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使えないスキル

暫くアーテの後を裸でついて行くと扉が見えた。

アーテは扉を開け、俺を中へ誘った。

部屋は然程広くなくロッカーと机、椅子があるだけ。

机の上には何冊かの本が置かれ、椅子には大きめの紙袋が置いてある。


アーテは「これこれ」と言って椅子の上にある紙袋を取る。

「士郎さん、これに着替えてください。一式入ってるはずですから」


アーテは左手で自身の目を隠しながら右手で袋を渡す。


中には真っ黒な長袖の表着と黒いジーパン、そして同色の下着、そして黒いブーツに黒いフード付きのマントが入っている。それと金属製のカード。


カードのことは後回しにし、そそくさと服を着る。


言わなくてもわかるが全身黒づくめだ。

なんか悪役ぽいな。


「着替え終わりましたね。どれどれ、似合ってるじゃないですか。できれば青色のジャケットにしたかったんですが、異世界感が無くなるので泣く泣く諦めました……」


青ジャケって⁉︎

色々突っ込みたい気持ちをグッと抑え込む。


「まず、その金属製のカードについて説明します。それは異世界での身分証です。スパイ映画ではお約束のヤツです。偽造ですよ偽造!」


『そんな自慢気に偽造って言われると逆に不安になるだろう。本当に使えるんだろうな……』


そんな偽造と言われるカードを見ると、領主の名前と冒険者ギルド長名、それとリオン・パシアスという冒険者名と年齢18歳、そして冒険者ランク『B』と記載されている。

裏面には盾の上に剣と杖が交差したシンボルが描かれている。


しかし、どこの国の言葉とも分からない文字なのに不思議とスラスラ読めてしまう。

これも何かの力なのだろう。


色々細かくアーテに聞いてみよう。


「カードのことで色々聞きたいことはあると思いますが、実際に異世界に行けばわかることなので省略しますね。あと異世界ではリオンと名乗ってください」


アーテに先手を打たれ、俺は開きかけた口を閉じた。


「次は、その身体について説明しますね。士郎さんには異世界人でも驚くくらいの魔力を与えてます」


「おぉぉ、それなら魔法を使えると言うことか⁉︎」


「それがですね、【身体強化】と【超回復】という技術スキルに魔力の九割以上を持って行かれているので、初級魔法程度であれば一日五回くらいなら使えると思いますよ」


「それって非常に微妙だな。どうせ異世界に行くなら現世で出来なかった技術を使いたいじゃないか……」


「残念ですが諦めてください。ちなみに【身体強化】は人間離れした力や硬度、運動能力が手に入ります。それに鍛錬するとさらに強化されますから頑張ってくださいね。あと【超回復】は怪我が直ぐに治ります。でも毒とか麻痺などの状態異常は治らないので注意してくださいね。あともう一つあります。それが【超会得術】です。一応、一度見るとコツが掴め、それを実践すると物に出来る……らしいです」


「最後のスキルは微妙な言い回しだな。不安なんだけど」


「使う人の得手不得手も影響するので一回で覚えない場合もあるということです」


「微妙だな。微妙といえば状態異常を回復できない【超回復】もどうかと思うんだが」


「そこまではスキルにないんですよ。すべての状態異常を無効にできるのは神器くらいですよ」


「そうなのか。それは異世界にないのか?」


「ないですね。でもここだけの話、アタシの付けてる腕輪がその神器の一つなんですよ」

彼女は力こぶでも作るような姿勢で腕輪を見せる。


「アーテって只者じゃないんだな!はじめて尊敬できた」


「ちょっと酷くないですか⁉︎装備品一つで尊敬するとか!アタシはこんな神器が無くても尊いんですよ」


『尊い』とか言っているアーテを無視して、盗賊技術のことを聞く。


「で、これからどうすればいんだ。スキルが凄いのはわかったけど、盗みのスキルとか覚えているのか?」


「ふっふっふ。アタシに任せなさい。アタシが士郎さんに盗みのテクを教えるんですよ!」


「アーテに出来るの⁉︎仕事できなさそうなのに!」


「今のはちょっと看過できないですよ!今から凄いの見せてあげますから、その時に泣いて謝ってもらいますからね!」

そう言って、入ってきた扉に鍵を占め、鍵を俺に放り投げた。


「扉の鍵よ、預かっててください。この二本の金属の棒で今閉めた扉を見事開けますから!

ちゃんと見てるんですよ」


おぉ、定番のやつじゃないか!

これが出来ると、グッと泥棒感が出る。


アーテは二本の細い棒を何度もグリグリと鍵穴に入れ回している。


「あれ……、おかしいな⁉︎昨日見たときは簡単に出来そうだったんですけど……」


「アーテ、本当にできるのか?」


「出来るはずです。昨日見たテレビで猿ぽい人がやってたんですよ!それに机の上にある本でも勉強しましたから問題ないはずです」


アーテさんそれ以上は言わないでください。青ジャケとか猿ぽいとか!


「おかしいな。こうやるはずなんですけど」と言いながらアーテは細い棒を回す。


時間のかかりそうなアーテを見て、暇つぶしに俺は机にある本を手に取る。


【赤猿が教える泥棒技術 PARTⅢ】という題名の本だ。

この本なら効果的面だろう。



なになに……、ふむふむ。おぉぉぉ!



鍵開けとスリ、金庫破りの方法を熟読した。



本を熟読してから10分が経過したが、アーテはまだ扉を開けられない。


暇なのでさらに別な本を読む。


題名は【THE 影の集団】



ほうほう……、スナップが大事か。おぉぉぉ!


忍びの極意を熟読した。

それから何冊か熟読し時間が経過した。

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