試験の前に
試験前の最後の休日、少しでも知識を増やしておきたいのか図書室はいつも以上に賑わっていて、結構な広さがある勉強用のスペースは満員だった。学年ごとに授業内容は違うとはいえ、同じ学年だけでも四十人いるわけだし同じ本が何冊も置いてあるなんてことはないから、欲しい内容の物は早い者勝ち。
今更勉強する気はないし、確認したいこともあるから今日の休みは久しぶりに街に出ることにした。
「おや、ハイデルエルムの学生さん?」
「無くした物を探しに」
「ああ、それなら向こうの部屋。ついてきて」
魔法省に入ってすぐ、声をかけてきたのはローブを目深に被った男性。どうしたのか、と聞いてきた声は少し気だるげだったが、案内する、と踵を返して歩く姿からは颯爽としていて疲れている様子は見えない。
「……そうしてると、ただの学生にしか見えないね」
「バラン、分かってると思うけど」
「もちろん、任務中だろ? だからこうして案内してるんじゃないか」
魔法省では街中の落とし物を預かっている。騎士がいる詰所に持って行ってもいいんだけど、失せ物探しでこっちに相談に来る人が多いし、だったら初めからこちらに預けておけば二度手間にならなくて済むってことで魔法省で管理するようになったそうだ。
そういうことで他の省とは違って魔法省は誰でも入れるし、人の出入りも多い。今回みたいに潜入任務してる時には自由に入れるのはありがたいがその分、普段なら問題なく入っていける場所でも簡単に入れなくなる。
だからこそこうして入り口で魔法省の人間を判別して、用事があるようなら奥につれていくなんて面倒な手段が必要なわけなんだけど。
これも人の魔力を見て判断するいい修行になるから、と前に出されるのはそれなりに訓練を積んだ人しかいない。
「わざわざ制服で来るなんて、どうしたの」
「スカーレットも注意してる奴が一人いてな、警戒はされてるんだろうけど無駄に刺激したくなくて」
「ああ、薬草学教えてるんだっけ。学園はどう?」
「飯が美味い」
バランはそれなりに長い付き合いだけあってすぐに俺の事に気が付いたようだった。制服姿なのを見て、何の不自然もなく学生にする対応に切り替えられるくらいのことは簡単にやってくれる。
何より俺の魔力の多さには興味があるがそれ以外はどうでもいいと初対面から言ってきたので、他の奴よりも話す回数は多い。
「へえ、それは僕も気になるな」
「スカーレットにでも頼んでみるんだな」
そんな事を話しながら奥の部屋に着くと、いるとは思ってなかった人物が待っていた。
「やあ、ディオ」
「師匠」
「思ってたより遅かったね」
くい、と手でさらに奥の部屋を示されたのでバランに礼を言ってから師匠の後について行く。バランは師匠がいることに驚いた様子は見せなかったから、知ってたんだろうな。
そうして奥にある本当に必要最低限の家具しか置いてない部屋に入る。ここ、よく師匠が書類から逃げるときに使う部屋だから魔法省の人間でもあまり知っている人はいない。
つまり、しばらくの間は邪魔されずに話が出来るってことだ。
「任務は順調のようだね」
「授業の質、だっけか。元がどんなんだか知らないけど別に悪いっていうほどじゃない」
入学して、それなりの日数が経ったが教師の授業に手を抜いたりだとかそんな様子はないし、勉強を疎かにするような生徒も今のところは見ていない。ユリエスには変に絡んでくる奴がいるみたいだけど、そんな大したこともしてないらしいし。
「なあ師匠。この任務いつまで――」
「そういえばディオ、前に手紙を送ってきた学園の噂はもう解決したのかい?」
思い出したかのように言われたが、俺の言葉が聞こえていないはずがない。というか、たぶんわざとタイミング合せてきたな。これ、答えてくれないときの師匠の癖だ。本人も俺たちがそれに気づいていることを知っていてわざとそうしているんだから、性質が悪い。
「スイサイ、知ってるか」
「もちろん。花を育てる授業でも?」
「そうじゃないけど、ちょっと気になる事があって。あれ、育てるときに魔力を流すとどうなるか知ってるか?」
ヴィオレッタ嬢の様子を聞いた感じだと、どうも魔力を使いすぎた時の状態に似ているんだよな。眠くなったり、頭痛や気分が悪くなるなんかもあるみたいだけど。
「試したことはないな。今からやってみようか」
ずっと追ってるゲームの新作リズムゲーム発売なので、ちょっと世界に浸ってきます。
体験版で酔ったので、休憩がてら書きますよー!




