第十七話 マリンチェ
内陸に入った。
海が消えた。代わりに山が来た。空気が変わった。乾いて、薄くなった。白い肌の連中が息を切らしている。鉄の服は暑い上に重い。坂を上ると、倍の速さで疲れる。
馬が何頭か倒れた。
立てなくなった馬を、男たちが引き起こそうとしている。起きない。横腹が大きく動いている。息だけしている。
置いていった。
コルテスはその馬を振り返らなかった。
この男は使えなくなったものに興味を失うのが速い。覚えておくことにした。
トラスカラの兵が現れたのは、谷に入った時だ。
多い。
斜面を埋めるように並んでいる。旗が見える。白い鷺の旗だ。
数えた。数えきれなかった。千はいる。もっといるかもしれない。
白い肌の連中は五百人ほどだ。
コルテスが立ち止まった。笑わなかった。この男が笑わないのは珍しい。
戦になった。
わたしは後方にいた。声が届く距離にいなければならないが、矢が届く距離にいてはならない。この位置を覚えるのに、半日で足りた。
煙の棒が吠えた。馬が突っ込んだ。
トラスカラの兵は怯まなかった。
煙の棒に何人か倒れても、別の者が前に出てくる。馬に蹴散らされても、立ち上がって掴みかかる。
この連中は、マヤとは違う。
ポトンチャンの戦士たちは煙と馬に怯んだ。トラスカラは怯まない。戦い慣れている。戦を知っている人間の動き方をしている。
三日続いた。
四日目の夜、コルテスの天幕に呼ばれた。
アギラールと二人で入った。
コルテスの顔が削れていた。三日で、頬の肉が落ちている。
「あの連中は、何者だ」
わたしに聞いた。アギラールを飛ばして、わたしに。
いつからか、コルテスはわたしの顔を見て話すようになっていた。アギラールの変換を待たずに、わたしの目を見る。わたしが分かっていることを、この男は知っている。
「トラスカラです。メシーカと長く戦っている人たちです」
アギラールに訳させた。だがコルテスはわたしの声を聞きながら、もう考え始めている。
「メシーカと。モクテスマと」
「はい。モクテスマに貢ぎ物を出せと言われて、出さないでいる。囲まれている。塩が入ってこない。布が入ってこない。長い間そうです」
コルテスの目が動いた。
あの目だ。金を見た時の目ではない。金の出どころを見た時の目。
「恨んでいるのか」
「恨むどころではありません。殺し合っています」
コルテスは黙った。
しばらくして言った。
「使いを出せるか」
出せる。
わたしがナワトルを話せるから出せる。トラスカラの連中はナワトルが分かる。マヤでは通じないが、ナワトルなら通じる。
翌朝、捕虜を一人返した。
わたしが言葉を持たせた。
「白い肌の者たちは、あなたたちの敵ではない。あなたたちの敵の、敵だ」
敵の敵。
この言い回しを選んだのは、わたしだ。
コルテスが言ったのは「我々は友人になりたい」だった。アギラールがそれをマヤにした。わたしはマヤを聞いた。
「友人」では通じない。
トラスカラの連中は、三日間殺し合った相手を友人とは呼ばない。
だが「敵の敵」なら分かる。
敵の敵は、味方ではない。だが一緒に戦う理由にはなる。
——わたしは、ここで初めて、形を変えた。
コルテスが言ったことを、そのまま渡さなかった。
意味は同じだ。あなたたちと戦いたくない。一緒にモクテスマを倒したい。
だが、器が違う。「友人」と「敵の敵」では、受け取る側の顔が違う。
わたしはそれを選んだ。
選んだことを、誰にも言わなかった。
二日後、トラスカラの長老たちが来た。
四人。白い髪の男たちだ。
天幕に入ってきた時の顔を、わたしは見ていた。
怒っている。だが、怒りの下に別のものがある。
期待だ。
この連中は、モクテスマを倒したい。自分たちだけでは倒せないことを知っている。何十年も囲まれてきた。塩がない。綿がない。子供が海を見たことがない。
白い肌の連中と組めば、何かが変わるかもしれない。
三日間殺し合った相手と、そういう話をしに来ている。
わたしは訳した。
コルテスの言葉をナワトルに変えた。長老たちの答えをマヤに変えた。
長老の一人が、長く話した。
モクテスマの話だ。どれだけ搾り取られてきたか。花の戦で何人殺されたか。祭りのたびに人を差し出せと言われること。息子を、娘を。
わたしはそれを訳した。
訳しながら、分かっていた。
これは、白い肌の連中がメシーカを滅ぼす話ではない。
メシーカに恨みを持つ者たちが、白い肌の連中を使う話だ。
そして白い肌の連中が、恨みを持つ者たちを使う話だ。
使い合っている。
どちらが使っているのか、今の時点では分からない。
分かっているのは一つだけだ。
その間に立っているのが、わたしだということ。
長老たちが帰った後、コルテスがわたしを見た。
「お前が何を言ったか、俺には分からない」
アギラールがマヤに変えた。わたしは聞いた。
「分からないが、あの連中の顔が変わった。お前が話し始めてから変わった」
わたしは答えなかった。
コルテスは待った。
待ってから、笑った。
「いい。お前の言葉を信じる」
信じる、とこの男は言った。
信じているのではない。使えると判断しただけだ。
わたしも同じだ。この男を信じてはいない。使えると判断しているだけだ。
——三日後、トラスカラの兵が合流した。
数を数えた。
五百だった白い肌の連中の後ろに、六千のトラスカラ兵が並んでいる。
六千。
一つの言い回しで、六千人が動いた。
煙の棒でも、馬でも、鉄の服でもない。
言葉だ。
わたしの言葉が、六千人をここに連れてきた。
トラスカラの兵たちは、わたしをマリンツィンと呼んだ。マリーナにナワトルの敬称をつけたものだ。白い肌の連中はその音を聞き取れず、マリンチェと言う。
コルテスに用がある者は、まずわたしを探す。「マリンチェはどこだ」と聞く。いつの間にか、コルテス自身がマリンチェの男と呼ばれるようになった。
四つ目の名前だ。今度は、わたしが選んだのではない。六千人がつけた名だ。
怖いとは思わなかった。
怖いと思う前に、次の仕事が来た。




