↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか勇者となる君は  作者: Norinα
第一章 娼館暮らしの冒険者
PR
18/30

〜Side カノン〜

 朝起きて、ノリ様はもう居ませんでした。


 私とスズの分の朝食が用意してあります。


『スクランブルエッグとトーストを用意しました。冷蔵庫にミルクが入っています。スズにはお腹いっぱい食べさせてあげてください』


 書置きもありました。


 私はその書置きを胸に抱きます。


 いつも、スズだけではなく、私にまでこれ程の……何なのでしょうか?


 愛?


「キャー、私ったら……何考えて……もぉ……」


 一人で生娘のように悶えてしまいます。


「ママ?」


 ビクッとします。


 スズが起きてしまいました。


 見られちゃった……かな?


「イイ匂い……おなかすいたよー」


「……朝ご飯、食べましょうね。ノリ様が用意してくださいました」


 まだ寝惚けています。


 助かりました。


「にへへ、ノリくんのご飯、おいしいから好きー」


 スズがこうして笑顔で、お腹いっぱいのご飯を食べられるのも、全てはノリ様のおかげです。


 本当にスズが元通りになる日も近いかもしれませんね。


 今日も……ノリ様に御奉仕する暇は無いかもしれませんが。


 忙しいのは良いことです。


 1か月以上前のことが嘘のように、アーニィ・マリィルートは大繁盛。


 オババも笑いが止まらないようです。


 おかげで……私達の待遇もかなり良くなりました。


 私の体が弱過ぎて、1時間もお客の相手が出来ない状態でした。


 それでも、出来る限りのことをやりながら在席させてもらっていました。

 皆さん口にはしませんが、不満を持っておられたと思います。


 その上で、『呪いの薔薇』を持つ者でした。


 殴られるくらいは覚悟していましたが、誰もそんなことはしませんでした。


 皆さん、とても優しいんです。


 その優しさに、救われました。


 今でも、救われています。


 呪いから解放されたおかげで、だいぶ体が軽くなりました。


 胸まわりは重たいままですが、体型的にしょうがないことです。


 ソレでノリ様を落とせ、と皆さんに言われます。


 でも、ノリ様が望んでいないことを、私はやりません。


 色々な反応を見る限り、ノリ様が女性好きなのは間違いありません。ですが、頑なに誰も抱こうとしません。


 何となく、理由は察します。


 だからこそ、私はノリ様の奴隷としてお側に仕えたいと思います。


 奴隷としては扱っていただけませんが、やはり、何でもできるモノが側にいるだけでも、違うでしょうから。


 朝の掃除中、1階ロビーが騒がしくなります。


 2階から吹き抜けを覗き込むと、セピアの常連のディークさん。


 あと3人は知らない方……いや。


 あの赤髪エルフは昨日の?


 ディークさんが「何とかするから黙ってろ」と言っていた方ですね。


 下では、ディークさん以外の3人がオババに頭を下げています。


 オババは許すようです。


 オババが許すなら、特に何も言うべきことはありません。


 掃除の続きを――。


「カノン! スズを連れて降りてくるさね!」


 オババの声が吹き抜けを駆け上がります。


 オババの命令には基本的に従います。


 それが、ここのルールですから。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 スズを連れてロビーに降ります。


「私は西の冒険者ギルドのマスター、カーズゥ・グッドビート。此度は、我が職員がご迷惑をお掛けしたのねん。申し訳ありませんでした」


 おデコの広い男が、私とスズに頭を下げます。


「「申し訳、ありませんでした」」


 2人のエルフも、私とスズに頭を下げます。


 なぜでしょう?


「こいつらな、昨日、ノリがスズを襲ったと勘違いしやがったんだ」


「それがなにか?」


 だからといって、私やスズが謝られるのは何故でしょう?


「……二人してノリにひでぇこと言いやがったもんだからな」


 その言葉を聞いて、一瞬だけ毛が逆立ちます。


「その詫びをノリにしてぇんだと。協力しろたぁ言わねぇが、先に耳に入れとこうと思ってな」


 ……理由は分かりました。


 私やスズに迷惑が掛かるかもしれないから、ということでしょう。


 それでも――。


「私やスズに謝るのは意味が分かりません。ノリ様に謝罪するのは当然のこと。事情は分かりましたが、好きにすれば良いと――」


 そこまで言って、言葉を止めます。


 エルフの2人が泣きそうだったからです。


 そもそも、なぜノリ様にひどいことを言ったのか。


 そもそも、2人はノリ様の何なのか。


 そして、先程の私自身を振り返ります。


 娼館の皆さんは、私にどうしてくれていたかを。


 少なくとも、この子達には反省の意思があります。


 そうであるなら、手を差し伸べましょう。


 私やスズが、そうされていたように。


「ギルド職員の方ですよね。ノリ様のサポートをされてきたんですよね? これからも、ノリ様を支えていただけますか?」


「はい、当然です」

「もちろん、そのつもりです」


 涙目ながらも、意志の強い目です。


「分かりました。可能であるなら、ノリ様に口添えしましょう。ノリ様の奴隷である私が、1番ノリ様に近しい者ですから」


 ノリ様の奴隷と言う言葉に、眉をピクピクさせています。


 ふふ、なるほど。


 ふふふ。


 ノリ様も、隅に置けませんね。


「オババ、この方々と少しお話したいと思います。仕事が滞ってしまいますが、よろしいでしょうか?」


「ひっひっひ、構わないさね。その間、カズにやってもらうさね」


「それは横暴なのねん!?」


「それとも、三十年前の――」


「うぐぅっ!? 分かったねん! やりゃ良いねん!」


 ギルドマスターとオババに何かあったのでしょうか?


「ママ、お姉ちゃん達と、お話するの?」


 不安そうなスズには、先に伝えておきましょう。


「そうですね、スズ。このエルフのお姉さん達と、お友達になりましょう」


 私の言葉に、2人のエルフは驚きを一瞬だけ見せました。


 でも、すぐに笑います。


「はい、こちらこそよろしくお願いします。私はリリカ・ミルフィードです」


「私はエイラ・ユーアインよ。よろしくね、カノンさん、スズ」


 2人から、ノリさんとの馴れ初めを聞きました。


 私も馴れ初めを話しました。


 どうやってウェスタリアに来たのかも。


 リリカさんとエイラさんも、私やスズに全部教えてくれました。


 そして、協定を結びます。


 何の協定?


 それは……ふふふ。


 乙女の秘密です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。