↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『底辺配信者の妹を撮る俺、画角外でSランクボスをワンパンして世界をバズらせる』  作者: チラミン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/17

#8『灰燼の大空洞』の最奥は、巨大な溶岩湖だった。1

『灰燼の大空洞』の最奥は、巨大な溶岩湖だった。


 足場の岩棚から先は赤い光の海で、熱気が肌を刺す。三十メートル前方で、レイナが細剣を抜いた。銀白色の刃が、溶岩の照り返しを青く弾く。


 「配信、開始しまーす! 本日は特別中継、ギルド公式のSランク討伐です!」


 アマネが震える声でカメラに告げる。モニタの同接は十二万を超えていた。これまでの最高記録の百倍だ。


 『アーちゃん、緊張してて草』

 『Sランク配信とか初めて見る』

 『ドローンの映像、いつもよりさらに綺麗』

 『柊レイナ様ぁぁぁ』


 俺は荷物袋を担ぎ、シュエットの影に立つ。今日の方針は決まっている。裏方に徹し、必要なとき以外は、何もしない。


 「来るわ」


 レイナの低い声と同時に、湖面が爆ぜた。


 溶岩の飛沫を撒き散らして現れたのは、赤黒い鱗に覆われた飛竜だった。翼を広げれば二十メートルはある。ヴォルケイノ・ドレイク。懐かしい顔だ。


 『グォォォォォッ!』


 咆哮が空洞を揺らす。アマネが肩を跳ねさせ、カサネの結界の光が一瞬ちらついた。


 *


 レイナの動きは、噂以上だった。


 最小限のステップで、ドレイクの爪の軌道を紙一重でかわす。左手で結界を展開しつつ、右の細剣が、一点だけを狙って突き出された。


 切っ先から、極細の青い光が奔る。


 鱗を貫く。……はずだった。


 光は鱗の表面で弾け、焦げ跡を残しただけだった。


 「圧縮率を上げても、通らない。この個体の鱗は、通常種の倍以上の密度ね」


 レイナが小さく舌打ちする。表情は変わらないが、足運びがわずかに速くなった。


 ドレイクが首を持ち上げ、喉の奥が赤く光る。熱線の予備動作だ。向きは、レイナではなかった。


 その後方、三十メートル先。


 「結界、二重展開! 急いで!」


 カサネが叫ぶ。一枚目が張られ、二枚目が重なる寸前で、ドレイクの熱線が放たれた。


 轟音。


 一枚目の結界が、紙のように溶けた。二枚目は成立しないまま、カサネが膝をつく。魔力が尽きたのだ。


 「カサネ!」


 アマネが妹を庇って前に出る。その前に、レイナが滑り込んだ。左手の結界を全力で展開し、熱線を真正面から受け止める。


 「撤退しなさい! 今すぐ!」


 初めて聞いた、焦りを含んだ声だった。結界に走る亀裂が、みるみる広がっていく。


 「でも、レイナさんが!」


 「行きなさい! これは命令よ!」


 レイナの背中は小さく見えた。いつも冷静なはずの彼女の足が、かすかに震えている。


 アマネが歯を食いしばった。


 「……やだ」


 「え?」


 「やだ! 私だって、自分で、強くなるって決めたんだ!」


 アマネは大剣を握り直し、結界の外へ飛び出した。


 「アマネ!?」


 カサネの悲鳴が上がる。ルール違反だ。だが、その無鉄砲さに、俺は不覚にも口元が緩んだ。成長したな、とは思う。ただ、状況が悪い。


 大剣がドレイクの脚に叩き込まれる。鱗に弾かれ、火花が散った。硬すぎる。アマネの体が、衝撃で後ろに吹き飛ぶ。


 ドレイクの首が、ゆっくりとアマネに向いた。喉の奥が、再び赤く光る。


 ――これは、まずい。


 結界を張るレイナは、動けない。カサネは魔力切れで座り込んでいる。アマネの前には、熱線の砲口がある。


 俺は、息を一つ吐いた。


 「……まあ、これくらいなら気づかれないだろ」


 指先が、動く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。