとどうにかなるだろうと思って引き受けたけど、本当にどうにかなってしまうなんて思わなかった。
「あとは、これをたっぷりのお湯で茹でて、作っておいたスープに入れたら完成よ」
幸いにして、スープパスタはすでにあったので、そんな感じだと説明したら頑張ってくれた。料理人のみんなが。
粉だらけの手を洗いながら、活気づいてきた食堂を見渡す。こちらは奥の方にあるからあまり見えないけど、そろそろ厨房からは出ておいた方がよさそうだ。誰かに声をかけてから、と思ったら馴染んだ蜂蜜色の髪が誰かと話しているのが目に入った。
「テッド、その人少し引き留めておいて!」
「え、ちょっとセリ?」
「頼んだわよ!」
向こう側からは見えないようにしゃがんで、小声で告げた後に返事を待たずに厨房を出る。だってあの人、いつも二人と一緒の人でしょ。今ここにいるってことはあの二人はきっと食堂にいるはずだ。これを逃したらいけない、とそう直感が告げていた。
「なんとか約束取り付けられたけど、本当に明日どうしよう」
ユリエス様ともう一人――ディオにはとても警戒されていたよね。なんか、一瞬ありえないくらいの魔力感じたし。
シナリオだとユリエス様は魔法省の任務で学園に入学してきた。任務、とだけで詳細までは最後まで明かされなかったけど。ということは一緒にいる彼もそうだと思っていいんだろう。魔法省の人、もしくは関係者。どちらにしてもただの新入生ではない。
隠しでも、二周目以降で攻略できるキャラにも出てこなかったけどヒロインの立ち位置はおそらくきっと、あの人なんだろうな。面白いくらいにわたしにイベント起きないぶん、あの人がこなしてるし。しっかりと街中でも遭遇していたのはびっくりしたけど。あれ、二周目じゃないと起きないはずなのに。
「とにかく、噂の事は伝えて、バッドエンドだけは回避しなきゃ」
一通りやって、全ルート回収していた自分本当によくやったよ。おかげで全滅ルートは回避できそうだ。




