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いつか勇者となる君は  作者: Norinα
第二章 厄災の足音
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第20話 スズと一緒に娼館暮らし

 スズとボスラビットこと、ラビについて話をしながらウェスタリアに帰還。

 採った薬草はスズのポーチへ。

 入り切らないものは僕のアイテムボックスへ。


 そして娼館アーニィ・マリィルートへと帰ってくる。

 スズと共に。


「ただいまー」

「ただいま〜」


 いつも通り裏口から、いつも通りの口調で挨拶する。

 オババとカノンさんが始業前の勘定をやっていた。


「おかえりさね、ノリ、スズ」

「おかえりなさい、ノリ様、スズ」


 僕とスズを見てニッコリ声を掛けてくれる。


 さぁ、上に行くか。


 と、2階への階段を半分上がったところだった。


 目の前には目以外笑顔のカノンさん。そして後ろにはオババ。

 挟まれてしまった。


「危うく見過ごすところでした! ノリ様、これはどういうことでしょうか? 事と次第によっては……」


 おーっと、カノンさんの犬歯がチラリと見えるぅ! しかも段々伸びていくぅ!


「ノリ、まさか、最初からそのつもりさね?」


 後ろのオババからも鬼の声だ。

 僕は降参と言わんばかりに手を挙げる。


 他のお嬢達も、何事かと言わんばかりに出てきて、そぉっとこちらを覗いている。


「僕がスズを雇った。住み込みでね。それだけだよ。と、言いたいところなんだけど、せっかくみんながいるから真面目に話そう。今後のアーニィ・マリィルート、その問題と解決策についてだ」


 そして僕の言葉に、カノンさんは怒りを鎮め、オババは仕事の顔になる。

 隠れて見に来たみんなにも聞こえるように、僕は切り出した。


「もうすぐ【魔王の檻】が始まる。それはみんな知ってるよね?」


 みんな頷く。


「そうなると僕も当然駆り出される。そうなった時、僕が今揃えている備品はどうする? 水はまぁ水魔法を使える者を雇えば良いとしよう」


 みんな僕の言葉を待つ。


 僕は簡潔に伝えることにした。


「だから、僕がいなくなっても大丈夫なように、あと1年少しで、スズを立派な冒険者に育て上げ、備品製造の素材を確保できるようにする。そしてカノンさんが、その素材を使って備品を作れるようにする。もちろん、アーニィ・マリィルートが2人を雇う形としてね」


 僕は言い放つ。

 誰からも文句は出てこない。


 いや、オババやカノンさんは何か言いたげだが、現時点では言い返せない。


 僕がいなくなれば、今のようなサービスは提供できないことが分かっているからだ。

 冒険者を雇うとしても、当然経費が掛かる。それに信用問題もある。力で上の冒険者が、娼館の言う事をどこまで聞いてくれるかだ。

 自前で用意できるに越したことはない。


 しかも、1年は僕が付いている。


 1年経って判断すべきと、頭の良い2人なら考えるはずだ。

 現に今も、額を抑えて考えている。


「製作所兼住まいは僕の部屋の隣で良いでしょ。寝食だって今ですら実質一緒なんだし。少なくとも1年は、娼館にとってデメリットすら無いと思うなぁ?」


 僕は上からオババを見下ろした。


 オババやカノンさんの気持ちも分かる。

 スズを冒険者にはさせたくないだろう。


 でも、こればかりは――。


「カノン……1年さね」

「オババ!?」

「1年、それで様子を見るさね! ただし、スズに何かあったらタダじゃおかないさね!」


 初めてオババに敵意を向けられた気がする。

 怖い怖い。

 でも、すぐにその敵意は鎮まった。


「ママ、ごめんなさぃ……」


 スズがしょんぼりしているからだ。

 僕はスズの後ろに回り、押すようにして一段、また一段と階段を上がらせる。


 涙目のスズが、カノンさんを見上げた。


「……もぉっ、ノリ様は、卑怯です! スズ、おかえりなさい!」


 僕を一言罵ったカノンさんは、スズに抱き着いた。カノンさんの目には涙が輝いていたのは言うまでもない。


「えへへ、ママ、ただいま!」


 そして、スズに笑顔が咲いたのは言うまでもない。


 僕はオババの横に立つ。

 オババの目にも涙。

 でも、これは大事な事だから言っておかねばならない。


「これ、ニーアが雇い直すって話をしたから思い付いたんだからね」

「……そうさね。ニーアさね……ニーア……ひぃーっひっひっ」


 オババの鋭い目が、ニーアに突き刺さる。


「なんでニァがああぁああ! んにゃあえああ!」


 その日、屋上で罰を受けるニーアの叫び声が夜通し続いたとかいないとか。


 僕やスズ?

 僕は一人で。スズはカノンさんと、心地良い夜を過ごしたってよ。

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