呼び出しのあと
「ってことがあってな」
「王族だから知ってるだろうけど、それがディオだって気づいてそう?」
殿下から呼び出された話はユリエスにも伝えておかないといけないだろうと、夜に部屋に向かうと連絡を入れた後、授業には戻らずに図書室で時間を潰していた。情報整理ついでに、俺の事はどう書かれているのか、書いてある本があるのかも気になったからだ。
小さい子に読んで聞かせるような話の中では魔力が強すぎて魔王になったやつが封印され平和になりました、なんてものを聞くがそんなのはただのおとぎ話だからな。
そうして午後の時間をたっぷり使って調べてみた結果。
「殿下のあの言い方だと授業で習うような感じだったんだけど、ここの図書室にはそんなこと書いてある本はなかった」
「魔法史の教科書なら全部目を通したけど、魔法省の切り札なんて書いてなかったと思うよ」
「ってことはやっぱ俺の事に気づいているか」
殿下は第一王子。するつもりなんてないが、万が一俺が暴走した時には国内の魔法使いや騎士団なんかに指示を出す立場だからクライン姓の事は知らないはずがない。
あの時の書類はそこまで多くはなかったが、その全てにディオ・クラインで署名してある。王宮で署名した時には素顔だったから、もし殿下がその場にいたなら俺の顔を見たことがあるのかもしれない。俺は周りの事なんてどうでもよかったから全然覚えてないけど。
「だとしても、ディオが名指しで呼ばれるとは思えない」
「ユリエスの兄貴から名前くらいは聞いてるのかもな、弟の友人って」
この学園で殿下にあったのはユリエスと一緒に食堂にいた時一回だけ。自己紹介した覚えはないから、名指しされることに思い当たる節がない。
ユリエスの友人、ならあの時隣にいたウィードも当てはまる。がリアンは何も迷うことなく真っすぐ俺に向かってきた。
「あ、食堂で会った時にウィードがディオの名前呼んでなかったっけ」
「は? 呼んでなんか――呼ばれてたわ」
そうだ、時間が無くなってウィードにディオ急げ、って言われたような気がする。だけどその一回だけでしか接触がない下級生を呼び出すのか、と言われれば疑問が残る。
「おそらく殿下はディオの事に気づいている。でも自分からそれを明言するつもりじゃない、ってところかな」
「まあそうなるだろうな」
どうしてこのタイミングで告げてきたのか、とは思うけど本人を問い詰めたところで答えてくれるはずはないし、こちらが素性を隠している以上、分はむこうにある。
「そもそも学年違うし、今回みたいなことがなければ接触する機会なんてないだろ」
「それもそうだね」
殿下の目的が何だったにしろ、こちらからは接触する気はないからこの件に関してはこれで終わり。
それよりも気になるのは呼び出されてすぐに話したほうだ。
「殿下も声の事を調べている?」
「そう取っていいんだろうな。学園の発表の事を信じてはない感じだ」
独自で調査をしている、けどまだ確証を持てるほどのものが見つかっていない。そんな感じだった。
いくら第一王子で今後国王となるだろうと言っても今はまだ学園の生徒。学園の発表を丸っと覆すものになるから水面下で動くしかないんだろう。
「殿下が大々的に動いてくれたほうがこっちは身動きとりやすいんだけどな」
「そうはいっても、王族としての職務もあるなかでの学生だからね。なかなか時間が取れてないみたいだよ」
「へえ、それは兄貴からか」
ユリエスから、兄貴は各省の連絡係で下っ端だと聞いているんだけど、殿下とそんな事を話せる間柄で下っ端、はちょっと想像しづらい。
あっちにも事情はあるんだろう。話してくれるまでこっちからは突っ込むつもりもない。俺も自分の事ははっきりと伝えてないからな。
「ま、やることは変わらないか。噂の出所、まだ確認できてないもんな」
「そうだね、まずはそっちから片付けようか」
滑り……こめなかった……!




