勘は馬鹿にならない
ふんわり日常回です
「二人とも、俺に隠してることないか?」
スカーレットに情報集めを頼んだはいいが、そう簡単に集まるはずもなく。魔法省には過去に魔法が関係した事故や事件なんかの詳細がすべて取ってあるとはいえ、何の情報もなく探すにはあまりに量が膨大すぎる。
もちろんこちらでも出来ることはやっているが分かった事と言えば、好きな食べ物と得意な魔法属性くらいだった。
調べろと言ってきた彼女も詳細までは分からないらしく、女子生徒の間で話題になったことは教えてくれるんだけどその情報っていうのがその日の服だったり、授業終わりに質問したら褒められた、と言う情報として扱っていいのかも分からない事だったりする。
そうして、何も手掛かりを得られないままに過ごしていて、いつもの週末。次の日が休みだと毎回俺の部屋に来るウィードは今日もいつものように部屋に来て、そうしていきなり問い詰められた。
「隠してることっていうのは?」
「それが分からないけど、俺の勘がそういってる!」
「勘かよ」
一瞬、何がばれたんだろうと思って構えたが、何かを見たわけでも聞いたわけでもなくてただの勘か。隠し事してるっていうのは外れたわけじゃないから、勘も馬鹿には出来ないんだけど学生の俺たちには何も隠していることはない。
「残念だけど、勘は外れだな」
「いーや、たぶん、きっと隠してることがあるはずだ」
たぶん、とかきっとなんて言ってる時点で本当にただの勘なんだろうし、にじり寄ってくるウィードの顔には笑顔が浮かんでいる。遊んでるだけだなこれ。
「ウィード、よく気付いたね」
「ユリエス?」
シーッと指を立てて静かにするように合図してきたユリエスは真面目そうに見える表情を作った。何か企んでいるみたいだし、このまま成り行きを見守るとするか。
「バレてしまったなら仕方ない。ウィード、ここで見たことは内緒にできるね?」
「ああ、もちろんだ。誰に聞かれても口外しないと誓おう」
「聞き届けたよ」
魔力を籠めた言葉が力になるように、約束を守ると誓ってそれに聞き届けたと返すまでが一種の決まり文句。別に約束を守れなかったからって何かの罰があったりするわけじゃないけど、出来なかった時に信頼とかが一気に落ちるからあまり気軽に言う言葉ではない。
少なくとも、こんなふざけてるのが分かってる状況で使うもんではない。
「実は、新しいデザートの試食を頼まれていてね。後でディオと食べるつもりだったんだ」
「なっ、新作デザートだと……!」
「ウィード、協力してくれるね」
「もちろんだ!」
ユリエスが差し出したのは、手のひらサイズの器。動かすたびに表面が波打つが零れるわけじゃないので液体ではなさそうだ。
「ひっくり返して、お皿に乗せてから食べて欲しいって言われてるんだ」
そうして器をひっくり返して見えたのは、たくさんの果物が詰め込まれた透明な何か。ウィードがスプーンで突くとプルプル揺れている。
「ゼリーって言って、海の草を煮詰めたもので固めたんだってさ」
「海の草? それ食べて平気なやつ?」
「大丈夫って言ってたよ」
ウィードはしばらくツンツンと突いていたが、思い切ってスプーンを入れて中の果物ごと口に運ぶ。
「思ってたより固くないし、海の草って言われないと分からないな。うん、するっと食べれるしこれなら中に入れるのもいろいろ出来そうだ」
慎重だったのは一口目だけで、あっという間に食べきったウィードは満足そうにスプーンを置いた。
俺たちも食べたが、果物が入っているからか甘味はあるのにさっぱりと食べきれた。どうしてユリエスがこんなものを持っていたかは知らないが、結果としてウィードの言う隠し事、については一応解決したっていうことで良しとしよう。
その後、定期的に試食を頼まれることになるとは思わなかったが。




