アトラクションDeath
話を切られたのが不満なのかアーテは不機嫌な顔になる。
「質問は最後にしてほしいんですけど、わかりましたね」
「わかった約束しよう……」
このままだと話が進まないしアパートに帰ることもできないだろう。
その前に部屋はどうなってんだろうか⁉︎
彼女は「うんうん」と頷くと話を続けた。
「それで上の部屋の床を落下させて圧死させようとしたんですけど床が落下する前に、士郎さんのベッドの上に本棚が倒れて覆い被さる形になって、それが壁となって圧死を免れたんですよ」
「やっぱり殺す気だったのかぁぁぁぁ‼︎」
「ちょっと約束したじゃないですか!質問は最後だと!」
彼女は生徒を叱る先生の様に怒る。
「普通止めるでしょ!殺されかけた話されてんですよ!それも殺人鬼から!」
「大丈夫ですよ。最後まで聞いてもらえればわかりますから!」
アーテは無い胸を張って自信満々に言う。
『そこまで言うのなら、最初は殺意があったが心変わりしやめたパターンなのかもな』
「わかった。すまなかった。今度こそ最後まで聞く」
「わかればよろしいです。それで、その地震のせいで士郎さんの部屋の壁も壊れて床も傾き、それでベッドが部屋から飛び出したんですよ。そしたらベッドがですねソリの様に坂を滑って行っちゃいまして……」
「ほうほう」と俺は頷く。
自分のことながら次の展開が気になる。
「それでずっと滑っていると坂がなくなってそこにガードレールが現れたんです。そこにベッドがぶつかって止まると思うじゃないですか⁉︎でも、ちょうどガードレールの間をすり抜け、そこからベッドは大ジャンプ!」
「おぉぉぉ」
なんだ手に汗握る展開になってきたぞ!
「そして飛んだベッドが、とある工場の屋根に穴を開け中に突入して止まるかと思われたその時!爆発が起きたんです……」
『……それで俺は、死んだのか』
少しの間沈黙が続く。
「しかぁしぃ‼︎それは天に昇ると爆音を出しながら広がる大輪の花!そうなんです花火だったんです。そこは花火工場だったんですよ。その間もベッドは更に滑って降りて行くんです。まるで海を目指しているかのように」
「よしッ」と拳を握ってガッツポーズを取る俺。
アーテも乗ってきたのか「コホン」と一息入れてまた語り出す。
「とうとうアタシも我慢の限界で、海に着く前に決めようと思って竜巻を起こしたんですよ。すると案の定竜巻に呑まれベッド諸共上空何千メートルの高さまで飛ばしたんです。これで上空から豪速で地面に落下し終わった!……」
『あれ……、こいつはやっぱり俺を殺す気なのか……』
「と、思うじゃないですか⁉︎でも、何故か花火工場にあったブルーシートがベッドに上手く引っかかってパラシュートの役割をしてですね。無事海に着水するんです!」
「よぉぉし、よおし!」俺は拳を握り両手を上げて身体全体で喜ぶ!
「それでも死なないので、とうとう面倒くさくなったんで、雷をベッドに落として殺しました」
「……‼︎」
俺は声にならない悲鳴をあげた、両腕を上げたままで。
俺の絶望が浮かぶ顔とは対照的にアーテは語り切った満足感やらなんやらで爽やかな顔をしている。
「で、どうでしたか士郎さん?なかなかスリリングな展開だったでしょ⁉︎」
「結局、俺は死んでよくわからん場所にいるってことだろ?」
「そうそう。ここは死者が来る審判の間ですよ。もちろん貴方は死にました。いえ!アタシが見事に殺したんですよ!」
右手の親指と人差し指を上げ口元に持って行くと、人差し指に向かって「ふ〜」と息をかけた。
芝居染みたアーテを見て凄く腹が立った。
しかし既に死んでいる俺が今更何かを言ったところで手遅れだろう。
まず今は落ち着いて頭の中を整理する。
「それで、そこまでして俺を殺してどうするつもりなんだ?」
「あっ、まだ言ってなかったですね。アタシにできない仕事をやってほしいんですよ!」
思った通り仕事のできない奴だったか。
「それで、それを受けるメリットって俺にあるのか?無いならこのまま成仏させてくれ」
「あるに決まってるじゃないですか。この仕事が全て終わったら、貴方の望む人生を送れるようにしてあげますよ。ただし、世界を消滅させるとかは却下ですよ」
破格の対偶だ。現世では希望通りの人生を送れていなかったから願ってもない報酬だ。
「よし、わかったその仕事引き受けよう!」
「契約成立ですね。士郎さんならやるってわかってましたけどね」
アーテは顔の前で両手を合わせ満面の笑みになった。




