知らない事と分かった事
明日がくる、そんな当たり前のことがこれほどソワソワするのなんて久しぶりだ。前に感じたのは魔法省に入るための試験を受けるときだったかもしれない。
ユリエスと別れる前に簡単に話したが、彼女は特にクラスの中でも目立つようなわけでもないらしく、挨拶をする程度の仲だからこそどうして声をかけてきたのかも分からない。
とりあえずは明日の授業終わりまでに彼女の事、領地の事、出来るところまで調べておかないと。
「なんか、ディオ今日はぼんやりしてるな」
「ああ、昨日調べ物していたら止まらなくなってな」
昼ご飯のドリアをつつきながら、噛み殺せなかった欠伸をひとつ。
部屋にある資料では調べられる部分があまりなく、朝一で図書室に行ってもみたけどあまり成果はなかった。
「なあ、昨日言ってた名物料理ってどんなんだ?」
「え、調べ物ってそれだったの?」
「それだけじゃないけど、それもあるな」
なんだよー、と口を尖らせるウィードがサラダに手を伸ばす。たっぷりのキノコが乗ったサラダはやはり皿からはみ出るくらいの量を持ってきている。
「あそこ、芋がたくさん取れるんだよ。王都から離れてるから少し寒い土地みたいでさ」
「芋が有名っていうとトーラスか」
「名前までは聞かなかったんだよな。そんで芋を使った新しい料理が定番になったらしくて」
芋の名産地ってことならその名前は聞いたことある。それを治めてるのがスフィア家ってことか。それにしても芋は蒸かすかスープの中に入れるくらいしか思いつかないんだけど、彼女の提案で新しい調理法を広めたっていうことか。もともと、芋はたくさんあるんだろうし定番になるくらいだから簡単に出来るんだろうな。
それだけ聞けば領地の事を考えている令嬢、なんだよな。実際に食堂の料理人なんかとは仲良さそうだし。王都から離れてるならこっちの事情に詳しいってわけでもないから、どうして学園の、しかも調べてもたどり着けなかった出所、を知ってるのか。
「食べたかったら今度セリに頼んでみるか?」
「そうだな、考えとくわ」
答えに満足したのか、手を伸ばしただけで口をつけてなかったサラダを食べ始めた。これ以上は特になさそうだし、冷めてしまったドリアを片付けるべくフォークを進めた。
午後の授業も遅れることなく時間通りに終わり、談話室近くでユリエスと合流する。
基本的に談話室は誰にでも解放されているが、事前に申告があった時だけその部屋には申告された人以外は入れないようにするらしい。
利用者ボードに何か書いてあるかと目を向けたら、あれだ。一件だけ利用申請されている部屋がある。
「それにしても、食堂メニュー研究……ね」
「正直な内容を書くわけにもいかないし、食堂っていうなら多分あってると思うよ」
ボードには第三談話室ってなってるから、とりあえずそこに顔出してみるか。
「そっちは何か収穫あったか?」
「いや、僕には昨日の彼女の声は聞こえなかったからかな。特に何があるわけじゃなかったよ」
「それもそうか。こっちはトーラス領の名物料理を聞いただけだ」
そんな事を話していると第三談話室に到着した。
ユリエスよりも先に教室を出たらしいから、たぶんもう部屋の中に入るんだろう。魔力の反応が一人分なのも確認はした。
コンコンコン、とノックをすれば返ってきたのは想像していた人物の声。
「呼び出してしまって申し訳ありません」
「いえ、僕も同席しても?」
「ええ、もちろんです。お二人に聞いて欲しい話ですから」
部屋の扉を閉めて、勧められるまま彼女の前の席に座る。ふんわりとした笑顔で紅茶を入れる様子なんかは本当にただの令嬢にしか見えない。
「警戒しないで、と言うのも無理な話ですわね。
では早速ですが噂の話について聞きたいことは?」
明日の更新はお休みです。
おイモさんの話がはかどりすぎた




