#5「奇妙な違和感」2
夕方。ギルドから帰る途中、俺は妙な感覚に襲われていた。
背中のあたりに、何かが貼りつくような違和感。誰かに見られているような、そうでないような。
「シュエット」
『はい、主様』
「お前、今日一日、周囲に何か変なものは感じなかったか」
『ギルド周辺に、観測者が複数。ですが、いずれも主様の存在には気づいておりません。ただ……』
「ただ?」
『一人だけ、こちらを見ていた者がいたような気がいたします。距離は約二キロ。魔力の質は高く、慎重で』
「気のせいだろ。浅い階層の人気配信者なんて、いつも誰かに見られてるもんだ」
『……主様は、いつもそうおっしゃいます』
言い返す前に、前を歩いていたアマネが勢いよく振り返った。
「お兄ちゃん! 今ギルドから連絡来た! 私たち宛てに、指名依頼だって!」
「指名依頼?」
「しかも大型の討伐依頼! 内容はまだ非公開だけど、ギルド本部直々だよ! どうしよう、私たち、ついにここまで来ちゃった!」
カサネがスマホの画面を覗き込む。文面を読む目が、わずかに見開かれた。
「……依頼ランク、S」
「え」
三人の足が、同時に止まった。
「お兄ちゃんは一般人だから分からないかもしれないけど、Sって、本当にすごいランクなんだよ」
「ああ、知ってる」
俺は空を見上げた。夕焼けが、やけに赤い。
肩の上で、シュエットが小さく電子音を鳴らした。
『主様の平穏な日々に、ご不便が生じなければよいのですが』
「大丈夫だろ。Sランクのボスなんて、どうせ野良犬だ」
『……それが問題なのです』
その呟きは、風に紛れて消えた。




