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どうやら俺が乙女ゲームのヒロインらしい  作者: 柚みつ
本編

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魔法実習始めました

 演習場には、すでに木の的が用意されていた。実はあれも魔法省管理の物だったりする。簡単に壊れないよう強化魔法をかけているだけだけど、壊れるとこちらで感知できるようになってるから修復の手間も省ける。

 数十個あるうちの一つだけ師匠が面白がって全力で強化かけたやつは代々、これを壊せたら即魔法省に入れる、と力試し的な扱いをされていると聞いたことがある。今のところ壊したって聞いたことないけどな。


「各属性ごと、順番に経験してもらうよ。他の人の魔法を見るのも勉強だからね。

 ここからは他の先生にもサポートでついてもらうから、分からないことがあればその場で確認すること」


 ブレア先生の横に並んだのは、装飾が少ない分、上等な布地で作られたことが分かるワンピースを纏い、艶のある金髪をお団子にしてふんわり笑う女性。


「シャーロット・エリンズよ。魔法実習の補助が中心だから初めましてかしら。これからよろしくね。

 それじゃ、早速だけど始めましょうか」

「まずは火属性、それから水、風、土」

「ブレア先生、光と闇はいるのかしら?」


 軽く首を傾げながら問いかけるシャーロット先生に、ああ、と生徒に目線を送る。ウィードが隣にいるからか俺にも見えたその瞳は一瞬だけ、違う色を宿していた。


「まだこれからですが、二人ほど」

「あら、素晴らしいことですね。では光は最後に(わたくし)から」


 シャーロット先生に向き合った時にはもう、いつもと同じ。だというのにあの一瞬の色が、妙に頭に残る。

 あの瞳は、見たことがある。

 あれは、いつだったか。そう確か――


「ディオ、お前の番だって!」

「あ、ああ悪い」


 ウィードの声に、いったん考えていたことを頭の隅に追いやる。もう少しで思い出せそうだったんだけど、今はこっちをどうやるか考えないと。


「ディオ君は二つの属性を感じたけど、火のほうが濃く見えたからね。メインはこっちでいこう」

「分かりました」

「水晶に魔力かざした時のように掌に魔力を集めて」


 ブレア先生の指示通りに魔力を掌に集める。ほぼ無意識だったとはいえ、水晶の時には思いっきり不安定な放出の仕方をしたが、今回はどうするか。

 チラリ、と指示を仰ぐような形で見つめてみたが、さっきの瞳が嘘だったと思うくらいに今までと変わらない表情をしている。


「そう、それをボールを投げるようなイメージで的に向けるんだ」


 とりあえず、説明されたとおりに投げようと的を見た。今考えても答えが出ないなら後回しだ。

 距離はだいたい五メートルってところ。もちろん、普通の的なら当てるわけにはいかないんだけど。

 目の前にあるの、師匠が全力込めた的なんだよな。あれならこのまま当てたところで壊れるどころか焦げ目すらつかないだろ。

 握りこぶしくらいの大きさで火球を作り、それを軽く放り投げる。ボールのようなスピードではないけど的にたどり着いた炎は、そのまま的を揺らすこともなく消える。


「一回で的に当てるなんてすごいじゃないですか」

「え、ありがとうございます」

「あとは魔力の扱いを安定させることだね」


 一瞬ヒヤリとしたが、先生たちは特に気に留めることなく次に進んでいく。一発で当てたとはいえ、的を倒すこともなかったからクラスの注目もそこまでではない。水晶の時のことで若干遠巻きにしていたのもいたがそろそろと戻ってきていた。

 この辺の加減はもう少し考えておかないとな。ブレア先生にも礼を言って待機場所へと戻ろうとしたときに、わずかに動いた口元が目に入った。


 今、何かを呟いていた?



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