意外な特技
「なあ、ユリエスまた囲まれてるけど」
「……お前が助けに行くか?」
「冗談言うなよ、誰が好き好んで貴族の中に行くかって」
食堂で第一王子と出会ってから、見慣れてしまったユリエスに集まる人だかり。
月科での挨拶はどうだったのか知らないが、学園に通ってるユリエス、じゃなくてラングート侯爵家の次男として見る目が確実に増えた。
とはいっても顔つなぎを望んだり、その権力にすり寄ろうとする奴なんかがほとんどだから、ユリエスもうまいこと捌いているようだ。
家に必要な人脈だったら兄貴のほうが上手く繋いでいるだろう、っていうのもあるけどな。
「お疲れさん」
「ああ、ありがとう」
これくらいの量で足りるか? と小さく問いかけたが、軽く頷いただけで返された。疲れたように軽く息を吐いて、チキンサンドを食べ始める。
まあここんとこ毎日のように昼休憩は誰かしらに声かけられてるからな。ウィードも分かっているようで、部屋に来る間隔が明らかに伸びた。
「そういやさ、最近噂になってるアレ。先生たちが調査するらしいぜ」
「アレ?」
「ん? 聞いたことない?」
ユリエスは首を傾げたが、ウィードは気にすることなく続きを口にする。
「閉門時間が近くなると実習棟のほうからうめき声が聞こえる、ってやつ」
「何かを聞き間違えたとかじゃなくて?」
「違う日も別の人が聞いてるってのが何件か続いてるって」
前にスカーレットから聞いていたのと同じ噂だし、教師たちが噂を確認するっていうのも聞いていた通りだ。
原因が分からずとも調査をした、という実績は作らないと生徒たちにここまで広がった噂を収集つけられないんだろう。
「それで、今日から一週間やるんだって」
「今日から? ちょっと急だね」
「さっき決まったらしいから」
「ウィード、何でそれ知ってんだ」
午前の授業が終わってすぐに食堂に来たのに、教師たちの間でついさっき決まったことをどうしてウィードが知ってるのか。
「ここに来る前に先生の手伝いしたら教えてくれた」
「手伝いってもたいしたことしてなかったろ」
午前終わりの授業で出された課題をまとめていたのは確かにウィードだが、手伝いと言えるのかどうか、な程度。五分もかからずに終わらせていたからな。
「分かってないな、ディオ。他のところでも地味にポイント稼いでるんだよ」
「ポイントって……」
「何の見返りもなく手に入る情報なんて役に立たないっての」
ふふん、と胸を張るウィードにそんなもんか、と思い返す。そういや授業終わりに教師に話しかけに行く姿もよく見ていたな。あれもポイント稼ぎの一環ってわけだ。
「課題だってただ並べただけじゃなくて、名前順にしてるからな」
「ああ、それは助かるね」
チキンサンドを食べ終えて一息ついたユリエスが、納得したように頷いた。
「そんな事だから、なんかあれば俺に聞いてくれよ」
その代わり、月科のことも教えてくれよと笑うウィードにちゃっかりしてるな、とユリエスも笑ったがこれはもしかしていいこと聞いたんじゃないか。




