魔法省の歴史
「魔法省の歴史は古い。このルズベリー王国を成り立ちから見守ってきた。
国王陛下の古い友人でもあった賢者、ハイデルエルム様によって設立された」
ルズベリー王国が出来た時のことは、正確なものは残っていない。
小さな村々が集まって国になったとか、元々あった国の悪政に耐えられずに革命が起きただとか、はたまた長い放浪の果てにたどり着いたとか。今残っている資料で研究は進んでいるがはっきりとした答えはまだ出ていない。
その中でも必ず話に上がるのは国王と賢者の関係。こっちも年齢差が親子ほどあったとか、幼馴染だったとかバラバラだが、どの説でも友人であった、というのは変わることがない。
「当時は未知の力と言われていた魔法がここまで浸透したのも魔法省があってこそだ。
そしてその後にこのハイデルエルム魔法学園が設立され、魔法使いというものが広く認められた」
設立当初はまだ魔法使いの数が少なかったためか賢者の圧倒的な力しか知らない人が多かったからか、人々からは恐れられていた。魔法を使う人間が恐れられることに胸を痛めた賢者が学園を作った、とも言われている。あえて学園、としたのも勉強することで誰でも使えると思ってほしかったからだと。
今でこそ魔法省は魔法に関することなら何でも相談できる便利屋みたいな扱いをされているが、ここまで来るのには相当な努力があったのだと師匠が教えてくれた。
「身近になったからこそ、魔法省の仕事は多岐に渡る。君たちも相談に行ったことがあるかもしれないが、それは先人の努力の結果だと知っておいてほしい」
初めは、魔法の力に溺れないように。そして誤った力の使い方をしないように。便利なものを作ったのはもっと身近に感じて欲しいから。怖いものだという印象を持ってほしくなかったから。
そうやって徐々に浸透させていった魔法という力が、今を生きる俺たちにとって当たり前のものになったのだと。
「先生、私魔法省で働きたいんですがどうしたらいいですか?」
すっと手を上げて先生に質問したのは、実習の時に褒められていた……確かヴィオレッタ嬢。
魔法省に入る基準なんて人によって違うから何とも言えないけど、魔力量はありそうなんだよな。実習の時に的倒してたし。
「魔法省への就職は人気が高い、さらには基準も明確にはされていない」
ある種のステータス扱いをされている部分もあるけど、確かに魔法省で働きたいという人は後を絶たない。俺やユリエスのケースは特殊ってわけじゃないけど、ほとんどない。昔はよくあったらしいが、魔力のコントロールや使い方なんかは、今じゃ親から子へ当たり前のように教えられる。
失せ物探しなんかをやっているときなんかにはこんなもの自分にだって出来る、とその場で入りたいと言ってくる奴がいるときもあるそうだ。実力があってこその仕事だからその場で試験をすることがほとんどだが、大抵は軽くあしらわれて終わる、らしい。
俺は今のところその場で、っていうのに当たったことないから聞いただけだけど。
「アリス先生は魔法省からの派遣だから、聞いてみるといい」
「え、アリス先生って薬草学の?」
「それも魔法省の仕事の一環だ。だからこそ、魔法省では何でもこなせる力が求められる」
何でも、とルイス先生が告げたとたんに周りから漏れたのは落胆の声。
学園を出て魔法省に就職しました、って言えたらその後の生活も安泰だもんな。特にこっちのクラスは家を出て自分で生活していかないといけないような境遇がほとんどだから。
「まずはこの学園でしっかり学ぶこと」
「はい、ありがとうございます」
「他に質問は?」
その後の質問はたくさん飛び交ったが、ほとんどが魔法省にあんまり関わりのないものだった。
誰だよ、どさくさ紛れでルイス先生の休日の過ごし方なんて聞いた奴。
とは言え、休日に街を散策していることがあるらしいから外に出た時には出会わないように気を付けないとな。




