5話 空の騎士(2)
『流星の荒野に 1人 彷徨う人よ
大丈夫と囁く 声 心のままに
見上げる 夜空
星々の輝きを 今見つめ続ければ
光の道へ 辿り着く』
優しい女の人の声を聴きながら、あたしは心地良さを感じる。そうして、やがて眠りへと落ちていくんだ。
ぼんやりとした意識。朝日の光を認識して、ようやく目が覚める幼いあたし。
隣りを見れば、聖くんが起きていて。本を開いて、ダブルベッドの上部に寄りかかっていた。
あたしは目を擦りながら身体を起こす。そうすれば聖くんが本から視線を外してあたしを見る。そして問いかける。
「よく寝られた?」
あたしはその言葉に頷いて。
「――良かった」
そう聖くんは安堵したように口にする。
「昨日は色々あったし、少し心配してた」
「……心配、ですか?」
あたしは聖くんの言葉に、そう訊き返す。そしたら、聖くんは頷いた。
「そう。昨日はビックリさせたでしょ。ここが人間の世界だって知らなかったんだし。それに、俺が判断ミスしたせいで透琉にキツいことも言われたし」
――だから、あんたの心の方とか心配してたんだけど。と聖くんは話す。
「……だいじょうぶです」
そう答えれば、無理してない? と聖くん。
「……」
沈黙してあたしは俯く。聖くんがそんなあたしを見て、無理、してるよね……と零す。
「――満瑠にはあったのか? まあ透琉とセットはさけた方がいいけどな」
その唐突な声に、あたしと聖くんは声を発した人物、レイちゃんの方に視線を向けた。寝癖のついたレイちゃんが、あくびをしながら上半身を起こしていて。
「満瑠なら昨日会わせた。そのせいで透琉にキツいこと言われたけど」
「あいつはしっての通り子どもが得意じゃないからな。姿が若いだけの意固地な仙人だろ」
聖くんが答えると、透くんに容赦のない言いようをするレイちゃん。
「会わせたの後悔してるトコに余計な言い方しないでくれる」
聖くんが眉を寄せた顔でそう反応する。
「怒るなよ。柚葉にあってないなら、あった後に遠出でもして来ればいいだろ。混沌世界がどんな世界かはおまえに聞いたくらいだけど、人間の世界にも楽しいトコはあるだろ」
……。と何を考えているのかレイちゃんの言葉に黙る聖くん。
「たのしいとこ、ですか?」
あたしがレイちゃんの言葉にそう口すれば、レイちゃんはあたしを見て答える。
「大きなアスレチックとかな。あとは大きな植物園とか、アメリアくらいの歳なら画材を買いに行って絵を描いてもいいんじゃないのか? 本屋で絵本を探してもいいだろうしな」
そう言うとレイちゃんは聖くんに向き直る。
「いくら魔族でも、子どもなら楽しみは無限だぞ。気分転換が大事なんじゃないのか?」
自分でどうしたらいいのか考えてたのに、おれに言われるのは不服って顔だな。と聖くんの眉間にシワを寄せた表情を見てレイちゃんは言った。
「まあいいわ。起きたらまずは顔洗ってうがいして朝飯だろ? な、アメリアは朝は何が食べたい?」
「ごはんですか? あまいたまごやきがすきです」
「だってさ」
あたしが卵焼きが好きだと答えると、レイちゃんは聖くんを見てそう言った。
「じゃ、また夜な」
ご飯を食べて少しゆっくりした後、支度をして玄関を出たあたしと聖くん、そしてレイちゃんはお城に着いた。その後はレイちゃんと別れることになる。あたしはレイちゃんを見上げて訊ねる。
「レイちゃんは、どこにいくんですか?」
「おれは城内の見回りだな」
「みまわり? ですか?」
「悪いヤツが城に来ないように見てる仕事ってわけだな」
「おしごとなんですか?」
そう。と答えると、じゃ、またなアメリア。と行ってレイちゃんは歩いて行く。
「服とか絵を描く道具を買いに行く前に、柚葉に会いに行くよ」
「だれなんですか?」
「世界で1番の魔導士だよ」
「まどうし?」
「魔法使いのこと」
そう聖くんが説明してくれる。あたしは歩き始めた聖くんの後をついて行く。 城壁の中、城の周りの庭園をあたしと聖くんは歩いた。石畳の上を、幼いあたしは小さな歩幅でてくてくと。
「佐倉様、おはようございます」
「……」
途中、城兵に出会うと聖くんは挨拶をされる。でも、聖くんは反応もせずにそのまま進もうとして。あたしはというと、人間にまだ慣れていないために、聖くんの後ろに隠れていた。
「ん? 佐倉様、その子は?」
あたしに気づいた城兵が訊ねる。
「光輝に許可もらってるから」
そう言い残して聖くんは進む。そして、城兵に出会いながら進んでいくあたしと聖くん。
聖くんについて行くあたしに対しての何度目かの同じ質問が終わった後、1人の城兵のおじさんが「アメ食べる?」と小袋に入ったアメを差し出す。
「え、えっと……」
あたしは戸惑う声を漏らして聖くんを見上げた。
先行で更新してるサイト用で、1年ぶりにストックができました。そのため、更新することができました。
お先に、光シリーズ外伝の愛情オリジンが、更新再開しています。
本編である「光と共に」の更新の目処がずーっと立たず、いつになるかと心配して焦っていましたが、ゆるゆると更新再開していけそうです。
長い年月をかけてのお付き合いだとしても、このシリーズを見守って頂けるのであれば、とても幸せです。
今後とも、よろしくお願いいたします。




