実習開始
「では、皆が待ちに待っていた実習を始めるよ」
入学してから一か月とちょっと。その話を聞いてからずっとソワソワしていたクラスに緊張感が走る。
「魔法学園を名乗っているのに、魔法の実習がなかったことに疑問を持っていた人もいるだろう。
魔法は、使い方次第で善にも悪にもなる。それを知ってもらうためにたくさん学んでもらったんだ」
そこで一区切りして、集まった生徒の顔を見渡した教師は満足そうに微笑んだ。
陽科は庶民の出や貴族だとしても自分の力で身を立てていかなければならない立場の奴がほとんど。程度の差はあれ、魔法が使えることが当たり前のこの国でも、より高位の魔法を使えるならそれは自身のステータスになる。
それが分かっているからこそ、ようやく始まるこの実習には期待をしているんだろう。
「その前に、魔法の属性についておさらいしようか。
君、属性は全部でどれだけだっけ?」
「はい、火、水、風、土、光、闇の六種類です」
突然振られたのに、詰まる事なくさらさらと出てきた答えにうん、と頷く教師に他の生徒から手が上がった。
「ブレアせんせーい、毎回それ確認してるじゃないですかー?」
「そうだね。これでもう君たちは属性のことを忘れないだろう?」
背中で緩くまとめられたこげ茶色の髪を揺らしながら、冗談っぽく告げられたブレア先生の言葉に笑いが起きる。どれだけ緊張するな、と言っても肩に力が入っている生徒もいただろうに、あえていつもと同じように行われた確認に、だいぶ空気が軽くなった。
「私は、普段の君たちの能力を知りたいんだよ。さて、それじゃあ呼ばれた人から前に来て」
最初に呼ばれた令嬢は、再び緊張してきたのかどこかぎこちない動きで前に出る。
ブレア先生が机の上に置いた水晶を指さして、皆にも聞こえるよう少し大きめの声で説明する。
「この水晶に魔力をかざすと、属性に応じて色を変えるんだ。火属性なら赤、といった感じにね。
まずは属性を見て、それから魔力の測定をするけど、自分の属性を知っている人も改めて水晶を使ってほしい」
あの水晶、魔法省にも同じものがあって俺とユリエスは使ったことがある。師匠に預けられて最初にしたことが何の説明もなく水晶を渡されることだった。
時々、貴族が小さい子を連れてきたこともあったので使ったことある奴もいるんだろうな。
とはいえ、そう何度も使えるものじゃないから、その時と同じ結果とは限らない。そのあと訓練してたら数値は上がってるだろうしな。
「大丈夫だよ、初めから上手にやろうとかは考えなくていい」
さ、と優しく促されて水晶に伸ばした手が触れるか触れないかのタイミングで溢れる赤い光。
これはどう考えても間違いないな。
「うん、アンナ嬢は火属性。それも磨けば伸びるものを持ってる」
先生が書類に書き込みが終わったら次が呼ばれる。名簿順だと俺、結構前のほうなんだよな。
他の生徒を見て参考にしようと思ってたのに、それほど様子見をする時間もない。
こうなったら特別弱くして、属性もアンナ嬢と同じにしておくか。違うの見せるより同じやつのほうが印象薄いだろ。
「えっと、これはどうしたもんかな」
「え?」
なんて考えながら手をかざしたからか、赤と緑で点滅する光が、ごくわずかに見える程度からとっさに目をつぶってしまうほど眩しい光をいったりきたり。
「自分の魔力のコントロールが苦手なんだっけ。それならこれもありえなくはない、かな」
とりあえず、属性は火にしておくね、と苦笑交じりの先生にちょっと頭を下げてクラスのほうに戻る。
「なんだ、ディオにも苦手なもんがあるんだな」
いしし、と笑うウィードに無言で抗議の腹パンチを入れて座り込む。隣で大げさに痛がってるウィードは、風とちょっとだけ光も属性を感じたそうだ。
それにしてもあの水晶、魔法省のと違うような気がするんだよな。
あとでユリエスに確認しないと。
ストック尽きたので、次の更新にはちょっと時間をいただくかもしれません。
衣替えしていたら休みが終わってしまった……




