第十三話 声
報せは、遅れてやってくる。
あの十一隻が西へ行ったことは知っていた。その後のことは、交易の人間が少しずつ運んでくる。噂だ。尾鰭がついている。だが骨の部分は、たぶん本当だ。
最初の報せ。
白い肌の連中が、海沿いの町で戦った。負けた町もある。勝った町もある。トラスカラという大きな町が勝った。勝ったのに、なぜか白い肌の連中と手を組んだ。
俺は、その話を聞いて黙った。
分かる。分かるのだ。
トラスカラは、もっと大きな相手に押さえつけられていた。白い肌の連中は、その恨みの側に入った。
ダリエンと同じだ。
バルボアがやったことと同じだ。こっちの揉め事に入り込んで、片方につく。そうすれば百人で千人を動かせる。
二番目の報せ。
白い肌の長は、大きな国の王に会った。水の上に都を造った国だそうだ。橋と市場と動物園がある。金がある。
金があった。
三番目の報せ。
都で戦が起きた。白い肌の連中は一度追い出された。大勢死んだ。だが戻ってきた。もっと多くの兵を連れて戻ってきた。
そしてこの報せには、もう一つ、別のことがついていた。
白い肌の長の隣に、二人の声がいる。
一人は女だ。この土地の女で、二つの言葉を話す。
もう一人は男だ。白い肌の男で、この土地の言葉を話す。
女が向こうの言葉をこちらの言葉に変えて、男がこちらの言葉を白い肌の言葉に変える。二つの声が繋がって、白い肌の長は誰とでも話せる。
俺はその報せを聞いて、外に出た。
海を見に行った。
——アギラール。
お前か。
お前が声になったのか。
あの檻の中で日を数えていた男。腐った木を見つけた男。字を読んでくれた男。緑の珠を置いていった男。
お前はこの土地の言葉を覚えていないと、俺は思っていた。覚える気がないのだと。
違った。覚えていた。
覚えていて、使わなかっただけだ。使う日を、八年間待っていたのだ。
——俺は座り込んだ。
笑えなかった。泣けなかった。
あの男は、俺と同じことをしている。
俺は海を読んで、ナチャン・カンの戦を勝たせた。
あいつは言葉を読んで、コルテスの戦を勝たせている。
同じだ。
同じ檻にいた二人が、同じことを、反対の側でやっている。
四番目の報せ。
都が落ちた。
水の都は焼かれた。王は捕まった。金は全部持っていかれた。
それから、病が来た。
顔に痘ができて、人が死ぬ。村が一つ消える。二つ消える。
——聞いたことのある話だ。
エスパニョーラ島の話だ。
飯を食いながら聞いた話だ。
あの話が、ここまで来た。
俺はナチャン・カンの部屋に行った。
「次は、ここに来る」
ナチャン・カンは老いていた。あの頃より、ずいぶん老いた。俺も老いた。
「お前はいつもそう言う」
「いつも本当だっただろう」
ナチャン・カンは笑った。
「お前が来た日のことを覚えているか。裸で、白くて、骨しかなかった」
覚えている。
「あの時は、お前が一人だったから怖くなかった。何人来ても、お前みたいなものだろうと思った」
俺みたいなものだ。乾パンの虫を叩いて、靴の革を煮て、隣の奴の死体を——。
「同じだ。あいつらも、俺と同じだ。だから怖い」
ナチャン・カンは黙った。
それから、うなずいた。
帰り道、サシル・ハーが待っていた。
「何を話した」
「戦の話だ」
「嘘だ。あなたは戦の話をする時、そういう顔をしない」
この女には嘘がつけない。
「西の大きな国が滅んだ。次は俺たちの番かもしれない」
サシル・ハーは、少し考えてから言った。
「あなたの兄弟が手伝ったのか」
俺は答えなかった。
答えなかったのは、答えが「はい」だからだ。
子が走ってきた。上の子だ。もう五つになる。よく走る。
「父さん、海に何かいた」
何もいない、と言おうとした。
だが今日は言えなかった。
「何が見えた」
「白いもの。遠くに」
雲だろう。雲だと思う。
雲であってほしいと思った。
——俺は結局、ここにいることしかできない。
渡さなかった。何も渡さなかった。
だが、渡さなかった俺の隣にいた男が、全部を渡した。
同じ檻の中にいた。同じ木を引き抜いて逃げた。同じ森を走った。
あいつが渡したものを、俺は止められなかった。
止められなかったことを、これからずっと、この浜で見ている。




