違和感と気づいたこと
結局ブレア先生が何を言っているのかは分からなかった。ただ、この違和感はきっとそのままにしておいてはいけないものだということは分かる。設備点検、と称した噂の調査もそろそろ何かしらの見解は出てるだろうし、スカーレットに話を聞きに行くか。教師側から見ればまた違うものがあるかもしれないからな。
「おかえりー。難しい顔してどうしたんだ」
「おかえりって何だよ。これからどうしたもんかと思ってな」
「初めてで的に当たるだけ上等だろ」
ただ的のところに行ってきただけなのに、おかえりと迎えるウィードに呆れながら、嘘ではないが主語は抜いて答える。あえてそう言ったんだが、思った通り魔法が当たったことに対してどうするかと考えているように取ってくれたようだ。
どうやらウィードはしっかりと見学していたようで、俺がぼんやりしていたのは始めのほうで緊張していると思っているらしい。誰がどのくらいの威力で的に当てたか、そうでないかを細かく説明し始めた。
「前から思ってたけど、お前記憶力いいよな」
「お、気づいちゃった? そうじゃなきゃ商家の三男なんて使い道ないんだよ」
「そういうもんか」
「そういうもんなの。あ、ほら火が終わったから次は水だって」
実家の商家がどれほどのものなのかは知らないが、上手いこと人の懐に入ってきたり、名前や顔を覚えるのが早かったりするのはウィードなりに努力をした結果、ということか。
「水属性も基本的には火属性と同じ、だけどイメージによって現れ方が違ってくる」
まずはやってみよう、とブレア先生が言い終わる前に飛び出したのは待ちきれない様子を見せていた小柄な男子。
「リンクス張り切ってんなー」
小さく呟いたウィードに、入学してから一か月は過ぎたのに、未だクラスの中ではウィード以外とほとんど話していないことに気が付いた。この感じだと情報集めるだけならウィードに聞けば事足りそうなんだけど。ずっと一緒にいるってわけでもないし、面倒だけどちょっとずつ会話を増やしていかないといけないか。
潜入、だもんなと思っていたらいきなりバシッと大きな音がした。
今の魔力の流れだと、さっきのリンクス、って奴じゃない。
「ヴィオレッタ嬢、すごいじゃないか」
ブレア先生が褒めたと同時に、わあっと起こる歓声。的を見れば折れたりはしていないが結構深く地面に刺してあったはずなのに倒れていた。水流の強さで押し倒したってところか。
「これなら順番変えて土の子たちね。あの濡れた地面を乾かすようイメージしましょうか」
興奮した様子のヴィオレッタ嬢がこっちに帰ってくるのと入れ替わりに向かった土属性の生徒たちに、シャーロット先生が手招きした。濡れた地面のほうに向かって魔力を放出しろ、ということだろう。
「すっげえな、ブレア先生べた褒めしてるわ」
「あの威力じゃそうなるだろ」
荒削りでもあの的を倒せるくらいの魔力出せるんならなかなかのもんだ。ブレア先生もよく学ぶよう伝えている。手元の書類に何かを書き込んで、ブレア先生は的のほうへ向かう。シャーロット先生と言葉を交わした後、的を地面に刺し直してから土属性の生徒たちと一緒にこちらへ帰ってきた。
「待たせたね、風属性」
「ようやく俺の番だ」
竜巻起こしてやる、なんて言いながらウィードが向かっていったが、そんなん起こされたらたまらない。実際そうなりそうだったらどうするか、なんて考えていたけど予想通りというかあっちからしたら期待外れだったんだろうけど竜巻なんて起きなかった。俺の髪を揺らすくらいが精々の、そよ風。
納得してなさそうなウィードの顔が面白くて、演習場に着いた時にやられたように軽く肩を叩いたらお前は的に当てたからいいよな、なんて文句を言われてしまった。




