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どうやら俺が乙女ゲームのヒロインらしい  作者: 柚みつ
本編

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接触

「え、あの噂どこから聞いたかって?」

「さあ、どこからだったかな」

「うーん、あたしたちは先輩からだったかな」

「食堂で話してるの聞いただけだぞ」

「あれって七不思議的なもんじゃなかったの?」



 分かってはいたけど、なんというかまあこうも想像通りだと笑いを通り越してため息が出る。


「どうしたんだよ、ディオ。いきなり噂の出所探すーなんて言い出して」

「いや、ちょっとな」

「あれか、殿下に呼び出されたのと関係あるのか」

「ま、そんなところだ」


 授業の合間なんかを見計らって、クラスの連中に少しずつ声をかけてうめき声の噂の事を聞いてはいるんだが、今んとこ全く成果がない。

 ユリエスのほうも同じようなもんみたいだし、いったいどこからそんな噂が広まったんだか。

 殿下から何かを頼まれたと思っているウィードも手伝ってくれているんだけど、それでも皆誰かから聞いて、というものばかり。その誰かも特定の人物にたどり着くことがない。


 食堂の机に突っ伏していたら目の前に食器が置かれる音、それに食欲をそそるいい匂い。


「はい。ディオたちまだ持ってきてなかったでしょ」

「おー、ユリエス気が利くなー」

「ありがとな。で、これなんて名前だ?」


 丼の中にはパスタ、のように見えるけどそれよりも色が濃い麺。たっぷりと入ったスープは黒くて、底が見えない。具は青菜と、茶色くて四角い何か。


「えっと、確かお蕎麦って言ってたよ。新作なんだって」


 さっぱりしているから、足りない人にはご飯あるって言ってたよ、というユリエスの言葉にウィードがいち早く食いつく。いつも俺たちよりも食べるからたぶん、足りないんだろうな。


「それじゃ、いただきます」


 とりあえず、麺を一口。パスタみたいにフォークに絡めて食べようとしたらスープで滑ってうまく取れなかったけど、何とか少しだけ口に運ぶ。つるっとした食感はパスタのようだがそれよりも噛んだ時の香りが強い。


「ん、なんか取りづらいけどこれ美味いな」

「そうだね。見た目よりも味が薄いし」

「俺はもう少ししっかり腹に溜まる方がいいけどな」


 そう言ったウィードが食事途中なのに席を立つ。まあ、足りなかったんだろうな。配膳している奴と話し込んでるのは味の感想でも聞かれたのだろうか。


「これだけ聞きまわっても出所分からないって、逆におかしくないか」

「そうだね、どちらかと言えば上級生よりも僕らのところのほうが話を聞く機会が多かったみたいなのに」


 となると、新入生にわざわざ広まるようにした可能性もあるってことか。それでも誰から聞いたかとなると同じような答えしか返ってこない。


「上級生に伝手なんてないからスカーレットにも調べてもらうしか……」

「すみません、そちらよろしいですか?」


 突然かけられた声に顔を上げれば、困った様子でトレイを持った女子生徒の姿。どっかで見たことあるんだけど、どこだったかな。


「セリ嬢」

「ユリエス様でしたのね」


 そうだ、入学式の時にタイを拾おうとしてくれた令嬢だ。あの時は下ろされていた髪が今日は纏めて上げてあるから雰囲気も少し違って見える。


「お話し中に申し訳ありません、興味深い話が聞こえたもので」

「興味深いとは?」


 僅かに警戒した様子でユリエスが問いかける。どこから話を聞かれていたのかによってはいろいろまずい。そんなこっちの様子に気づいているのかそうでないのか分からないが、ちょうど空いた隣に座り、トレイを置いた。


「そんな怖い顔をなさらないで。ただ、お二人にお伝えしたいことがあっただけですわ」


 果物を乗せたヨーグルトを前に、手を組んでにっこりと笑った令嬢は、とんでもない爆弾を放ってきた。


「噂の出所、知りたい?」



毎度のことながら、ブックマーク、評価、誤字脱字報告ありがとうございますー!

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