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どうやら俺が乙女ゲームのヒロインらしい  作者: 柚みつ
本編

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同級生の頼み事

 いくら潜入任務だとはいっても、今の俺たちはハイデルエルム魔法学園の一年生。つまりはただの学生だ。いい笑顔の師匠にたくさん学んでおいでなんて言われてはいたものの、この立ち位置を認めてもらうために俺と、言ってはこないけど多分ユリエスも。それこそ魔法省にあるものならただの紙切れ一枚でも必ず目を通したし、分からない単語が出てきたときには資料室をひっくり返して調べたりもした。

 だからこそ俺たちは同年代で比べたら知識はあるはずだと思っているし、実際にその通りなんだけど。


「ユリエス、こういう時はどう対処すればいいんだ?」

「奇遇だねディオ、僕もそれを聞こうと思ったところだ」


 今日も夕食後、いつものように俺の部屋に集まるような流れだったのに、緊張した様子のウィードが自分の部屋に来るように声をかけてきた。

 なんだか珍しいな、なんて思って黙っていたら何故かとにかく今日は自分の部屋だと言って走り去ったウィードの背中を見送って。理由は分からないけど、そこまで熱烈に誘われたなら行ってみるかと部屋を訪れた俺たちを迎えてくれたのは、ウィードと、他二人。

 それが同じタイミングで頭下げてきたんだ、意味が分からなくてユリエスに助けを求めたがどうやら思ったことは同じだったようだ。


「いや、虫のいい話だってのは分かってるんだけど」


 いつもの笑顔よりも若干、気まずそうな表情でウィードが言うには。


「勉強を教えてくれってことか」

「まあ、うん。簡単に言えば」


 二人は、憧れの魔法学園に入学できたはいいが試験結果はあまりいいとは言えず、陽科の下から数えたほうが早い方にいるらしい。それでも授業についていこうという気はあるらしく、ウィードを頼ったと。そこから、よく一緒にいる俺と月科のユリエスの話をする流れになったようで紹介してほしいと頼み込まれたから一応、話だけならってことで下げられた頭で迎えられたわけだ。


「同じ科なんだから、直接聞けよっていうのはもちろんなんだけど……」

「ディオは見た目から取っつきにくそうだからね」

「そ、そんな事は」

「ないとは言い切れないだろ」


 いつまでも頭下げられてるのも変だしとりあえず座るか、とそれぞれが腰を落ち着ける。

 部屋のつくりはどこも一緒で、貴族との区別もなし。だから貴族からすれば部屋が狭いと文句が出るが庶民からはこんな広い一人部屋、なんて感想だったりする。

 家具はベッドと勉強用の机だけ持ち込み不可。なんでも部屋に入らないサイズの物を持ってくる奴が多かったから、らしい。それ以外は必要だと思ったなら持ち込んでいいことになっている。

 ウィードはあまり物を置かないタイプのようで、備え付けのベッドと机以外には家具がなかった。

 クッションはあったけどこの人数には足りなかったので直に床に座る。


「えっと、改めまして。

 陽科のダニー・スート、男爵家の三男です」

「ボクはリンクス」


 俺も陽科だし、自己紹介はユリエスに向けてだ。

 リンクスは魔力測定の時に見て、青い髪で水属性なんて分かりやすいな、なんて思ったから覚えていたけど、ダニーの方は申し訳ないけど顔と名前は一致していなかった。

 俺よりも濃い茶色の髪は短く切りそろえられていて、しっかりとした体つきは緊張しているのか、キュッと縮こまっている。


「えっと、月科のユリエス・ラングートです」

「それで、どうして俺たちに?」


 勉強を教えて欲しいなら教師に聞きに行く事も出来るだろうし、科には他に話している奴だっているだろう。ウィードに仲介を頼んでまで俺たちに声をかける必要なんてないと思うんだが。


「薬草学で最初に回復薬を作った時のこと、ウィードから聞いたんだ」

「それで、ボクたちキミに教えて欲しくなって!」

「リンクス、それじゃ説明になってない」


 手順に忠実ではなかった俺の回復薬は、それなりにいい評価だった。スカーレットが担当だし、俺たちの事を知っているんだから本当の評価がどうなのかは知らないが。

 そのほかにも、今までの授業中の様子なんかから魔力の操作なんかはともかく、座学の部分であれば俺に聞けば何とかなるかも、と考えたらしい。

 ダニーが苦笑しながらリンクスの言葉の足りなかったところを説明してくれた。どうやら、興奮したりすると自分の中で話が完結するタイプのようだ。魔法省にもいたから慣れてるっていえば慣れてる。


「それで、どうだろうか」


 ウィードは申し訳なさそうに頭をかいてるし、ダニーとリンクスは不安そうに俺たちの方を見ている。ユリエスは受け入れるつもりでいるような表情だし、もうこれはそういう流れだよなあ。


 ちょっと前なら確実に断っていただろう自分が面倒くさいとは感じながらもしょうがない、と思っていることが意外にも悪くない、と。

 師匠のいう、学ぶっていうのはきっとこういうことも含まれているんだろうな。



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